取材協力/ゼロット 取材・撮影・文/淺倉 恵介 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部掲載日/2013年8月21日

時代を超えて輝き続ける’70年代ジャパニーズヴィンテージバイク。誰もが一度は憧れる名車達だが、年式の古さや価格の高さなど、愛車とするには敷居が高いのも事実。そんな不安を吹き飛ばす、ユーザーに優しい旧車ショップが 『ZEALOT』 だ。車両の購入はもちろん、メンテナンスからカスタマイズ、果てはレース参戦まで、旧車に関することならば何でもお任せのショップなのだ。

現在、Zは主な輸出先であったアメリカでも枯渇状態。特に程度の良いものを見つけるのは至難の業となっている。ZEALOTでは自社スタッフが現地に赴き、売り主から直接買い付けを行っている。実車を確認した上で、本当に程度の良い車両だけを輸入しているのだ。また、中間業者を介さないためマージンが発生しない。その分、販売価格も抑えられるのだ。

ノンレス車両だけでなく、レストア車両やカスタムベース向け車両の在庫も豊富。機材の充実した広いファクトリーを備え、メンテナンス体勢も万全だ。

ZEALOTでは極上レベルの、新車当時そのままの姿のノンレスZを常時多数在庫している。実際に自分の目で車両を確認して、バイクを選ぶことができる。

ZEALOT代表を務める伊藤龍廣氏。ユーザーサイドに立った旧車の楽しみ方を提案するためにZEALOTをオープン。店名のZEALOTとは“狂信者”や“熱狂する者”といった意味合いの言葉。伊藤氏自身が、Zの狂信者であるとのミーニングもあるようだ。

ZEALOT の提案する
新しい旧車スタイル “ノンレス” 車両とは?

埼玉県久喜市に店を構える 『ZEALOT(ゼロット)』 は、2012年暮れにオープンしたばかりの新進気鋭のバイクショップ。取り扱うのは旧車全般、中でもカワサキの Z 系マシンを得意としている。そしてこの ZEALOT は、ショップとしての歴史は始まったばかりだが、既にコアな旧車ファンの間で話題となっている存在だ。その理由のひとつに、ZEALOT が提唱する新しいスタイルの旧車の楽しみ方 “ノンレス” 車両がある。

いきなりノンレスと聞いてもピンとこないかもしれない。ノンレスとは “ノン・レストア” を略した造語である。Z の祖である Z1 の場合、生産から40年近くの年月を経ているのだから、中古どころか「大」古車だ。通常であれば、大がかりなメンテナンスを必要とするもので、作業範囲はレストアと呼べるレベルまで行うのが普通だ。だが、ZEALOT ではノンレスというスタイルを打ち出している。つまり「レストアを施していない」状態なのだが、これはいわゆる “現状渡し” とは意味合いが異なる。

一般的に、中古車の世界で現状渡しと言えば、程度が低く売る側が手をかけるにはリスクが大きい車両で、品質を保証できないために安い値段で売られる車両に使われるもの。しかし ZEALOT のノンレス車両は違う。限りなく新車販売時の “オリジナルに近い状態” にあり、かつ程度が優れている車両。大前提として、普通にエンジンが始動し、何の問題もなく走行できる車両だけが、ノンレス車両として販売されるのだ。つまり「レストアしていない車両」ではなく「レストアする必要がない車両」がノンレス車両なのだ。

また、ノンレス車両の条件のひとつに “エンジンが開けられた履歴が無いこと” がある。古いバイクなのだから、その車両がどのようにメンテナンスされてきたかの履歴を確認するのは難しい。Z を例にあげれば、アフターパーツが豊富なことが仇になり、修理やチューニングでどんな品質のパーツが使用されているかも問題になってくる。特にヘタなチューニングが施されたエンジンは、各部のダメージが心配される。その点、工場出荷状態から変更がないエンジンであれば、劣化はあっても本来のバランスは崩れていないはず。そもそも、Z は過剰品質と言われるほど各部の質が高い車種なので、エンジンも車体も基本骨格はすこぶるタフなのだ。

現代のバイクで数年落ちの中古車を買う時に、レストア作業を考える人はいないだろう。ZEALOT のノンレス車両は、Z が新車販売されていた時代に中古車を買う感覚で乗り出せる車両なのだ。これは、車両の年式を考えれば驚異的な程度の良さだと言える。もちろん、マシンの状態をリフレッシュすることは ZEALOT でも推奨している。仮に、エンジンオイルなどの油脂類やタイヤなどの消耗品が新車時のものが使用されていた場合、当然交換を薦めているし、電装系の樹脂部品など、経年劣化が避けられないパーツのリプレイスも同様だ。だが、可能な限り、Z が現役のスーパーマシンであった当時そのままの乗り味を楽しめる。それがノンレス車両なのだ。

※詳細はZEALOTまでお問い合わせください

極上ノンレス車両の在庫を一部ご紹介!

  • カワサキ Z1(1972年式)
    走行距離/51,893km
    価格/248万円

    記念すべきZ1のデビューイヤーモデル。しかも希少極まりない 、フルオリジナルコンディションで入荷。プリミティブなZを味わいたいのなら最適な1台。

  • カワサキ Z1(1973年式)
    走行距離/16,163km
    価格/ASK

    希少な初期モデル。走行距離が、わずか1万6千km程という驚きの低走行車。フルオリジナルコンディションで、各部の保存状態も極めて良好。

  • カワサキ Z1(1974年式)
    走行距離/5,309km
    価格/240万円

    走行距離が1万km未満という希少な1台。Z1のカラーリングで、初代の火の玉カラーと双璧をなす人気のタイガーカラーが登場した年式。フルオリジナルコンディション。

  • カワサキ Z1(1975年式)
    走行距離/21,317km
    価格/ASK

    1975年モデルで最も人気の高い、通称「青玉虫」も在庫。シールチェーンの採用で、自動給油装置が廃止されるなど、熟成が進んだモデル。フルオリジナルコンディション。

※ここで紹介している車両は、全て実際に販売されているものです。在庫状況は常に変動しており、売却により紹介車両が店頭にない場合もあります。

ZEALOTカスタムバイクの看板車のZ1、バイク雑誌で目にした人も多いだろう。伊藤代表の個人所有車で、様々なカスタマイズの実験台として、日々進化している。ZEALOTでは、オリジナルパーツの開発も行っている。このZ1にも、オリジナルの、マフラー、キャブレターのスピゴット、パルサーカバー等が装着されている。

ファクトリーでは、マシンのフルオーバーホールやレストアといった重作業から日常整備まで、バイクに必要なあらゆる作業に対応する設備と、高い技術力を備えたスタッフが揃う。チューニングやマシンの状況を確認するために、シャシーダイナモも完備。各種パーツも豊富に在庫されている。持ち込み車両も大歓迎とのこと。

ZEALOTでは極上レベルの、新車当時そのままの姿のノンレスZを常時多数在庫している。実際に自分の目で車両を確認して、バイクを選ぶことができる。

 

テイスト・オブ・ツクバはカスタムショップのワークスマシンが凌ぎを削る、草レースとしては非常にシビアなレース。ZEALOTはレーシングチーム【アマノジャク】とジョイントし、谷津太郎選手のライディングで参戦。参戦当初から好成績を記録し、その技術力を証明。ニューカマーとは思えない活躍が話題を呼んでいる。

カスタムショップとしての顔も持つZEALOT

ノンレス車両の存在から、オリジナルコンディションにこだわっているショップかと考えがちだが、ZEALOT はカスタマイズにも積極的。ジャンルやカテゴリーに関係なく、幅広く旧車を楽しもうという柔軟な姿勢も ZEALOT の魅力のひとつだ。また、カスタム内容については、ショップ側からの押しつけは一切行わないのがポリシー。もちろん、プロフェッショナルの立場から効果的なカスタマイズのアドバイスは行うし、危険な改造などは指摘してくれる。だが、ユーザーが望むカスタム内容と “予算” に合わせることを重要視しており、カスタマイズを開始する前に入念な打ち合わせを行い、ユーザーが十分に納得する形で作業を行っている。コストの明確化も考えられており、ユーザーが望むカスタム内容をチェックしていくと、概算のコストがすぐに判る独自の見積もりフォーマットも用意されている。

作業は ZEALOT で購入した車両はもちろんだが、他店で購入した車両も大歓迎。最新パーツをたっぷりと盛り込んだハイエンドカスタムから、故障の修理やレストア作業、車検や日常整備まで対応できる体勢と設備を整えている。車種も Z だけでなく、幅広い車種を受け付けている。ZEALOT 代表の伊藤氏は、自らフルカスタムが施されたハイチューンドな Z1 を所有するカスタム好き。同氏は、カスタムについてこう語る。

「愛車を改造するのは楽しいものですが、まずは基本的な性能を確保することを考えて欲しい。せっかく装着した高性能パーツも、バイクの基本性能がしっかりとしていなければ宝の持ち腐れです。最初に行うべきは “走る、曲がる、止まる” を正常な状態にすることです、パフォーマンス向上はその後に考えることをお薦めしています。

チューニングと言うと、性能アップのための改造と捉えている場合が多いのですが、言葉の本来の意味は “調律” です。“調子を整える” ということですから、ZEALOT ではこの本当の意味でのチューニングを大切にしたいと考えています」

と、カスタムフリークらしからぬ生真面目なコメント。この “真面目であること” は、ZEALOT というショップを象徴している。車両販売然り、メンテナンス然り、カスタマイズ然りである。

“真面目さ” は、ショップの外でも同じ。ZEALOT はレース活動も行っており、国内旧車レースの最高峰 『テイスト・オブ・ツクバ』 に2012年秋初参戦。花形レースの 『D.O.R.B.E.Rモンスタークラス』 でいきなり5位入賞を果たし大きな話題を呼ぶと、その勢いのまま2013年春の大会では2位表彰台を獲得した。その派手な活躍とは裏腹に、レースに挑む姿勢は実に真摯。そもそもレースに参戦する理由は、「ショップとしての技術力を蓄積するため」、「加えたチューニングが正しいかどうかの実験の場」と言う。愚直なまでに、真摯にバイクと向き合う。ZEALOT は、そんなショップなのだ。

  • ZEALOT(ゼロット)

    住所/〒346-0035 埼玉県久喜市清久町4-1
    電話/0489-26-5611
    営業時間/10:00-20:00
    定休日/レース開催日、イベント開催日

    旧車全般と新車・中古車の車両販売、整備、車検などに対応。メカに精通した技術スタッフが在籍し、フルオーバーホールのような大規模整備も可能。カスタム車の製作も得意で、レーサー製作やレース参戦の相談にも乗ってくれる。これから旧車を手に入れたいユーザー、旧車のコンディション維持に悩んでいるオーナーにぴったりの頼もしいお店だ。