Z900RSの走りを劇的に変えるSP忠男の感性に響くマフラー
掲載日/2018年3月28日
取材協力/SP忠男 
取材・文/淺倉恵介  写真/真弓悟史  構成/バイクブロス・マガジンズ
Z900RSの走りを劇的に変えるSP忠男の感性に響くマフラー

いま最も注目を集めているビッグネイキッド、カワサキ・Z900RS。カスタムシーンでも話題の1台だが、気になるのがアフターマフラーの存在。そこに、高性能マフラーメーカー『スペシャルパーツ忠男』から、待望のフルエキゾーストシステムのリリースが決定。見た目こそクラシックなショート管だが、中身は最新技術が満載。その驚きのパフォーマンスに迫る。

マフラーだけでこれほど走りが変わるとは……
SP忠男の最新マフラーの持つ驚きの性能

クラッチレバーを離した瞬間、マシンは想定外の勢いで発進した。Z900RSは、これほど“前に出たがる”バイクであったろうか? のっけから意表を突かれるパワーの源は、装着されたSP忠男のマフラー『POWERBOX Full』の存在に他ならない。なにしろこのバイクは、マフラー交換以外は完全にノーマルの車両なのだから。けれど、これは気を引き締める必要があると、膝と踵に力を入れ直した。

POWERBOX Full ステンレスポリッシュ(価格16万2,000円・税込)。SP忠男、渾身のフルエキゾーストシステム。超軽量ステンレス製。音量 92db(近接)/81db(加速)。車検対応、政府認証マフラー。ステンレスつや消しブラックペイント仕上げ(価格17万1,720円・税込)。フルチタン(価格未定)。

スロットルを開き、タコメーターの針が2,500回転を超えるあたりで、もう一段トルクが上乗せされる。ノーマルのそれを明らかに上回るパワーが、マシンをグイグイと押し出していく。レスポンスも俊敏、かつスロットル操作に忠実だ。欲しいパワーを欲しいだけ引き出すことができる。街乗りやワインディングで多用する回転域のことだから、実質的なスピードアップは相当なものだろう。

Z900RSは、極めて完成度の高いバイクだ。パワーデリバリーは、スムーズの一言。どの回転域からスロットルを開けても、ライダーの意思に従順な反応をみせる。だが、そこに物足りなさを感じる部分もなくはない。「もう少しスリリングな部分があれば……もう少し暴力的な味わいがあってもいい……」個人的には、そう感じていた。その“こうであれば”というフィールとパワーが、POWERBOX Fullにはあるのだ。

ズ太い低速トルクから、パワフルかつフレキシビリティな中回転域。そして、圧倒的な高回転のパワーまで、全域で力強さを誇示するPOWERBOX Full。速く、そして楽しいマフラーだ。

高回転域も圧巻だ。6,000回転くらいから二段ロケット的にパワーが盛り上がり、レブリミットまで一気に吹け上がっていく。ピークパワーの上乗せもかなりのものなのだが、6,000から7,500回転の範囲が、じつになんともエキサイティング。ビッグバイクならではの、手に負えないパワー感がたまらない。このマフラー、間違いなく速い。そして、何よりも走りが面白い。マフラーを交換するだけで、これほどマシンの性格が変わるのかという感動。興奮が収まらないまま、SP忠男マフラー開発のキーマン、大泉善稔氏に話を聞いた。

スペシャルパーツ忠男 大泉善稔
SP忠男でマフラー開発を統括する立場にあり、同社製のマフラー全ての開発に関わる。バイクに関する豊富な経験を、深い知識を持ち、SP忠男のポリシーである「気持ちイーッ!」マフラー作りを追求している。

「SP忠男でマフラー開発を行うときは、まずノーマルで走りこみます。その上で、何が足りないのか? どうしたら、もっと楽しく走れるようになるのか? を考えます。Z900RSはとても良く出来ていますよね、エンジンも車体も素晴らしい。ですが、スタイルと走りのキャラクターがマッチしていないように感じたんです。デザインはZ1のイメージをモチーフにしていますが、エンジンのフィーリングが750ccからのスケールアップのような少し線が細く、洗練され過ぎているというか……。もちろん、それ自体は悪いことではありませんが、マシンの形に見合った、空冷Zのようにドロドロっとした低速のトルク感を出したら、もっと面白くなると考えたんです」

ショート管スタイルが、流麗なZ900RSのフォルムに見事にマッチング。懐かしさを感じさせるルックスだが、最新のマフラー技術を投入して作られている。

開発がスタートした当初は、とにかく低速トルク増大が目標であったという。だが、完成したPOWERBOX Fullは、ただ低中速が力強いだけのマフラーではない。

「開発を進めるうちに“それだけでいいのか?”と考えるようになったんです。Z900RSは現代の最新モデルですし、Z1のイメージを追うだけではダメなのではないかと……。現代のZとは何かを考え、ピークパワーの向上や中間回転域の特性を煮詰めていきました」

現代のZに求められるものとは? をテーマに開発が進められたZ900RS用POWERBOX Full。パワー、スタイル、クオリティ、全てに妥協を許さずに作り上げられたマフラーだ。

全域でライダーを驚かせる現在のキャラクターに至るには、紆余曲折があったというわけだ。また、スタイルにもこだわりをみせる。

「こういうデザインのマシンですから、ショート菅スタイルしか考えませんでしたね。ですが、昔ながらのショート菅を作っても、思ったようなパワー特性は得られませんし、音量や排気ガスの問題で車検に対応させるのは難しい。ですから、パワーボックス構造の採用は必須でしたし、SP忠男はパワーボックスの技術を持っているからこそ、このマフラーが完成したとも言えますね」

車体下を覗き込むと、センターパイプ部分とサイレンサー部分の中間あたりに、パワーボックス構造の心臓部であるサブチャンバーが設置されていることがわかる。サブチャンバーの容量や装着する位置によって、マフラーの特性は大きく変化する。研究を積み重ねてきた、SP忠男だけが持つ技術だ。

パワーボックスは、SP忠男の誇る独自技術。マフラーの構成パーツにサブチャンバーを設けることで、排気の流れをコントロールしパワー&トルクアップやパワー特性の味付けを可能としている。ただし、単純にサブチャンバーを追加すれば良いというわけではなく、狙った性能を実現するには開発と製造にコストがかかる。そこで妥協を許さず、理想のマフラーを追求するのがSP忠男の流儀なのだ。

ヘダーズパイプは迫力あるφ42.7mm径。手曲げ管を思わせる、大きなアールを持たせたレイアウトが魅力。4本のパイプが最も美しく見える角度を追求し、集合部では全てのパイプが異なる差込み角とされる。仕切板入り4in1集合方式を採用。

サイレンサーはオーセンティックなショート管タイプ。排気音は“これぞ4気筒、これぞ集合管”といった快音。音質にもこだわり、あえて金属質なノイズを加えることで、迫力あるサウンドを演出している。音量は当然法規制に適合、アイドリングではノーマル並みか、それ以下の静かさ。

Z900RS用POWERBOX Fullは、今回の試乗で使用したステンポリッシュ仕上げの他、ツヤ消しブラックペイント仕上げが同時リリース。また、フルチタンモデルもラインナップに追加予定。手軽なスリップオンタイプのPOWERBOX MEGAPHONEも好評販売中だ。Z900RS乗りなら、一度は試してほしいSP忠男POWERBOX。その走りに、きっと衝撃を受けるはずだ。

リーズナブルな価格で、気軽に装着できるスリップオンタイプマフラー。POWERBOX MEGAPHONE(価格8万6,184円・税込)。超軽量ステンレスポリッシュサイレンサーアウターと超軽量ステンレスサイレンサーインナーを採用。音量 92db(近接)/81db(加速)。車検対応、政府認証マフラー。

SHOP INFORMATION

SP忠男 浅草店

住所/東京都台東区花川戸2-17-10
電話/03-3845-2009
営業時間/平日 10:00-19:00、土日祝日 9:30-18:00
定休日/毎週水曜日、第3火曜日

高性能マフラーメーカーとして知られるSP忠男が展開するショップ。マフラーの販売、装着はもちろんのこと、タイヤ交換を中心とした足回りのメンテナンスを得意とする。タイヤに関する豊富な知識を持つスタッフが、親切丁寧な作業を行ってくれる。

SP忠男のマフラー開発奮闘記【Z900RS 4in1 編】