『ヨンフォア』のスムーズさとパワーを引き出すヨシムラの新作キャブレターの画像

『ヨンフォア』のスムーズさとパワーを引き出す新作キャブレター

  • 取材協力/ヨシムラジャパン  写真/柴田直行  取材・文/石橋知也  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
  • 掲載日/2018年1月11日

ホンダのCB400FOUR通称「ヨンフォア」は、国産ミドルクラスの名機として今なお絶大な人気を誇るカフェレーサーだ。そのヨンフォア用に新たに開発されたレーシングキャブが『ヨシムラMIKUNI TMR-MJN28』だ。本当にマフラーとコレだけで、ヨンフォアは素晴らしい変貌を遂げる。

低中速トルクを補いながらスムーズに吹け上がるMJN
ボアアップとハイカムにも余裕で対応できるφ28mmだ

ホンダのCB400FOURは、1974年にCB350FOURをボアアップ(ボアφ51mm×ストローク50mm)し、排気量408ccのエンジンで発売された。その後、1975年10月の免許制度改正に合わせて1976年3月から、408ccに加えて398cc(ストロークを48.8mmへダウン)が追加された。同時に398ccには408ccと同じコンチネンタルハンドルのCB400FOUR-Ⅰと、アップハンドルのCB400FOUR-Ⅱがラインナップした。

ヨシムラはヨンフォア登場直後から、ボアアップピストン、カム、強化バルブスプリング、マフラー(集合管手曲げ/機械曲げ、スリップオンマフラーメッキ/黒塗装)、クロスミッション、強化カムチェーンなどを発売し、ヨンフォアが1977年5月に生産中止になった後も、絶大な人気を誇るチューニングパーツだった。

そして近年、ヨンフォア用パーツとしてレース用手曲げ集合管(新設計)、カム(新製法削り出し)、ピストンなどがラインナップし、ついにTMR-MJNキャブを専用開発することになったのだ。ホンダのSOHC並列4気筒用としては、CBナナハン(CB750FOUR)用に次ぐ2作目で、同じくスモールボディを使用する。ボアはφ28mmだ。

スモールボディφ28mmを選んだ理由は、STDの408ccや398ccだけでなく、φ54.5mmボアップピストンを使用したときにも最高のパフォーマンスを発揮できる余裕を持たせたからだ。開発陣は「小さい方が混合気の吸入流速は上がるが、それだけでは吸入量が不足気味になるからφ28mmが最適で、ボアアップした際はφ28mmが必要となる」という。

当時のエンジンは、ヨンフォアに限らず吸排気ポート径が小さく、しかも長いため、キャブレターからバルブまでの吸気管長をできるだけ短くする必要があった。レスポンスは短い方が良くなるのは想像通りで、同時に吸気管長が長過ぎると、スロットル全閉時などにポート内にガス溜めができてしまい、これが原因で空燃比が狂い、開け始めでドンツキ現象を起こしやすくなる。

ヨシムラは、エンジン側のインシュレーターとキャブを繋ぐスピゴット(アルミ削り出し)を極力短くして対処している。ここを詰めておかないと、STDのエアクリーナーボックスと接続できなくなる(前後長が狭い)。さらにSTDのキャブピッチに収めるため、限界まで左右幅を狭めている(ピッチは68-67-68mm)。その結果、スロットルのプーリーやワイヤーは内側に収まらず、サイドリンク(右側)としている。このサイドリンクのプレートも、燃料タンクの干渉を避けるために専用品を製作している。

『ヨンフォア』のスムーズさとパワーを引き出すヨシムラの新作キャブレターの画像

実際はどれほどの効果なのか? 幸運にもTMR-MJN装着の408ccを試乗することができた。カムも排気量もSTDでヨシムラレーシング手曲ストレートサイクロン装着。まず、発進から力強い。そしてシフトアップして加速していくと「本当にこれがヨンフォアか?」と思うほどトルクが力強い。STDは回せば気持ち良いが、低中速は細い感じだ。まずそこが全然違う。そしてスムーズさが際立ち、さらに回転を上げてくと、本当にレッドゾーン付近まで何のストレスもなく上昇してしまう。気が付くと集合管の快音に酔いしれている。STDエアクリーナーボックス仕様なので吸気音は聞こえず、純粋にエキゾーストノートとエンジン本体の音だけが聞こえてくる(もちろんデュアルスタックやエアファンネルの方がレスポンスは上だろう)。減速時もスムーズなエンブレが印象的だった。

これらはCBナナハン用TMR-MJNでも感じたことで、吉村不二雄社長も「当時と何が一番違うかっていうと、キャブの性能差だよ」と語っていたのを思い出す。気密性や混合気の霧化は格段の差があるから、パワーもトルクも燃費も、断然良い。ヨンフォアの場合も、そんなにスロットルを開けなくてもバイクが進んで行く。

このキャブレターならST-1カム装着やボアアップなどのチューニングにも対応できるので、それこそ一生付き合えるヨンフォア必須の逸品だ。「おまえは風だ」のキャッチコピー通り、STDとは比較にならないほどスムーズに吹け上がり、そのパワフルさに酔いしれながら、風のように走る。最高の気分だ。

右側にサイドリンクを配置してSTDエアクリーナーボックス仕様も用意

『ヨンフォア』のスムーズさとパワーを引き出すヨシムラの新作キャブレターの画像

エンジン側のインシュレーター(黒いゴム)とキャブ本体の間にはアルミ製スピゴット(パイプ)があるのだが、それが見えないほど短く詰めてある。STDエアボックスもまるでSTDキャブのようにスマートに装着できる。

『ヨンフォア』のスムーズさとパワーを引き出すヨシムラの新作キャブレターの画像

強制開閉式スロットルは、右にサイドリンクで配置。ワイヤーやプーリーを収めるプレートはヨンフォア専用で製作。ワイヤーはアップハンドルのⅡ型用純正だとドンピシャ。スロットルホルダーはSTDでもO.K.で、スロットルパイプはヨシムラ製の方がSTDよりロースロで扱いやすい。

『ヨンフォア』のスムーズさとパワーを引き出すヨシムラの新作キャブレターの画像

キャブレター後端に装着する専用アダプター(STDエアボックス用。左がアルマイト処理済み、右は未処理品。アルミ鋳造・切削加工)。ボア内の孔はボア中央がメインエア用で、その横がパイロットエアジェット用。いずれもボア内に収まる。ゴミ詰まりなどを極力防止できる良心的な設計だ。キャブレターとの接続部は溝部分にOリングが入り、気密性を保つ。

『ヨンフォア』のスムーズさとパワーを引き出すヨシムラの新作キャブレターの画像

ヨンフォア用TMR-MJNは、サーキットなどでのパフォーマンスを求めるデュアルスタック、標準エアファンネルの2種に加えて、STDのエアクリーナーボックスに繋げられる3仕様を選択できる。左がヨシムラ独自のデュアルスタックで、右が通常タイプのエアファンネル。デュアルスタックは高回転向きのショートと、低中速向きのロング、双方の良さを兼ね備えた画期的なエアファンネルだ。

ヨシムラジャパン

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住所/神奈川県愛甲郡愛川町中津6748
電話/0570-00-1954
営業/9:00-17:00
定休/土曜、日曜、祝日

1954年に活動を開始したヨシムラは、日本を代表するレーシングコンストラクターであると同時に、マフラーやカムシャフトといったチューニングパーツを数多く手がけるアフターマーケットメーカー。ホンダやカワサキに力を注いだ時代を経て、1970年代後半からはスズキ車を主軸にレース活動を行うようになったものの、パーツ開発はメーカーを問わずに行われており、4ストミニからメガスポーツまで、幅広いモデルに対応する製品を販売している。

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