【Page2】HONDA VF1000R

掲載日:2010年04月14日 特集記事絶版カスタム「今尚斬新」~VF1000R、RZ250ほか~    

記事提供/2009年11月24日発行 絶版バイクス5
■取材協力/ビトーR&D Phone 0796-27-0429

BITO R&D

HONDA VF1000R6

1980年代のバイクブームの頃、スクーターから1000ccクラスまで、毎週のように登場したニューモデル。
今ではすっかり忘れ去られた存在となったモデルも少なくないが、欠点を補うことで再び輝きを取り戻すものもある。

現代の1000ccスーパースポーツに対して車体サイズはふた回りほど大きく、カラーリングも「いかにも!」なトリコロールだが、どれも同じようなデザインになってしまった今のバイクと比べてちゃんとした主張がある。フロントタイヤを18インチとすることで、16インチならではの前下がりのアンバランス感がなくなり、重量車らしい落ち着きがある。

 

「ひょうたんから駒が出た!」不遇のVF1000Rが大変身!!
磨けば光る原石を見定めるコンストラクターの真骨頂。

1980年代前半から中盤にかけてのバイクブームでは、いわゆる「数打ちゃ当たる」式にニューモデルが開発されて市場に投入された。次々と登場する新車群を前にバイク好きの興奮度は急上昇したが、一方でじっくり時間をかけて開発され、後世まで残る名車となったモデルは実はそれほど多くない。

 

その頃のホンダを振り返る時、印象深く思い出されるのは、4ストエンジンのNR500による世界GP参戦を筆頭として、立て続けに新たな挑戦と提案を繰り広げたことだ。V型エンジンを搭載し、ブレーキはインボードとなり、フロントタイヤは16インチ化されて、カウルの装着が認められれば、フロントからリアまで流れるようなデザインが主流となった。むろん、そうした装備やメカニズム採用の裏には、性能向上や製品性のアップなどの理由があった。

 

ただし、そうしたチャレンジのすべてが実を結ぶわけではない。革新的で意欲的であっても市場で評価されず、いつの間にか歴史のヒダに埋もれることもある。1984年にデビューしたVF1000Rは、ホンダ「不遇の一台」の最右翼として挙げられるモデルだ。角形スチール製フレーム、フロント16・リア17インチタイヤ、カムギアトレインを採用したV型4気筒998ccエンジンなど、1969年から続いてきた直列4気筒、CBの歴史を書き換えるべく登場したものの、3年後の1987年に登場したRC30=VFR750Rによってあっさりフラッグシップ・スーパースポーツの座から陥落。さらに今となってはスーパースポーツはやっぱり直4のCBR1000RRがイイとなって、より一層影が薄い存在となってしまった。

 

実際のところ、重いバイクに俊敏な操縦性を与える狙いがあったのだろうが、この時代のフロント16インチ車の操縦性にはかなりのクセがあった。何しろ250ccのVT250Fでも750ccのVF750Fでも、真っ直ぐ走っていてもフロントタイヤの存在感が希薄な上にコーナリングになるといきなり切れ込む特性があった。ワインディングの下りコーナーではかなりトリッキーな動きを見せることは、当時の多くのライダーが経験していることだろう。

 

そんな「あのヒトは今…」的な機種と言ってもいいVF1000Rを、この絶版車ブームの舞台に引っ張り…上げようというのがビトーR&Dの美籐代表である。もっとも、当初からVFが狙いだったわけではない。当時のことをよく知る美籐さんにしてみれば、スタンダードのVFなど興味の範疇外のさらに外だった。ところが、RC30のモディファイ過程で「サンマルより台数が多くて値段が安いV4」として試験的にVF1000Rをチューニングしてみたところ、驚くほどの実力が隠れていたという。

 

美籐さんによれば、VF1000Rの欠点、修正すべき三大ポイントは「16インチタイヤ」「ブレーキ」「フロントサス」だという。いずれも80年代当時は通用した装備だが、現代のパーツ事情で見るとまったく話にならない。これは絶版車全般に通じることだが、特にVFの場合は16インチタイヤによって美点がスポイルされている。それでもフレームやエンジンから伝わる非凡な能力に可能性を感じ、モディファイを実践した。

 

美籐さんのチューニングによって確かな接地感と軽快なハンドリングが与えられたことで、これが本当にあのVFなのか!? と疑いたくなるほど、自然な操縦性が実現している。市街地走行からワインディング、高速道路まで、どんなフィールドでも安心してつきあえる。

20数年前、当時所有していたVF750Fでフロント16インチに手を焼いた本誌栗田と、「最初は完全なダメバイクだと思ってました」と笑う美籐社長。今なら値段が安くてタマ数もそこそこあるので、80年代のホンダ好きは要注目だ。

 

試行錯誤の末に到達した前後18インチのマグ鍛とダンロップ製ラジアルタイヤ、KYB製フロントフォークと高性能ブレーキを与えられたことで、RC30の代わりというには惜しいほど、驚くほど魅力的なスーパースポーツとしてVF1000Rは生まれ変わったのだ。

 

80年代初頭の定番装備を
現代流に磨き上げる

「NSコムスター」と呼ばれるアルミホイールは、NR~NSと続く世界GP挑戦の過程で生まれたもの。16インチの選択もレースからのフィードバック。フロントフォークは純正でφ41mmと太いが、ブレーキを掛けると急激に減衰が立ち上がるアンチノーズダイブ機構のTRACが装備されている。ビトーR&Dでは「転ばないタイヤ、効くブレーキ、動くサス」の3点セットをアレンジしてVFのポテンシャルを引き出した。リアタイヤは純正の17インチを18インチ化。タイヤ径は大きくなるが剛性アップと軽量化を両立できるラジアル化と、なにより超軽量なマグ鍛によって、スイングアームとリアサスペンションは純正ながら必要十分の仕事をしてくれる。

 

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