日常整備レベルの装着作業で走りが劇的にスムーズに
取材協力/株式会社寺本自動車商会カワサキアトミック  取材・文/石橋 知也  撮影/フォトスペースRS
掲載日/2014年11月5日
クランクケース内を積極的に負圧化する『T-REV αシステム』は、エンジンブレーキがスムーズになったり、スロットルが開けやすくなったりと、その効果はよく知られている。しかし実際に装着することを考えると、最近のバイクはやたら配線や配管が多いから面倒なのでは…。そこで、実際に装着作業を教えてもらうことに。それを見ると「何だ、そんなコトか!!」と不安は一掃された。

FEATURE

スポーツ派とツーリング派
装着割合はすでに半々!?

『T-REV』は、クランクケースを積極的に負圧にしてピストン下降時のポンピングロスを減らし、かつケース内の空気密度を低くすることで、ケース内の空気の攪拌抵抗を低減させるシステムだ。最新エンジンではケース内の負圧化が常識で、STDでもケース内抵抗は減っている。実はこうした最新並列4気筒にも効くのかという疑問があったのだが、『T-REVα』を装着したZX-14Rの走りは、加減速もシフトアップ&ダウンもすべてがスムーズだった。

 

「どの車両に装着しても明らかにスムーズになりますね。T-REVはスポーツ志向の強い方に支持されてきたんですが、最近はツーリング派の方が増えてきて、ウチだと半々ぐらいになりました。スムーズで乗りやすくて、疲れが少ないというのが要因でしょうね。また、排気量も問いませんね。ニンジャ250でもZX-14Rでもスムーズさが出ますから」

 

と語るのは、今回取り付け作業でお世話になったカワサキアトミックの伊藤武司社長だ。

 

ZX-14RはSTDでも低中速域がスムーズで、街乗りにもツーリングにも使いやすいバイクだ(高回転域は強烈なパワー炸裂だが)。それがT-REVαの装着でさらにシルキーになる。減圧作用でまず感じるのはエンジンブレーキの効きが程良くスムーズになること。3速から2速、2速から1速など、低いギアでのシフトダウンが安心してできる(リアのホッピングもない)。これは見知らぬ峠道やブラインドコーナーで余裕を生む。また、加速側も低回転域から回転上昇が滑らかで、スロットルが軽く感じられる。

 

エンジンブレーキに関しては、2ストロークエンジンみたいな“効かな過ぎ”感がない。これはT-REV開発・製作者の寺本幸司さん(2014全日本JSB1000にBMW HP4で参戦中のトッププライベーター)が、車種ごとに減圧させる加減を、念入りに実走テストを重ねながら設定しているからだ。だからT-REVαを装着した今回のZX-14Rは、STDを知らなければ“新型”と思ってしまうだろう。それぐらい自然で違和感がない。

 

今回の試乗では、クランクケース内圧の計測も行った。ZX-14Rのエンジンはさすがで、T-REVαなしでほぼ0kPa(大気圧)。このエンジンなら上がっても+0.5kPaだという。一方T-REVαを装着すると、-9.0kPaまで下がった。今回の試乗コースはあまり回転を上げられなかったのに、だ。本来なら-10kPa前後まで減圧するという。

 

「公道仕様はだいたい-10kPa前後の設定なんです。レース仕様だと-15~-20kPaまで減圧します。MotoGPマシンの中には-50kPa まで下げるバイクもあるといいますが、一般的に-30kPa以下になると油圧低下、オイルの泡立ち、オイルシール破損などの問題が出るとされています。宇宙の真空状態が-101kPa ですから、相当な減圧と言えます。-10kPaなら、潤滑やオイルシールの問題はまったく起きません」

 

と、開発者の寺本さん。普通の走り方で充分効果があることが数値でも実証されたわけだ。

 

しかしT-REVαは装着が面倒なのでは? という先入観があった。クランクケースから出るブローバイガスパイプの途中に装着するT-REVならば簡単だが、AI(ニ次エア)の排気負圧を利用するT-REVαは配管が難しそうに思えた。しかしよく考えれば、クランクケースとAIの配管に多少のバイパスを作って繋ぎ直すだけ。スペースはたしかに狭いが…。

 

「今回ZX-14Rには初めて取り付けましたが、そんなに手間はかかりませんね。カウル脱着も含めて1時間半ぐらいでしょうか。コツをつかんで慣れれば1時間ぐらいかなあ」

 

と、伊藤さん。KITは親切な設計なので間違いも起こりにくい。ユーザーだとカウル脱着自体が手間になるが、これさえ慣れていれば問題ないレベルだ。ZRX1200 DAEGなどのネイキッドモデルなら、T-REVαでもタンクを外すだけで簡単(手が入りやすい)。また、DAEG用は装着後にその姿が見えるので、ドレスアップ効果も抜群だ(フィッティング類も非常にキレイ)。

 

T-REV/T-REVαは、排ガスのCO2もHCもSTDと同等で問題なく車検OK。またエアクリーナーボックスが減圧しないので、ラムエア装備でも問題が出ない。メンテナンスは本体内部の洗浄(パーツクリーナーでできる)ぐらいで十分。走行距離や使い方にもよるが、半年~1年ぐらいで行えばベストで、最低でも車検毎に整備しておけばよいとのこと。

 

補修パーツは本体用Oリングやリードバルブなどが用意されている。今回は最新並列4気筒でも想像以上の効果と、そう難しくない装着作業(フルカウルのZX-14Rは最も面倒な部類だろう)が確認できた。これはスポーツ走行だけでなく、ツーリングにも街乗りにも、車種排気量問わず大いにアリだ。「ちょっとエンブレが強過ぎる」「もっとスムーズなエンジン特性にしたい」「シフトフィーリングを軽くしたい」「ツーリングでの疲れを軽減したい」と思うなら最適だ。環境にも身体にも愛車にも優しい、現代社会に合ったチューニングパーツだ。

MAINTENANCE

配管は増えるが作業自体は難しくない
まずSTDのAIシステムを理解しよう

T-REVαは、簡単に言ってしまえばクランクケース・ブローバイガスホース、エアクリーナー、AI(セカンダリーエアインジェクション=二次空気導入装置。以下AI)の3個所に繋がる配管の間に装着する。本体はクランクケース背面から出たブローバイガスホースの中間に配置。本体には3つの口があって、1つ目はブローバイガス(クランクケース)に、2つ目はエアクリーナー(フレッシュエア)に、3つ目はシリンダーヘッドカバーにあるAIキャップ(排気ポートに二次エアを導入する口)に繋げる。STDのソレノイドバルブ(AIをON/OFFする)はそのまま利用。T-REVαはAIの排気負圧を利用していて配管が増えるが、接続自体は難しくないのだ。

 

メガスポーツZX-14Rは排気にAIを備えているから、これを利用するT-REVαに車種別設定がある。テスト車のマフラーはBETT製NASARTエボリューションT2(フルエキ・フルチタン2本出し)だが、STDマフラーでもT-REVαの効果に変わりはない。T-REVα装着時の排ガスも規定値以下で車検もOKだ。

本体以外にホース、3WAYジョイント、ホースクランプ、タイラップなど必要なパーツすべてが同梱されたT-REVαのZX-14R用KIT。車種によって若干パーツ構成が異なるが、取扱説明書を見れば配管を間違うことはないから心配無用。注意は組み立て時にホースの向きぐらいだ。

作業は両サイドカウルを取り外すことから始まる。T-REVα装着に限らず、日常整備でもフルカウルモデルはカウル脱着が必須。オーナーなら、まずこの作業に慣れること。そのうちプロより上手くなる。カウルはいらなくなった毛布やシーツなどの上に置くといい。

右シリンダーヘッドカバー部からAIホースASSYを取り外す。ソレノイドバルブにカプラーがあるのでこれを先に外す。シリンダーヘッドカバーのAIキャップ(2個)からAIホースを、エアクリーナーからフレッシュエアホースを抜く。そしてAIホースASSYを右側から取り出す。

シリンダーヘッドには2つのAIキャップがあり、見えているのは3-4番気筒用(車体右側)で、奥に1-2番気筒用がある。3-4番気筒用AIキャップのみシリンダーヘッドから取り外す。口の向きはSTD状態では内向きだが、これを配管が楽なように外向きにするためだ。取り付けは逆でも問題なし。

これが取り外した3-4番気筒用AIキャップ。上側に見えている口を車体右側に向くように付け替えるわけだ。この口から二次エアを排気ポートに送り込みで、ここでT-REVαは排ガスの負圧も拾う。AIは排ガスにエアクリーナーからフレッシュエアを導入して排ガスを完全燃焼させる仕組みだ。

3-4番気筒用AIキャップをSTDとは逆向きに取り付ける(口が外向きになっている)。これで口は1-2番気筒用も3-4番気筒用も車体右側の向きになった(1-2番気筒用はSTD状態で口は車体右向き)。また、3番気筒のプラグキャップもコネクターを右向きになるよう向きを変更する。

AIホースASSYのSTDフレッシュエアホース(エアクリーナーに差し込まれるホース。ソレノイドバルブから出ている長い方)を写真のように60mmの所でカットする。

カットした90度部分は、AIホースASSYからエアクリーナー(フレッシュエア)に繋ぐ配管として再使用する。

10カットしたホースにプラグ(真ちゅう色)を差し込む。差し込み用のツマミ(ボルト)で奥まで入れたらボルトは回して抜いてしまう。プラグはクランクケース内圧調整用で、T-REVαの効き具合を程良くしている。キャブでいったらジェットで、内径はテストして乗りやすいように車種別でセッティング済み。

11AIホースASSY完成図。ソレノイドバルブ右側と写真下側が新たに取り付けたT-REVαのKITホース類だ。写真左下の3WAYジョイント下にプラグを入れたホースを差し込んである(先端は斜めカットが先端方向)。KITのホースや3WAYジョイントは取扱説明書を見れば簡単に組み立てられるから心配いらない。

12今度は車体左側の作業。クランクケース左背面からブローバイガスホースを外す。まず、エアクリーナー側のクランプを緩めてエアクリーナー側からホースを外す。

13次にクランクケース側からブローバイガスホースを抜く。このときは、車体右側から長いドライバーなどでホース先端を押すと上手くいく。車体左側からだとスペースがちょっと狭いので抜きにくいのだ。懐中電灯などで照らしながらだと先が見やすい。

14これがSTDブローバイガスホース。ホースは使わないが、STDホースクランプは2個とも再使用するので取り外しておく。

15T-REVα本体をKITのホースで完成させる。U字型ホースがクランクケースに、L字型ホースがエアクリーナー側に(長い方を本体に接続)、黒メッシュホースが車体右側のAIホースASSYに繋がる(KITで組んだ3WAYジョイントに接続)。黒メッシュホースが排ガスの負圧を拾いクランクケース内の圧力を引く。

16完成したT-REVαを車体左側から差し込む。黒メッシュホースは車体右側に出す。L字型ホースをエアクリーナー側に、U字型ホースをクランクケースに接続し、STDクランプで固定する。クランクケースにU字型ホースを接続するときは、最初から真っ直ぐに押し込まず、まず斜めにしてから押すとやりやすい。

17黒メッシュホースをAIホースASSYの3WAYジョイントに接続する。右手で持っているホースが3-4番気筒用AIキャップに繋がるホースだ。

18車体右側(シリンダーヘッドカバー上)からAIホースASSYを差し込み、3つのホースを接続する。AIキャップへ2本(ソレノイドバルブからが1-2番気筒用へ)、フレッシュエア(エアクリーナー側)へ1本だ。ホースをタイラップで固定。そしてソレノイドバルブのカプラーを接続すれば完成。

19クランクケース内の圧力を計測してみると…。これはT-REVαなしの状態で、ZX-14Rエンジンはさすがに最新設計なのでゼロ(単位はkPa=キロパスカル)。つまり大気圧だ。旧い空冷エンジンだとプラスで、大気圧より高くなってしまう。内圧が高ければ抵抗は増えてしまう。

20T-REVα作動時。クランクケース内が負圧(マイナス表示)になっているのが分かる。これで-9.24kPa。STDとの差は歴然。これは実走でもすぐに体感できた。

21取材にご協力いただいたカワサキアトミックはカワサキ正規代理店で、カワサキの新車・逆輸入車、他メーカー車も扱う大型ショップ。ピットは1Fにあり、2Fは車両展示など。サーキット走行会を主催するほどスポーツライディングに熱心な一方で、ツーリング派のお客さんも多い。

T-REVαシステムの装着前と後の実走テスト

メーカー別装着イメージを見てみよう!【2輪専用 T-REV 取り付けガイド】

  • ホンダ
  • ヤマハ
  • スズキ
  • カワサキ
  • 輸入車

それぞれのメーカー名のボタンをクリックすると装着イメージのPDFが別ウインドウで開きます。

BRAND INFORMATION

株式会社寺本自動車商会

住所/大阪府大東市諸福8丁目4-22
電話/072-875-8088
営業/9:30-19:30
定休/火曜

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