アプリリア RSV4ファクトリー
アプリリア RSV4ファクトリー

アプリリア RSV4ファクトリー – WSBで勝ちまくりのマシン ストリートでの実力はいかに

掲載日:2010年09月24日 試乗インプレ・レビュー    

WSBで勝ちまくりのRSV4ファクトリー
ストリートでの実力はいかに…

アプリリア初の4気筒マシン、RSV4。昨年デビューとともにスーパーバイク世界選手権に返り咲き、今年度は元世界チャンプ、マックス・ビアッジのライドによって破竹の進撃を続けているワークスマシンのホモロゲモデルがコレ。最上級版のファクトリーである。

アプリリアというと従来のRSV1000Rやトゥオーノに代表されるように、Vツインエンジンを搭載したモデルの印象が強いが、今回は世界最高峰のレースで再び勝つためにV4エンジンを開発したという。V4はホンダやドゥカティのモトGPマシンが採用していることからも分かるように軽量コンパクトかつ横幅をVツイン並みにスリム化でき、さらにエンジンの回転によって発生する振動を軽減できるなど、レーシングマシンとして優れた資質を持ったレイアウトといえる。加えてRSV4は最先端のエレクトロニクスで武装している点にも注目したい。スロットルシステムにはついに「ライド・バイ・ワイヤ」方式を採用し、ライダーが行うスロットル操作とスロットルバルブの動きは従来の機械的なワイヤーではなく電子制御によってコントロールされるまでになった。さらに、ミリ単位で車体各部のディメンションを調整できる機能やカセット式ミッション、ブレンボ製モノブロック、オーリンズ製フルアジャスタブル前後サスを装備するなど、まさにファクトリーという名に恥じないリアルレーシングレプリカである。アプリリアが誇る”READY FOR THE TRACK”の実力を今回はストリートでも味わえるものなのか検証してみたい。

アプリリア RSV4ファクトリーの試乗インプレッション

アプリリア RSV4ファクトリーの画像

意外と素直で乗りやすい
街乗りで楽しめるレーシングマシン

最初にRSV4ファクトリーを見て思ったのは「意外に小さいな」という印象。国産リッタースーパースポーツのグラマラスなボディに比べるとかなりシャープ。フロントマスクも小顔だしシートはほとんどシングル仕立て、カウルも複雑な面構成はなくシンプルだ。跨ってみると、その印象がさらに明確になる。Vツイン並みのスリムな車体でハンドル位置もかなり近い。シート高だけは845㎜とひと際高いのだが、車体の幅が狭いので足着きも見た目ほどは悪くはない。車格や取り回したときの重量感はまさに600ccクラス。もともとスリムな体をさらに絞った、ボクサーのような贅肉の一切ない車体だ。数あるスーパースポーツの中でも、おそらくはトップクラスの軽量&コンパクトさだろう。レーシングマシンをそのまま公道でも走れるように手直しした、そんな第一印象である。

走りはこれまた意外なほど素直なので拍子抜けしてしまったほど。”ファクトリー”の名を冠するロードゴーイングレーサーというので、どれほど獰猛かと思っていたのだが、国産モデル並みに乗りやすいではないか。試乗車はパワーが抑えられた日本仕様ということもあるが、免許さえ持っていれば”誰でも普通に乗れる”と思う。

アプリリア独自の65度V4エンジンはサウンドも独特。VFRに代表される国産V4に比べるとかなりワイルドでどちらかというとVツインに近い感じ。実際の走行フィーリングは不等間隔爆発の直4を採用するR1にも似ている。つまり、「バラッ」とした脈動感と「キーン」と超高回転まで突き抜ける上昇感とが同居している感じなのだ。なんと、レッドゾーンは14,000rpm~というハイレブ設定で、リッタークラスでここまで回せるエンジンはそう多くはないと思う。

ただ、残念だったのは国内仕様の場合、ハイエンドのパワーがすっぱり切り落とされていること。5,000rpmあたりからトルクが盛り上がってくるのだが、これからというときに8,000rpmあたりで終わってしまう。タコメーターの針は確かにレッドゾーン付近まで回るのだが、パワーの頭打ち感は否めない。CBRなどの国内仕様がアンダーパワーなりに上手く加速感を演出しているのに比べると、やや事務的に上を切り捨てたという印象だ。本来はその上にある一番おいしい部分を味わってみたかったのだが・・・。ただし、サーキット使用限定であれば、正規ディーラーで本国仕様のマップに切り換えてもらえるとのことなので、それほど悲観する必要はない。本当の実力を知りたければサーキットで存分に楽しめば良いのだ。

アプリリア RSV4ファクトリーの画像

ハンドリングはとにかく軽快。今回はストリートでの試乗だったため味わえたのはせいぜい中速コーナーまでだったが、ブレーキングからの倒し込みも素直でクセがないのが特徴。さすがに運動性重視で重心位置の高さは感じるものの、この手のスポーツモデルにありがちなグラっとくる不安感はなかった。電子制御スロットルの出来もいい。ライド・バイ・ワイヤ方式を採用していることを忘れてしまうほど自然なフィーリング。どんな回転域でも右手に忠実に反応してくれるため、街乗りのような低速でのストップ&ゴーでもストレスを感じることはなかった。ちなみに、国産車並みにハンドルも切れるのでUターンなども普通にできる点も評価したい。
足回りはさすがに「別格」と感じさせる部分だ。ブレンボ製前後ブレーキが強力なのはもちろんだが、それ以上にリニアなタッチが好印象。ストリートレベルならそれこそ指1本で自在に速度と車体姿勢をコントロールできる。オーリンズ製前後サスペンションの動きもしなやかで、しっかりとした剛性感の中に乗り心地の良さも兼ね備えているのが特徴。世界の一流品ならではの”グレード感のある走り”が味わえる。

RSV4には出力特性を手元のスイッチで3段階に切り換えられるモードセレクト機能が搭載されているが、正直なところストリートレベルの走り方では際立った違いは感じられないかもしれない。ただ、一番穏やかな設定の「ロード」モードならば、どんな路面状況でも平和な時間を過ごせることだけは確かだ。

RSV4は走りをとことん極めるためのマシンであって、ツーリング向けの装備など一切持ち合わせていない。しかし、レーシングマシンそのもののスペックを街乗りレベルから楽しめる懐の深さと趣味性の高さが魅力となっている。本物の走りを日常で堪能したい人におすすめしたい1台である。

アプリリア RSV4ファクトリーの特徴は次ページにて

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