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K&Hのロー/ハイシートでMT-09の乗り味が激変!

  • 取材協力/K&H  撮影/富樫秀明  取材・文/中村友彦  構成/バイクブロス・マガジンズ
  • 掲載日/2018年3月13日

2014年から発売が始まったMT-09は、近年の日本製ミドルでは珍しく、走る場面と乗り手の技量を問うバイクである。その事実をどう捉えるかは人それぞれだが……。K&H製シートを装着すれば、MT-09は親しみやすいオールラウンダーに変貌する。そのうえ、操る楽しさという面でも、K&H製シートは見事なレベルアップを体感させてくれるのだ。

絶妙の座面設定で加減速時に身体が揺すられないから
心身の疲労が少なく前後輪の接地感は明確に感じられる

近年のミドルバイク市場で大人気を博しているMT-09。このバイクに対する僕の印象は、よくも悪くもやんちゃ&アグレッシブで、峠道やサーキットで最高に楽しい! と感じることがあれば、市街地走行やツーリングで予想外の疲労に戸惑うこともあった。誤解を恐れずに言うなら、MT-09はちょっと難しいバイクなのである。

僕がどんな部分でそう感じたかと言うと、一番は減速時の腕に力がかかりやすく、前輪のセルフステアが感じづらいことだが、かなり大きい前後サスペンションのピッチングや、スロットル操作に対する反応がシャープなエンジンなども、難しさの一因だろう。だから実は僕自身、MT-09を万人に薦めたいと思ったことはないのだが……。

K&H製シートを装着することが前提なら、話は別だ。何と言っても絶妙の座面が設定されたK&H製シートなら、加速と減速で身体が必要以上に揺すられないので、前輪のセルフステアと後輪のトラクションが常に明確に感じられるし、その結果としてブレーキングやアクセル操作がSTDより思い切って行えるのだから。

もちろん身体が必要以上に揺すられないことは、ツーリング時の疲労の軽減につながる。逆に言うなら、今回の試乗でK&H製シートをじっくり体感した僕は、MT-09の乗り味を難しいと思った一番の原因は、座面が前下がりで落ち着きが悪いシートだったのではないか? と感じたのである。

K&HのMT-09用シートにはハイとローの2種類が存在し、どちらを選ぶかは、基本的に乗り手の体格次第になるだろう。ただし身長が182cmで体重が73kgの僕は、抜群の快適性とMT-09ならではの軽快感が満喫できるハイに感心する一方で、ハイ/ノーマルとは一線を画する、ローならではの安心感や親しみやすさにも好感を抱いた。言ってみればK&Hが開発した2種類のシートは、安易に甲乙が付けられない魅力を備えているのだ。

ツーリングとスポーツライディングの両方が楽しめる

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荒れた路面で道幅がタイトなワインディングロードでは、前後ショックの硬さを感じることが多いMT-09だが、K&H製シートを装着すると、足まわり全体がしなやかになったかのような印象を受ける。今回の試乗ではシートの支配力、シートがハンドリングに及ぼす影響の強さを、改めて思い知った。

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座面がノーマル+15/20mmの830mmとなるK&Hのハイシートは、MT-09ならではの軽快さが存分に味わえるうえに(初心者が乗ったらちょっと軽快すぎる? と感じるかもしれない)、ヒザの曲がりが緩やかになるため、長距離を走っても下半身に疲労が溜まらない。ローと比較すると、座面の前後長は長めに設定されている。

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K&H製ローシートの最大の魅力は、ノーマルを上回る良好な足つき性だが、低い位置に安定して座れることで、ハイ/ノーマルとは一線を画する安定感が味わえる。乗車感はオーソドックスな日本製ネイキッドに近づいた印象で、MT-09のノーマルに備わっているスーパーモタード&ストリートファイター的な雰囲気はやや薄らぐ。撮影時は取り外していたが、ローシートもハイシートと同じく、タンデムベルトを標準装備。

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2種類のK&H製を経てノーマルシートを体験すると、加減速で身体が前後に激しく揺すられ、その挙動に抗うために、頭と身体が妙に緊張していることに気づく。メイン部の座面後部は適度な幅が確保されているものの、側面から見た際の前傾角が強いため、ここに着座し続けることは難しく、ふと気づくと尻がズルズル前方に……。

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今回の試乗の総走行距離は700kmで、山場は約500kmの伊豆半島一周ツーリング。過去にノーマルのMT-09で同等の距離を走った際は、途中から頭も身体もグッタリになった僕だが、2種類のK&H製シートを取り替えながら走った今回は、最後の最後までツーリングを満喫できた。写真は“なまこ壁”が有名な松崎町で撮影。

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夕暮れの富士山をバックにしたこの写真も、伊豆半島一周ツーリングで撮影。なおMT-09にツーリングでの快適性を求めるなら、そもそも基本設計を共有する兄弟車のトレーサーを選ぶべき……と言う人がいそうだけれど、K&H製シートを装着するMT-09に乗ったら、トレーサー推しのライダーでも認識を改めることになると思う。

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今回の原稿では“加減速時に身体が前後に揺すられない”と何度か書いたが、その主な原因はK&H製シートの座面形状。減速時はタンクに向かって徐々にせり上がる座面が、身体の前方への移動を抑えてくれるし(だから腕に力がかからない)、加速時は程よい硬さのスポンジ+レザーが、身体の後方へのズレを巧みに吸収してくれる。

K&H

K&H

K&H

住所/埼玉県朝霞市上内間木381-2
電話/048-456-3830
営業/10:00-19:00
定休/日曜、祝日、第1・3月曜

1976年に創業したK&Hは、もともとはFRPパーツの製作を得意とするカスタムショップで、これまでに独創的なカフェレーサーを数多く製作。1990年代からシートの製作に力を入れるようになり、以後は国内外の幅広いモデルに対応する製品を販売している。