【Page6】1998→2009 直4スーパースポーツの特徴?!

掲載日:2010年01月25日 特集記事和歌山利宏が選ぶベストスーパースポーツ    

記事提供/2009年9月1日発行 月刊ロードライダー 9月号

和歌山的

1998→2009 直4スーパースポーツの特徴?!

変わらぬ基本路線を貫くのか、その都度の流行を取り入れるのか。前項のインプレッションを踏まえつつ、和歌山さんに国産各メーカーの4気筒リッタースーパースポーツの特徴を解説してもらおう。

インプレッションをお伝えした初代YZF-R1も、スーパースポーツの起源でもあるCBR900RRファイヤブレードも、そもそもはレース参戦を前提にしたレーシングレプリカではなく、公道でマシンコントロールを楽しむ“超”スポーツであった。

17年前に900RRに乗ったときは、これ以上を望むなら本物のレーシングマシンに乗るしかないと本気に思ったものだが、それでも最高出力は128psで、ワインディングでスロットルをワイドオープンにしていたものである。GSX-Rシリーズも、“トップパフォーマー”をコンセプトとしてきたわけだが、それにしても元々は多くのライダーが身近な環境でスポーツできることを目指していたのだし、ZX-10Rの前身となるZX-9Rは、快適な移動をも重視したスポーツツアラー的な要素を持ち合わせていた。

ところが、世の中がサーキット性能の高さに注目し、'03年にSBKレースの排気量上限が1000ccになり、スーパースポーツがベースマシンとして注目されるようになってからというもの、ますます先鋭化の一途を辿っている。もちろん、汎用性や扱いやすさも重視されてワイドレンジ化されているし、特にホンダは、一般の人たちが公道で楽しむ車両としてのスタンスを守った製品作りを徹底している。だが、スーパースポーツは憧れの対象となるフラッグシップであり、そこに価値観があることも事実ながら、一方で、バイクにとって特殊な存在であるということも知っておくべきであろう。

HONDA CBR900RR~1000RR

SSを開いたパイオニアは
身近さに取り組む


●初代CBR-RRファイヤブレードは'92年に登場したCBR900RR (893cc)で、大排気量化と高出力化から脱却し、軽量な車体を乗りこなす面白さを提唱、トータルコントロールをキーワードにスーパースポーツの世界を切り開いた。その後、2年おきにモデルチェンジし、高揚感とともに友好性を高次元化。2000年型でフレームをセミピボットレスとしてエンジンを小型化したCBR929RRとなり、'02年に954RRへと進化していった。そして'04年型で1000cc化。排気量上限が1000ccになったSBKも視野に入れ、技術的にRC211Vの思想を引き継いだものとなった。さらに'06年に細部に至るまで改良され、'08年型でフルチェンジ。徹底した軽量化とマスの集中化を施し、ファイヤブレード理念の原点に戻ったものとなっている。低回転域こそ強力な印象はないが中速のトルク谷もなく全域でトルクで走ることができ、加えてABS車を設定するなど、多くの人たちとの距離を埋める取り組みが特徴だ。

 

YAMAHA YZF-R1

ワインディングで楽しめるととを軸にして
シリーズを発展する


●YZF-R1は、サーキット性能の追求ではなく、ワインディングで楽しめることをポリシーに1998年に登場。CBRが撒いた種をR1が開花させ、このカテゴリーをメジャーにしたと言ってもいい。その後2年毎のモデルチェンジで、公道でのエキサイトメントとサーキットでのコントロール性を高次元化してきたR1だが、'04年型はSBK参戦も視野に入れ、高回転域の吹き上がり感を目指して大胆にショートストローク化、車体はMotoGPマシンYZR-M1の技術を取り入れてフレームの縦剛性が高められた。さらに'07年型は、エンジンの基本を踏襲しながら5バルブから4バルブ化、電子制御スロットルや可変ファンネルを投入し、扱いやすい180psを実現。車体も含めてサーキット性能を向上させてきた。そして、'09年型では、ボアをφ78ccまでショートストローク化し、クランクにクロスプレーン型を投入。エキサイトメント追求を怠らない一方で、サーキット性能も先鋭化させている。

 

SUZUKI GSX-R1000

トップパフォーマーの
持ち味を維持


●GSX-R1000は2001年、その前年に登場し高い評価を得たGSX-R750/600と基本を共用する形で誕生した(K1)。R1000はR750/600とシリンダーピッチが同一であるため、このクラスとしては異例のロングストローク傾向にあることもあって、低中回転域が豊かで、公道での移動にも順応しやすい骨太のキャラを備えていた。そして、2年毎に改良が加えられていくが、サーキット性能を高めるため高回転域が増強されても、持ち前の低中速性能は依然強力。当初からのサーキット性能を追求した“トップパフォーマー”という基本理念を変えることなく、走り、曲がり、止まることを真摯に高次元化。吸気系の幅小化などによりライポジのスリム化も進んだ。そして'09年の最新型K9は、インプレでも紹介したように、エンジンを小型化してスイングアームを長大化、さらに高次元な走りを実現している。サーキット性能の高さがそのまま操る面白さに直結していることが大きな持ち味である。

 

KAWASAKI ZX-10R

レース参戦を照準にした性格を軸に
先鋭化と進化を続ける


●ZX-10Rの開発コンセプトは、カワサキらしくストレートで、ずばり「サーキット性能No.1」で、初代は2004年型として登場した。それ以前のZX-9Rがスポーツツアラーとしての持ち味を備えていたことからすると、10RはSBK参戦を照準とし、元からリッタースーパーバイクとして生まれてきたことになる。クランク軸とドライブ軸をクランクケース合い面に、クラッチ軸をロアケースに置いたエンジンを、前傾させてバックボーンツインスパーフレームに搭載する構成を踏襲しながら、2年毎にフルチェンジ。ディメンションや剛性バランス、エンジン特性には大きく手が入れられてきた。先鋭化した印象の'04年型に対し、'06年型は感性に合った扱いやすさを追求。そして最新'08?年型はさらに高次元化させるとともにフィードバック性能を向上させている。ただ、エンジンは高回転型の性格を強め、高いハンドリング性能にもピンポイント的なところがあり、セッティングの難しさもある。

 

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