【Page5】新品オイルシールの打ち込み

掲載日:2010年01月08日 特集記事バイクの足回りメンテナンス    

記事提供/2009年4月1日発行 モトメンテナンス No.82

新品オイルシールの打ち込み時は慌てず丁寧に作業しよう。
  • 各部品を洗浄、点検した後、組み付けに入る。シートパイプのプラスチックのブッシュはW650の場合、単品で部品が供給されないため、著しい磨耗がみられた場合、シリンダーセットのアッセンブリー交換となる。今回は再使用するため、洗浄後、組付け前にシリコングリスを塗布した。

    各部品を洗浄、点検した後、組み付けに入る。シートパイプのプラスチックのブッシュはW650の場合、単品で部品が供給されないため、著しい磨耗がみられた場合、シリンダーセットのアッセンブリー交換となる。今回は再使用するため、洗浄後、組付け前にシリコングリスを塗布した。

  • シートパイプのプラスチックブッシュをインナーチューブに引っかけて破損しないように注意し、シートパイプをインナーチューブに挿入する。ここでは、ピストンリングを縮めてシリンダーに挿入する要領で、プラスチックブッシュを指で押し縮めながら作業すると良いだろう。

    シートパイプのプラスチックブッシュをインナーチューブに引っかけて破損しないように注意し、シートパイプをインナーチューブに挿入する。ここでは、ピストンリングを縮めてシリンダーに挿入する要領で、プラスチックブッシュを指で押し縮めながら作業すると良いだろう。

  • 今回は、上下のスライドメタルをすべて新品に交換した。スライドメタルは、初期のなじみを良くして、テフロンコーティング面の磨耗を抑制するため、また挿入時に傷が付くのを防止するため、シリコングリスを塗布しておく。手元にグリスが無い場合はフォークオイルを塗布する。

    今回は、上下のスライドメタルをすべて新品に交換した。スライドメタルは、初期のなじみを良くして、テフロンコーティング面の磨耗を抑制するため、また挿入時に傷が付くのを防止するため、シリコングリスを塗布しておく。手元にグリスが無い場合はフォークオイルを塗布する。

  • スライドメタルは、切り欠きを手で軽く開きながらセットする。テフロンのコーティング面を傷つけないように、慎重に作業する。インナーチューブの先端に固定される方のスライドメタルは、インナーチューブに設けられた溝にしっかりとはめる。ボトムケース固定側はこの時フリー。

    スライドメタルは、切り欠きを手で軽く開きながらセットする。テフロンのコーティング面を傷つけないように、慎重に作業する。インナーチューブの先端に固定される方のスライドメタルは、インナーチューブに設けられた溝にしっかりとはめる。ボトムケース固定側はこの時フリー。

  • 新品のオイルシールの内側にシリコングリスを塗布する。これは、インナーチューブとの摺動面のフリクションロスを低減し、オイルシールの耐久性を向上させるためである。インナーチューブにセッ卜する際、リップ部分の損傷を防ぐ効果もあるので、必ずグリスアップすること。

    新品のオイルシールの内側にシリコングリスを塗布する。これは、インナーチューブとの摺動面のフリクションロスを低減し、オイルシールの耐久性を向上させるためである。インナーチューブにセッ卜する際、リップ部分の損傷を防ぐ効果もあるので、必ずグリスアップすること。

  • オイルシールを挿入する前に、純正部品が入っていたビニールをインナーチューブ先端に被せる。これは、インナーチューブの先端でオイルシールのリップを傷つけないようにするためだ。インナーチューブにサビが発生していた場合、その部分までカバーできる長めのものを用意しよう。

    オイルシールを挿入する前に、純正部品が入っていたビニールをインナーチューブ先端に被せる。これは、インナーチューブの先端でオイルシールのリップを傷つけないようにするためだ。インナーチューブにサビが発生していた場合、その部分までカバーできる長めのものを用意しよう。

  • ビニールの表面にフォークオイルを薄く塗っておくと、オイルシールの滑りが良くなる。オイルシールは上下の向きに注意して、片側ずつインナーチューブに押し付けるように、インナーチューブの上端にリップ部分を引っ掛けないように挿入すると、リップ部分を傷つけにくい。

    ビニールの表面にフォークオイルを薄く塗っておくと、オイルシールの滑りが良くなる。オイルシールは上下の向きに注意して、片側ずつインナーチューブに押し付けるように、インナーチューブの上端にリップ部分を引っ掛けないように挿入すると、リップ部分を傷つけにくい。

  • 先に挿入してあったシートパイプの先端にはオイルロックピースがはまる溝があるので、その溝に確実にセットする。今回オイルロックピースに損傷は無かったが、しっかりとセンター出しを行わずに組み付け、インナーチューブとの接触面が削れてしまっている車両も多い。

    先に挿入してあったシートパイプの先端にはオイルロックピースがはまる溝があるので、その溝に確実にセットする。今回オイルロックピースに損傷は無かったが、しっかりとセンター出しを行わずに組み付け、インナーチューブとの接触面が削れてしまっている車両も多い。

  • シートパイプの部品がばらけてしまわないように注意して、ボトムケースをインナーチューブに被せるように挿入する。インナーチューブがボトムケースに底付きするまで入ったら、ボトムケースボルトを締め付けるため、ボトムケースのキャリパーブラケット部をバイスに固定する。

    シートパイプの部品がばらけてしまわないように注意して、ボトムケースをインナーチューブに被せるように挿入する。インナーチューブがボトムケースに底付きするまで入ったら、ボトムケースボルトを締め付けるため、ボトムケースのキャリパーブラケット部をバイスに固定する。

  • ボトムケースボルトにはガスケットが付く。外したガスケットが無い場合はボトムケース側に残っていることもあるので確認してみよう。今回は新品に交換したが、再使用する場合は、ガスケットがつぶれて段がついているので、必ずオイルストーンで面出しを行ってから使用する。

    ボトムケースボルトにはガスケットが付く。外したガスケットが無い場合はボトムケース側に残っていることもあるので確認してみよう。今回は新品に交換したが、再使用する場合は、ガスケットがつぶれて段がついているので、必ずオイルストーンで面出しを行ってから使用する。

  • ボトムボルトは脱脂した後、中強度のネジロックを少量塗布する。この時ボルトを完全に脱脂しないと、ネジロックの効力が発揮されないので、注意したい。また、ネジロックを多量に使用したり、高強度のものを使用したりすると、今回のように、次回の分解時に苦労することになる。

    ボトムボルトは脱脂した後、中強度のネジロックを少量塗布する。この時ボルトを完全に脱脂しないと、ネジロックの効力が発揮されないので、注意したい。また、ネジロックを多量に使用したり、高強度のものを使用したりすると、今回のように、次回の分解時に苦労することになる。

  • ボトムボルトを締め付ける。ただしこの時点では、オイルロックピースのセンターが出ていないので、決して本締めしてはいけない。写真の様に、T型レンチのハンドルの中心を持って締め付ける程度の仮締めにとどめる。本締めは、オイルロックピースのセンターを出した後に行う。

    ボトムボルトを締め付ける。ただしこの時点では、オイルロックピースのセンターが出ていないので、決して本締めしてはいけない。写真の様に、T型レンチのハンドルの中心を持って締め付ける程度の仮締めにとどめる。本締めは、オイルロックピースのセンターを出した後に行う。

 

新品オイルシールの打ち込み時は慌てず丁寧に作業しよう。
  • ここで一旦フロントフォークをバイスから外し、インナーチューブを何度か底付させて、オイルロックピースのセンター出しを行う。センターを出さずに組み付けると、フロントフォークの作動に悪影響が出たり、オイルロックピースを破損したりする。これができていない車両が意外と多い。

    ここで一旦フロントフォークをバイスから外し、インナーチューブを何度か底付させて、オイルロックピースのセンター出しを行う。センターを出さずに組み付けると、フロントフォークの作動に悪影響が出たり、オイルロックピースを破損したりする。これができていない車両が意外と多い。

  • ボトムボルトを本締めしたら、オイルシールの打ち込み作業に入る。使用した専用工具は、倒立フォークにも使用可能な、スライディングハンマーが分割式のオイルシールドライバー。このタイプはまず、インナーチューブの径に合わせて3つの爪が均等な位置になるように調整する。

    ボトムボルトを本締めしたら、オイルシールの打ち込み作業に入る。使用した専用工具は、倒立フォークにも使用可能な、スライディングハンマーが分割式のオイルシールドライバー。このタイプはまず、インナーチューブの径に合わせて3つの爪が均等な位置になるように調整する。

  • オイルシールの打ち込みは斜めに打ち込まないように、常に水平を意識して行う。一度に打ち込もうとせずに、何回か打ち込んだら、工具を外して全周均等に打ち込まれているかを確認する。この際、オイルシール外周部分にフォークオイルを薄く塗っておくと、スムーズに挿入できる。

    オイルシールの打ち込みは斜めに打ち込まないように、常に水平を意識して行う。一度に打ち込もうとせずに、何回か打ち込んだら、工具を外して全周均等に打ち込まれているかを確認する。この際、オイルシール外周部分にフォークオイルを薄く塗っておくと、スムーズに挿入できる。

  • オイルシールが最後まで入ると、スライディングハンマーで叩く音が高くなる。写真の状態のように、スナップリングのはまる溝が全周均等に現れ、オイルシールの上面と「つら一」となったら打ち込みは完了だ。失敗すると新品のオイルシールを破損してしまうので、打ち込みすぎには注意。

    オイルシールが最後まで入ると、スライディングハンマーで叩く音が高くなる。写真の状態のように、スナップリングのはまる溝が全周均等に現れ、オイルシールの上面と「つら一」となったら打ち込みは完了だ。失敗すると新品のオイルシールを破損してしまうので、打ち込みすぎには注意。

  • スナップリングをピックアップツールなどで組み付ける。全周切り欠きに入ったことを確認したら、ダストシールを組み付ける。ダストシールは工具を使わなくても、手ではめることができるはずだ。組み付け前に、オイルシール同様シリコングリスやフォークオイルを塗っておこう。

    スナップリングをピックアップツールなどで組み付ける。全周切り欠きに入ったことを確認したら、ダストシールを組み付ける。ダストシールは工具を使わなくても、手ではめることができるはずだ。組み付け前に、オイルシール同様シリコングリスやフォークオイルを塗っておこう。

  • サービスマニュアルなどを参照し、規定のオイル量をメスシリンダーで軽量する。オイルをメスシリンダーに勢いよく注ぐと、泡だって正確な軽量ができなくなるので、ゆっくりと注ぐ。オイル量は完全分解時とオイル交換のみの場合で異なり、今回完全分解時指定の379mlを軽量した。

    サービスマニュアルなどを参照し、規定のオイル量をメスシリンダーで軽量する。オイルをメスシリンダーに勢いよく注ぐと、泡だって正確な軽量ができなくなるので、ゆっくりと注ぐ。オイル量は完全分解時とオイル交換のみの場合で異なり、今回完全分解時指定の379mlを軽量した。

  • 軽量したフォークオイルは一度に全量を注入すると溢れてしまうので、途中でフォークをストロークさせて何回かに分けて注入していく。また、後に油面計測を行う場合、オイルを勢いよく注ぐと泡だってしまい、泡が収まるまで計測作業ができなくなってしまうので注意しよう。

    軽量したフォークオイルは一度に全量を注入すると溢れてしまうので、途中でフォークをストロークさせて何回かに分けて注入していく。また、後に油面計測を行う場合、オイルを勢いよく注ぐと泡だってしまい、泡が収まるまで計測作業ができなくなってしまうので注意しよう。

  • 規定量の注入が終ったら、静かにゆっくりとフォークをストロークさせ、シートパイプ内にオイルを行き渡らせる。今回は完全分解だったので規定量を注入しただけだが、オイル交換のみの場合はここでインナーチューブをフルボトムさせた状態で油面の測定と調整を行う。

    規定量の注入が終ったら、静かにゆっくりとフォークをストロークさせ、シートパイプ内にオイルを行き渡らせる。今回は完全分解だったので規定量を注入しただけだが、オイル交換のみの場合はここでインナーチューブをフルボトムさせた状態で油面の測定と調整を行う。

  • 不等ピッチスプリングを採用している車種は、上下の向きに注意してスプリングをセットする。あとは構成部品の配列に注意して、カラーとワッシャーを組みつけていく。トップキャップを締める際にOリングがねじれて切れてしまわないよう、必ずグリスやフォークオイルを塗っておく。

    不等ピッチスプリングを採用している車種は、上下の向きに注意してスプリングをセットする。あとは構成部品の配列に注意して、カラーとワッシャーを組みつけていく。トップキャップを締める際にOリングがねじれて切れてしまわないよう、必ずグリスやフォークオイルを塗っておく。

  • スプリングの反力に注意しながら、トップキャップを取り付ける。その際、トップキャップをインナーチューブに押し付けるようにして、インナーチューブ側を回転させるとねじ山がかかりやすい。トップキャップはこの時点で仮締めにとどめ、車体に装着した後に本締めする。

    スプリングの反力に注意しながら、トップキャップを取り付ける。その際、トップキャップをインナーチューブに押し付けるようにして、インナーチューブ側を回転させるとねじ山がかかりやすい。トップキャップはこの時点で仮締めにとどめ、車体に装着した後に本締めする。

  • フロントフォークを車体に組み付ける際には、ブラケットに防錆潤滑剤を吹いておくとスムーズに挿入できる。その後、各部を仮締めした後、必ずアクスルシャフトがスムーズに通るかどうかを確認する。左右のフォークの長さが著しく違う場合は、組み付け不良の可能性がある。

    フロントフォークを車体に組み付ける際には、ブラケットに防錆潤滑剤を吹いておくとスムーズに挿入できる。その後、各部を仮締めした後、必ずアクスルシャフトがスムーズに通るかどうかを確認する。左右のフォークの長さが著しく違う場合は、組み付け不良の可能性がある。

  • トップブリッジのクランプボルトを締め付ける前に、仮締めだったトップキャップを忘れずに締め、フロントフォークの左右突き出し量を確認しておく。なお、フロントフォークのクランプを締めすぎると、インナーチューブが変形し作動性が悪くなるので、しっかりとトルク管理をしたい。

    トップブリッジのクランプボルトを締め付ける前に、仮締めだったトップキャップを忘れずに締め、フロントフォークの左右突き出し量を確認しておく。なお、フロントフォークのクランプを締めすぎると、インナーチューブが変形し作動性が悪くなるので、しっかりとトルク管理をしたい。

 

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