ドゥカティ Hypermotard 1100S
ドゥカティ Hypermotard 1100S

ドゥカティ Hypermotard 1100S – 斬新な思想を振りまいたマシン

掲載日:2008年10月16日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

Ducatiブランドの新たな挑戦。
モタードスタイルはアリかナシか?

ストリートスポーツの新提案として2005年のミラノショーでデビューし、大注目を浴びたのがハイパーモタード。すでにモータースポーツの1カテゴリーとして定着している“スーパーモタード”をイメージしたスタイリングと、それを超える“ハイパー”というネーミング。それはドゥカティというメーカーがこのマシンに秘めたコンセプトを端的に表していると言えるだろう。これまでのスーパーモタードというカテゴリーにとらわれることなく、楽しめるステージもサーキットからワインディング、ストリートへと広げているのだ。

パワーユニットはもちろんデスモドロミックLツイン。フレームも、もちろんトレリス構造のパイプフレーム。ブランドアイデンティティを頑なに守りながら、異端であることを鮮烈にアピールするスタイリングだ。1100cc空冷エンジンがもたらすパフォーマンスはあくまで力強く路面を蹴る。最近では、アメリカ・コロラド州で行われている伝統的ヒルクライムレース「パイクスピーク」の二輪車1200ccクラスで優勝たことも記憶に新しい。ストリートファイターでありながら、その素性にはやはりコンペティションでの強さも光っているようだ。

ドゥカティ Hypermotard 1100S 特徴

ドゥカティ Hypermotard 1100S 写真伝統的なDucatiらしさの上に
斬新な思想を振りまいたマシン

フロントに50mm径の倒立サスペンション、リヤには片持ちスイングアーム+オーリンズ製ショックユニットという装備で足まわりを固めたハイパーモタード。モタードを意識させるタンクシュラウドの造形とフロントのアップフェンダー、コンパクトにまとめられたリヤまわりは、マシン全体に軽快な印象を与えている。スタイリングからうかがえる軽快さは、リッタークラスのマシンとは思えないものだ。心臓部となるエンジンとフレームの造形は明らかにドゥカティ、しかし意外性のあるスタイリングと、それにマッチングさせた各部が、ハイパーモタードを完成させている。

排気量を1100ccとされた空冷Lツインユニットは、現在のドゥカティのラインナップの中ではムルティストラーダと共通のもの。カーボンパーツやオーリンズ製サスペンションが奢られるSモデルのラインナップも、ムルティストラーダと共通となっている。スーパーモタード+空冷Lツインエンジンという組み合わせは、ストリートを駆ける非日常マシンというコンセプトを感じさせるものだ。ポジションや車体についてのコンセプトは、そのスタイリングが表しているとおり、スリム&スポーティ。オフロードモデルをベースとして、ロード向けのモディファイが加わるのが本来のモタードの姿だが、ハイパーモタードには、ベースとなるオフロードモデルは存在しない。ファンライドモタードとして孤高の存在であろうとするハイパーモタードのコンセプトは、こんな部分にも感じられる。

空冷Lツイン最大排気量となる1100cc。かつてのストリートモデル900SSから熟成を重ねた究極のエンジン。モタードスタイルでありながら、トレリスフレームにつり下げられるレイアウトは、やはりドゥカティだ。

モタードスタイルで
空冷Lツインを味わう贅沢

空冷Lツイン最大排気量となる1100cc。かつてのストリートモデル900SSから熟成を重ねた究極のエンジン。モタードスタイルでありながら、トレリスフレームにつり下げられるレイアウトは、やはりドゥカティだ。

ブレンボ製のブレーキシステムとダブルディスクを組み合わせ、スーパースポーツモデル並みのブレーキングパフォーマンスを実現。ストリートでの扱いやすさを重視しつつ、抜かりないストッピングパワーを持つ。

ラジアルマスター&キャリパー
妥協なきフロントブレーキ

ブレンボ製のブレーキシステムとダブルディスクを組み合わせ、スーパースポーツモデル並みのブレーキングパフォーマンスを実現。ストリートでの扱いやすさを重視しつつ、抜かりないストッピングパワーを持つ。

モタードモデル然としたハンドガードの両端には、折りたたみ式のバックミラーを装備。収納することでスリムになるスタイルは、メーカー曰く「ハイパースタイル」。市街地のすり抜け時には気をつけた方がいいだろう。

折りたたみ式の
斬新なバックミラー

モタードモデル然としたハンドガードの両端には、折りたたみ式のバックミラーを装備。収納することでスリムになるスタイルは、メーカー曰く「ハイパースタイル」。市街地のすり抜け時には気をつけた方がいいだろう。

各種インジケーターとデジタル画面のみで、ボタンのないメーターまわり。ハンドル左側のモードスイッチにより、オド、トリップ、時計のほか、ラップタイム計測機能が切り換えられる。計測スイッチはハイビームスイッチと兼用。

ラップタイマーも備える
フルデジタルメーター

各種インジケーターとデジタル画面のみで、ボタンのないメーターまわり。ハンドル左側のモードスイッチにより、オド、トリップ、時計のほか、ラップタイム計測機能が切り換えられる。計測スイッチはハイビームスイッチと兼用。

ドゥカティ Hypermotard 1100S 試乗インプレッション

ドゥカティ Hypermotard 1100S 写真コンパクトながら、モタードとは違う独自のポジション

「ハイパーモタード」というネーミングを意識しながらマシンにまたがってみると、あまりに予想外なポジションに驚くことになる。要するに、車高の高いロードモデルというフィーリングが色濃いのだ。しかしシートは高いが足着きに不安を感じるほどのものではなく、ハンドル幅は広い。シートに座って右足を地面から離すと、非常に自然な位置にステップがある感じ。足着きのよさも、シート高というよりはシート幅のスリムさによって得られているというようだ。「モタード」と呼ぶには違和感があるものの、「これがハイパーモタードのポジション」と理解できれば、すぐになじめるもの。走り始めると、そのパワーフィールよりも先に感じられるのが軽さ。十分なパワーゆえに感じられる軽さということもあるだろうが、スリムな車体から受けるシャープさは、確かに走りにも鋭さをもたらしている。

ドゥカティ Hypermotard 1100S 写真スロットルに対してリニアに反応するエンジンは、ストリートでは十分すぎるほどのパワーフィール。多少アクセル操作にシビアになってしまうほどレスポンスはいい。もちろん街中のストップ&ゴーでは気持ちよくアクセルとパワーフィールの連動を感じられるのだが、渋滞路でのすり抜けは左右ミラー幅の広さとも合わせてややストレス。しかし交差点での低速コーナリングでもヒラヒラと軽い車体の恩恵は感じられ、まわりの景色が心地よく流れていく。コーナリングでの気持ちよさはハイパーモタードのひとつの特色だろう。ヒラヒラと寝かし込めるマシンを、幅の広いハンドルでちょっと押さえ込みつつ、シートとお尻の接触する位置を探る感じ。独自のポジションとコンセプトを持つハイパーモタードだが、コーナーの楽しさはまさにモタードの進化形。既存のマシンとは違うドゥカティならではのフィーリングが、走り終えた今も強烈な印象として残っている。

ドゥカティ Hypermotard 1100S こんな方にオススメ

日常と非日常の境目を
すぐ近くに感じていたいなら

現行ドゥカティのラインナップの中では、モンスターと同様ストリートに映えるマシンなので、あえて遠くまで出かけなくても日常を脱することができる感じ。革ツナギでワインディングを攻めても絵になるだろうし、仕事帰りにスーツのまままたがっても、それはそれでアリ。乗るスタイルを選ばないこと、そして「気軽に乗れるキャラクター」と「妥協なきパフォーマンス」の両立はハイパーモタードの大きな魅力だ。ハイパーモタードが似合うライダーとしてイメージするのは、「さて、行くか」と、ヘルメットを被り走り出すときに、必ず柔軟運動をするような人。もしくは、ジム通いは続けているけれど、トレーニング自体が趣味になっているような人、かもしれない。ハイパーモタードのスポーツ性は、きっと熱いライダーの身体と心に呼応してくれるだろう。

ドゥカティ Hypermotard 1100S 総合評価

既存のモタードではない
ハイパーモタードの独自性

モタードというネーミングに引っ張られて、乗る前にイメージを固めてしまうともったいない。モタードらしさは確かにあるけれど、明らかにこれは新しいジャンルのバイクだから。ドゥカティらしい空冷Lツインのパワー感とレスポンスは、マシンに軽快感を生み出していて、とてもリッタークラスのマシンとは思えないフィーリング。これまでのドゥカティに惚れ込んでいるライダーたちが、このハイパーモタードをどう評するのかは気になるところだが、あらたなドゥカティスタの増加、というメーカーの隠れた狙いは当たるに違いない。スーパーではなくハイパー、としたメーカーの自信は、マシンのキャラクターやポテンシャルの中に、確かに感じられるのものだからだ。

SPECIFICATIONS - DUCATI HYPERMOTARD 1100S

ドゥカティ Hypermotard 1100S 写真

価格(消費税込み) = 170万円

ショーモデルの登場とともに全世界の注目を集めたドゥカティの新機軸。モタードスタイル+ドゥカティテイストが生んだ、まったく新しいマシン。

■エンジン = 空冷4ストロークSOHC2バルブデスモドロミックL型2気筒
■最高出力 = 66kW(90HP)/7,750rpm
■最大トルク = 102.9Nm(10.5Kgm)/4,750rpm

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