ヤマハ YZF-R6
ヤマハ YZF-R6

ヤマハ YZF-R6 – そのポテンシャルは相当なもの

掲載日:2009年10月08日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

先鋭化が進むミドルクラスSSは
本当に「使い切れる」存在なのか

スーパースポーツを試乗するときは、どんなモデルであれ一種の緊張感を伴う。このカテゴリは技術の粋を集めた各メーカーの最高スペック・マシンがしのぎを削る激戦区であり、それは今も昔も変わらない。そう感じているからだ。しかし、何を隠そう600ccのいわゆるミドルクラス・スーパースポーツを試乗したのは今回が初めてのこと。「ハンドリングやマシンの挙動の鋭さは、リッターマシンの比ではない」。そう聞かされてはいたものの、排気量は3/5。今回ばかりは少々気が楽だと感じていたのだが…。

最初から結論めいたことを書いてしまうが、YZF-R6(以下、R6)の試乗の先には、リッタースーパースポーツに勝るとも劣らない超刺激的な世界が待っていたのだ。リッター換算200馬力オーバーの高回転・高出力型のエンジンをヤマハお得意のデルタボックスフレームに搭載。YCC-IやYCC-Tなど、YZF-R1(以下、R1)と同等のハイテクで武装したミドルクラス・スーパースポーツのインプレッションをお届けしよう。

ヤマハ YZF-R6の試乗インプレッション

ヤマハ YZF-R6の画像

そのポテンシャルは相当なもの
果してアナタは使い切れるか?

「ポテンシャルを使い切れるから面白い」。大排気量車と比較して中間排気量車を評価する場合の常套句だ。しかしR6の試乗は、これが全てに当てはまるわけではないということを学習できた貴重な体験だった。

ご存知の方も多いと思うが、今回試乗したR6はヤマハの海外向けモデルである。当然、仕向地に合わせた仕様となっており、エンジンが国内向けにディチューンされているということもない。近年ではリッター・スーパースポーツにややマイルドな国内仕様が増えているということもあって、うっかりすると油断してしまいそうだが、ホンの少し右手をあおっただけでも、ビンビンと12時方向まで跳ね上がるタコメーターの針が輸出モデルであることを「警告」してくる。その高回転型エンジンらしいレスポンスの鋭さに気を遣ったのだが、クラッチミートすると何事もなかったかのように発進してしまった。スムーズに走り出す様子から「意外と普通に乗れる」と感じてしまったほどだった。

ヤマハ YZF-R6の画像

しかし、その後に超刺激的な世界が待ち受けていた。レッドゾーンが16,500回転から始まることを確認して、7,000回転程度まで右手を捻ると、ハイグリップなリアタイヤがガッチリと路面をつかみ、タコメーターの針が跳ね上がるのにシンクロしてデジタル表示のスピードが目にも止まらぬ速さで変化してゆく。激しく点滅するシフトインジケーターに、思わず右手を緩めてしまうぐらいだ。コーナーリングも実にシャープだ。強烈にタイヤがグリップしている状況では倒しこみが重くなるマシンも存在するが、R6は違う。強力かつコントローラブルな前後ブレーキを軽く当てるなどして、きっかけさえ与えればパタンと車体が軽く倒れてくれる。特筆すべきはその後の安定感だ。エンジンが小型軽量化されている場合、車体の安定要因が少なくなり、コーナーリング中の落ち着きに欠けるケースも少なくないが、R6はそういう傾向とは無縁だ。コーナーリング初期においても、右手を積極的に捻りたくなってしまう。それほど車体は落ち着いており、前後のタイヤも強烈にグリップする。もちろん、そういうことはあり得ないのだが、「いくら開けても、絶対に転ばない」そう感じてしまったほどだ。

「ミドルクラスはポテンシャルを使い切れるから面白い」という意見はよく聞く。しかし、私はこの記事の中で「使い切った」という表現を使う立場にない。自分なりに相当頑張って走ってみたものの、R6には相当なマージンが残っていた。そう確信しているからだ。

ヤマハ YZF-R6の特徴は次ページにて

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