バイクイズムを追求し続けるWM(ダブルエム)カフェレーサー開発に迫る
取材協力/ダブルエム(WM)ウイング北大阪  取材・文・写真/モリヤン  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年04月30日
1982年の創業以来、ヤマハ SR400/SR500 に代表されるシンプルなカスタムを追求してきたダブルエムは、今回ビッグバイクのスタイリングに着手。すでに、従来からあるアッパーカウル等のフィッティングパーツに加えて、ガソリンタンクやマフラー等も開発することになった。そのターゲットは、ホンダ CB1100 である。

INTERVIEW

トラディショナルスポーツの
さらなる魅力を追求するダブルエム

東大阪に拠点を置くスペシャリティショップ『ダブルエム』のコンセプトは、トラディショナルなカスタマイズ。ベースとなるバイクは、ヤマハの SR400/SR500 を筆頭としてカワサキの W650/W400/W800 やエストレヤ、250TR、スズキの ST250 等、そのほとんどがシンプルなシングル&ツインエンジン搭載車である。完成されたシルエットは、どの時代のカスタムもシンプルで街に映えるカフェレーサーやスクランブラー。そしてトラッカーというスタイルだ。デザインの根底には、1960年代から 1970年代に魅力を放っていた当時のレーサーやモトクロッサーなどのシルエットを現代に蘇らせるというコンセプトが見える。そして、各パーツは繊細な金属加工を施した優秀な作品として、長年ユーザーに支持されてきたものばかりだ。

 

そんなダブルエムが開発を進めるパーツは、ホンダの CB1100 用の外装やサスペンション機構、ステップ、そしてマフラーなのだという。シングルマシン用のパーツを作り続けてきた加工技術のノウハウとセンスを、ビッグマシンにも注ぐ。しかしそれは、ハイパーな現代レーサーをまったく意識しないダブルエム独特の路線として考えられたものである。

 

ホンダの CB1100 は、現代に蘇った往年のスポーツバイクとして人気のあるモデルである。スタンダードではアップライトなポジションでツーリングバイク的なスタイルではあるが、そのシルエットは実にシンプル。つまりこれまでダブルエムが手がけてきたシングルエンジンのモデルたちと同じ空気感を持っているのだ。

 

ホンダの4気筒といえば、初代の CB750フォアが最初のイメージリーダーとなるが、このモデルもストックでは普通のツーリングバイク。しかし、本来のホンダマルチエンジンは 1960年代のグランプリレーサーとして輝きを放った歴史があり、当時の CB750フォアも、ロングタンク&シングルシートというスタイルでアメリカのデイトナレースウェイを疾走した。ディック・マンが駆ったこの CB750レーサーは、タミヤのプラモデルにもなったことで有名だが、今回のプロジェクトは、そのレーシングマシンのシルエットを目指したカフェレーサーというコンセプトなのである。

 

このプロジェクトにはもうひとつ、リアサスペンションのローダウンというテーマがあるのだが、その要望はストックの CB1100 に乗るユーザーからの声だった。しかし、サスペンションユニットを交換しないローダウンの場合、スイングアーム側の取り付け位置を後方に移動するという従来からの単純な手法では、スプリングの動きが悪いゴツゴツとした乗り心地になってしまうことが明らかだ。さまざまなアイディアを試した結果、フレーム側の取り付け位置を前方に移動するという方法が採用された。

 

スイングアームのホイールアクスル部分と前方のピボット。そしてフレームのシートレール部分にあるアッパーマウントの三角を小さくする方向にレイダウンされることで、レバー比が5%アップ。垂直方向で約 15mm のローダウンとアクティブに動くリアアームが実現できた上に、スプリングイニシャルを下げるセッティングができるようになった。ちなみにこれは、1970年代後半から 1980年代のモトクロッサーに多く採用されていた手法でもある。リンク機構を持つ現代のリアサスペンションが生まれる以前の、シンプルかつ効果の高いセッティング方法だ。

 

PICKUP PRODUCTS

これは当時のホンダへのオマージュ
夢を形にする一大プロジェクトだ

試作中の CB1100 カフェレーサー。アルミのロングタンクはほぼ完成の域に達しているが、シートカウル&シートはおおまかなイメージのまま。シートは現状、薄いウレタンを貼っただけのものだが、もちろん品質の高いフィニッシュが期待できる。そのほかにはバックステップや左右4本出しのメガホンマフラーも製品化される予定である。そして、ノーマルの CB1100 用にもパーツを開発した。小ぶりなアルミアッパーカウルは、2014年以前と以降のモデル用にそれぞれステーを用意。ハンドルバーやフロントフェンダー、フロントフォークブーツなども販売されるのだ。

 

WM-5050 CR Racer type フロントフェンダー/42,000円

ハンドメイドのアルミフェンダーにワンピースデザインの強固なステンレスの取り付けステーとクラシカルなブレースを装備。

WM-5191 フォークブーツセット/9,000円

柔らかなRでデザインされたクラシカルな逸品。純正品と同様の対候性に優れた素材を使用。

WM-5301 CB1100 レイダウンキット/18,500円(予価)

アクスル垂直方向で約 15mm ダウン、前傾したディメンジョンは5%のレバー比アップ。
(スプリング、サイドスタンド、チェーンケースなど、すべてのコンポーネントがストックのままで装着可能)

W-78 CB1100 Wing Bar/10,000円

ハンドルバー1本分だけ低く手前に移動させ、市街地でのタイトな取り回しからクルージングまでカバーするオールラウンダー。
(全年式対応、スイッチ穴開け済み、ノーマルウエイト取り付け可)

※価格は2015年4月現在、税抜き表示です

BRAND INFORMATION

ダブルエム(WM)

住所/大阪府東大阪市水走2-9-33
定休/土曜、日曜
営業/10:00-19:00
Tel/072-961-1888

カスタム製作 30 年以上の実績を誇るダブルエムのコンセプトは、常にトラディショナルスポーツを追求すること。1990年代には、カワサキゼファーのホイールをスポーク化したスポーツバイクの提案など、マルチエンジン車のモディファイも手がけた経験がある。そんな同社が考える新しい試みには、大きな期待を感じてしまうのだ。