取材協力/ヨシムラジャパン  取材・文/中村 友彦  撮影/大屋 雄一(タイトルカット)、富樫 秀明
掲載日/2014年1月29日


1971年に世界初の4-1式集合マフラーを発表して以来、アフターマーケット製のみならず、車両メーカーが作る純正マフラーにも多大な影響を与えてきた『ヨシムラ』。そんな同社が2013年の新作として発表した『ヘプタフォースサイクロン』は、前代未聞の7角形サイレンサーを採用。エッジの利いたフォルムと特徴的なコーンエンドを導入したこのマフラーは、おそらく既存のヨシムラ製品と同様に、今後のマフラー業界で台風の目となるだろう。

PICKUP PRODUCTS

40年以上に渡ってマフラー業界をリードしてきたヨシムラが
伝統を踏まえて開発した新世代のストリートモデル

オーソドックスな円筒型やストレートタイプの生産を続ける一方で、1990年代中盤以降のヨシムラは、逆三角形のトライオーバル/トライコーンや楕円形のオーバル、メガホンスタイルのメガトライオーバル、変形四角形のR-77J/Sなど、さまざまなスタイルのマフラーを手がけてきた。

2013年から発売が始まったヘプタフォースサイクロン(意匠登録済)は、こういった伝統を踏まえて開発された新世代のストリートモデルで、消音効果やバンク角、空力性能などを考慮した結果、ボディ形状は前代未聞の7角形を選択。これに後端部を4角形としたコーンエンドを組み合わせることで、既存のマフラーとは一線を画する斬新なスタイルを獲得している。なお商品名に使われている“ヘプタ”とは、ギリシャ語で7角形を表すヘプタゴンの略だ。

ヘプタフォースに限った話ではないものの、ヨシムラがストリート用マフラーの開発時に重視しているのは“軽量化”と“音質”だ。具体的な数値が提示できる軽量化に対して、音質は明確な基準が存在するものではないが、心地いい重低音、上品さと迫力の両立をテーマとするヨシムラ製が、純正や他社製では味わえない充実感を堪能させてくれるのは周知の事実だろう。また、近年のヨシムラはマシン全体の質感向上を意識してマフラーのデザインを行っており、ヘプタフォースでは、太陽光の加減による表情の変化、陰影のつき方に配慮。さらには既存のR-77J/Sと同様に、4種のボディカラー(チタン/チタンブルー/ステンレス/メタルマジック)と2種のコーンエンド(カーボン/ステンレス)を準備することで、幅広いユーザーのニーズに対応している。

  • 新時代のサイクロンとして開発されたヘプタフォースには、8種のバリエーションが存在する。写真はチタンカバー+カーボンエンド仕様で、単体重量はチタンブルーと同じ2.6kg。なおステンレス/メタルマジックカバーの単体重量は、チタンよりわずかに重い2.9kg。

  • 鮮やかな虹色を実現したチタンブルーカバー。その色付けは、ポリッシュ加工後の陽極酸化処理によって行われる。上下方向にグラデーションがかけられた配色はヨシムラならではで、開発時にはブルー/ゴールド/シルバーのバランスを何度も検討したと言う。

  • マフラーの主役と言うべきカバー部にエッチング加工+ブラックペイントを施し(ベース素材はステンレス)、その後部に磨き込まれたコーンエンドを設置することで、落ち着いた佇まいを演出するメタルマジックカバー+ステンレスエンド。

  • 特徴的なコーンエンドの素材は、金属ならではの質感と輝きが魅力のステンレスと、レーシーなイメージが感じられるドライカーボンの2種を設定。後端部はヨシムラ製マフラーでは初となる四角形だ(ただし内部の排気口は円形)。

  • コーンエンドの素材に関わらず、エンド部のインナーはステンレスで、表面にはアクセントとしてショットブラストが施される。下側に見えるヨシムラの文字はレーザー加工で刻印。モデルによっては排気口にインナーバッフルを装備。

  • ヘプタフォースに限った話ではないものの、近年のヨシムラ製マフラーの内部は、ほとんどすべてのモデルがストレート構造を採用。もちろん、独自の技術で入念な消音対策が施されているため、排気音量は規制値内に収まっている(政府認証プレートはカバー裏面に設置)。

  • 3分割式のボディパーツの結合には、ステンレスバンド+リベットを使用。そのリベットを間近で観察してみると…。他社製マフラーで一般的となっている汎用リベットではなく、ヨシムラが独自に開発したディンプルタイプとなっている。

  • 既存のマフラーでは棒状の素材に曲げ加工を施してスプリングフックを製作していたヨシムラだが、ヘプタフォースでは板材を用いた新作スプリングフックを設計。頂点に向かって絞り込まれていく形状に、ヨシムラならではのこだわりが感じられる。

  • 独自の7角形ボディに対応するため、サイレンサーバンドと耐熱ラバーは専用設計。軽量化とデザイン性を意識した“肉抜き”は特に目新しい手法ではないものの、バンド内にピタッと収まるよう、ラバーの開口部にフチが設けられている点には、ヨシムラの親切心が感じられる。

  • 近年のヨシムラでは、マフラー側面にリベット留めされるエンブレムも、各機種で専用デザインを導入している。ヘプタフォースやR-11、R-77J/Sなどは、エンブレムの外周がマフラーの特徴をイメージさせるデザインを採用。

PICKUP SERIES

2種のスズキ車用に加えてカワサキZX-14Rや、ヤマハTMAX530用が登場
今後もミドルクラス以上を中心にラインアップを拡大していく予定

7角形という斬新なスタイルを採用しつつも、前方/後方から見た際のフォルムが左右対称となるヘプタフォースは、片側1本出しと左右2本出しの両方に使えることを前提に開発された。第1弾として2013年3月にデビューしたのは、GSX-R1000(2012年~)とハヤブサ(2008年~)用のスリップオンだが、8月にはZX-14R/ABS(2012年~)、そして2014年初旬には、初のフルエキとなるヤマハTMAX530用も登場。今後はミドルクラス以上のスポーツモデルやネイキッドなどを中心に、ラインアップを拡大していく予定だ。なお、ヘプタフォースは他のヨシムラ製ストリートマフラーと同様、2年間の品質保証付きで、車検対応/政府認証品として販売される。 (2014年1月現在)

  • GSX1300R HAYABUSA
    2008年~

    現行ハヤブサ用は、6000rpm前後のつながりのよさと、ピークパワー後の落ち込み軽減を意識して開発。重厚さが強調された音質は、ツーリングでも心地よく感じられると言う。テールパイプを加えての重量は純正の半分以下となる7.0~7.6kg。

  • GSX-R1000 L2
    2012年~

    日本に正規輸入されているカナダ仕様に対応。ノーマルとは一線を画するスポーティな走りを目指して、開発はスロットル操作に対する反応のリニアさとフラットなトルク特性を重視して行われた。近接排気音は91db/5500rpmで、加速走行騒音は81db。

  • ZX-14R/ABS
    2012年~

    シャープでエッジが利いたマフラー形状が、車両のデザインと素晴らしいマッチングを見せるZX-14R用は、スポーツ性能と音質の向上を主眼に置いて開発。左右セット重量は、ノーマル:14.5kg、ヘプタフォース:7.3~7.9kgで、国内に正規輸入される東南アジア仕様に対応。

  • T MAX530
    2013年~

    アクセルを開け始めてからのスムーズな加速は、低速域を超えた辺りからノーマルとは違ったパワフルなものとなる。パワー・トルク共に全域でス タンダードを上回る性能を発揮。大排気量ツインの鼓動は、大人のライダーを満足させるものとなる。

BRAND INFORMATION

ヨシムラジャパン

1954年に活動を開始したヨシムラは、日本を代表するレーシングコンストラクターであると同時に、マフラーやカムシャフトといったチューニングパーツを数多く手がけるアフターマーケットメーカー。ホンダやカワサキに力を注いだ時代を経て、1970年代後半からはスズキ車を主軸にレース活動を行うようになったものの、パーツ開発はメーカーを問わずに行われており、4ストミニからメガスポーツまで、幅広いモデルに対応する製品を販売している。

 

住所/神奈川県愛甲郡愛川町中津6748
電話/0570-00-1954
営業/9:00-17:00
定休/土曜、日曜、祝日