【Page3】R1000の世界は公道レーサー?

掲載日:2010年01月25日 特集記事和歌山利宏が選ぶベストスーパースポーツ    

記事提供/2009年9月1日発行 月刊ロードライダー 9月号

R1000の世界は公道レーサー?

すでに僕は、最新型R1000に公道で試乗。それがレーシングマシン的な素晴らしさを持ち、公道にも順応できることを知っている。基本的な乗り味が従来型から引き継がれた正常進化形であっても、前後長が短縮された新設計エンジンを搭載、マス集中された車体は高い旋回性を見せ付ける。スイングアームが伸びてトラクション性能も高まり、車体の剛性バランスも秀逸で、二次旋回でも旋回性は高い。その結果、コーナーで定常旋回的な走りをする部分は小さく、曲げてスロットルを開いて立ち上がっていく。レーシングマシンが目指すものと方向性を同じくしているのだ。

ショートストローク化されても、現行車で最もロングストローク傾向のエンジンは、クラス最強の低速トルクを発揮、街中にも順応できる。そして6000rpmぐらいからリニアにトルクが立ち上がり、ピーク域のトルクが8000から10500rpm近くまで広範囲に発揮される。強い加速度が維持され、強力であってもピーキーでなく扱いやすい。速く走るための性能特性が追求されているのだ。

ただ、ワインディングでスポーツできるR1000であっても、今回、初期型R1から乗り換えるとなると、ちょっと事情が遣う。初期型R1で楽しく走ることを第一義としたぺースと心理状態のままでは、最新型R1000は本来のポテンシャルを発揮してくれない。

ゆったりしたぺースでは、5?6000rpmのトルクの中だるみに入ってしまうし、姿勢変化もマシンが求めるほどに生じない。スロットルを開け始めても、フレームもしならないので思うように曲がっていかない。R1なら楽しむために走り、サスを動かしてやればいいが、R1000では本来の性能を発揮させ速く走るために、ぺースを高めサスを動かしてやらなければならず、その結果楽しめることになる。

もちろん頭のネジを巻き直し、ぺースと荷重を高めていくと、レーシングマシンの世界を堪能できる。でも、いい意味でも悪い意味でも、それが現在のスーパースポーツの現実だ。公道で楽しめるワイドレンジぶりながら、サーキット性能とSBKマシンとしてのポテンシャルを追求した結果、少々、敷居が高くなっていることも事実のようだ。

誰もがこうしたエキサイティングなマシンを入手できるのは素晴らしいことだ。見方によっては諸刃の剣だが、それがまた魅力であることも僕は否定しない。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索