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開発者に聞くブリヂストンの新スポーツツーリングタイヤ『T31』とは?

  • 取材協力/ブリヂストン  取材・撮影・文/森下光紹  構成/バイクブロス・マガジンズ
  • 掲載日/2018年3月19日

ハイグリップと高耐久性。ふたつの相反する性能を向上させ、なおかつウェット性能も向上させることが新しいタイヤに求められる条件だ。ブリヂストンのスポーツツーリングタイヤ『BATTLAX SPORT TOURING T31』は、スーパースポーツ用タイヤのような絶対性能よりも、全方位的なレベルアップが求められたという。その開発担当者に詳しく聞いてみた。

培われてきたノウハウに何をプラスして性能向上を図るか?
開発責任者である高橋淳一氏にその開発ストーリーを聞く

編集部「まず、BATTLAX SPORT TOURING T31の開発へ至った背景をお伺いしたいのですが」

高橋氏「バイク愛好家のボリュームゾーンとして、ツーリングを趣味とするライダーが増えているということですね。その大きな枠の中でも、スポーツツーリング好きな人々をターゲットにしています」

編集部「開発で最も苦労したポイントは?」

高橋氏「トレッドパターンのデザインです。とくにバイクの場合はクルマと違ってタイヤが丸見えなので、ルックスというファクターは大きいですね。そしてウェット性能を大きくアップすることが必要だったので、ルックスと機能の両立に最も苦労しました」

編集部「既存製品から向上した部分と、このタイヤ最大の特長はどこにありますか?」

高橋氏「フロントタイヤのシリカ分散を均一にして、とくにウェット時のコーナリンググリップを高めたことですね。やはりツーリングでフロントから破綻することはたいへん危険です。そしてそれと同時に、ブレーキ性能も大幅にアップしました。時速80キロからのABSフルブレーキでは、クルマ1台分くらいの距離だけ早く停止しますよ。低温でも柔らかく振る舞うシリカは、走り始めの低温時でも優れたグリップ力を発揮する点も特長です」

編集部「高い要求に応えるためには実車試験も重要ですね。開発時のテスト車両には何を選んだのでしょうか?」

高橋氏「装着が想定されるバイクの中で重量やパワーが標準的な車両を選んでいます。もちろん600~800ccの軽量モデルや重量車でもテストをしています。そして開発ライダーは、ドライやウェットで計20項目以上のポイントを細かく評価し、テストライダー以外の意見も数多く反映して開発しました」

編集部「開発にあたってのターゲットユーザー、実際にどんなユーザーに選んで欲しいと考えていますか?」

高橋氏「やはり週末のツーリングを楽しむスポーツツーリングライダーですね。旅の予定は変更出来ないことも多いですから、万が一ウェットコンディションとなっても、最終的にいい思い出となることが重要なポイントです。出発時に晴れていても、途中で雨が降るなんて普通のことだと思うので。そして気になるライフもスポーツツーリングユーザーには十分な性能だと思います」

乗り方や車種にもよるが、摩耗が進んでも性能低下は少ない、と高橋さんは胸を張る。いまやスポーツツーリングタイヤでも、10年前のハイエンドラジアルタイヤのグリップ力を上回るほどの性能を持つ。その上、低温時からグリップ力を保持し、耐久性も高い水準となったT31は、多くのライダーに歓迎されるタイヤと言えるのではないだろうか。

多くのツーリングライダーに選ばれるために!!

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画像出典元:株式会社ブリヂストン

リアタイヤのトレッドのセンター部分は耐久性重視。ショルダー部分はコーナリンググリップ力を高めるコンパウンドとする。そしてショルダー部分のトレッドゴム下層には、センター部と同じコンパウンドを配するというのが『3LC+Cap&Base』構造である(リアタイヤに採用)。フロントタイヤはシリカ分散を均一にし、ウェットグリップを高めるコンパウンドを採用した。

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「装着される想定車種の重量が150kgから300kgまでと幅広いことも悩みの一つだった」と語る高橋氏。ゆえに重量級には『GTスペック』という安定性をさらにアップさせたバージョンも用意している。

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全方位的なレベルアップが最重要項目だが、とくにウェット性能を大幅にアップさせたことで、優秀なツーリングスポーツタイヤが完成したと語る。ラジアルタイヤの大きなメリットを生かすためにも、適正空気圧の管理をユーザーに求めたい気持ちは、正しくタイヤの性能を堪能してもらいたいから。

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画像出典元:株式会社ブリヂストン

前モデルのT30EVOからの発展型となるT31の特長は、フロントタイヤのコンパウンドのシリカ分散を均一にすることや、トレッドパターンの変更で得られたウェット時のグリップ性能の向上だ。そして低温時から優れたグリップを確保し、短時間で温まりやすいという特性を得た。

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画像出典元:株式会社ブリヂストン

ワインディングロードを駆け抜けるスポーツライディングは当然のことながら、普段使いでの乗り心地や安定性、優れたハンドリング特性はT30EVOから継承し、多くのスポーツツーリング愛好家に選ばれるタイヤとなるに違いないだろう。

BATTLAX SPORT TOURING T31 ウェット性能比較動画/ブレーキ
BATTLAX SPORT TOURING T31 ウェット性能比較動画/旋回

ブリヂストン

ブリヂストン

電話/0120-39-2936(フリーダイアル)
時間/9:00-17:00(月~金 ※土・日・祝および指定休日は除く)

1931年に福岡県久留米市で設立された世界最大手のタイヤメーカー。社名でありブランド名でもあるブリヂストンの由来は、創業者の石橋正二郎氏の苗字を英単語にして反対から読んだ造語であるのは広く知られたところ。古くからモータースポーツの世界へ積極的に参戦し、MotoGPやF1といった世界最高峰の舞台で数々の実績を残している。