受け継ぎたい名車を、カスタムでさらなる高みへの画像

受け継ぎたい名車を、カスタムでさらなる高みへ

  • 取材協力/ビトーアールアンドディー  撮影/海保 研(フォトスペースRS)  取材・文/香西圭太  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
  • 掲載日/2017年3月22日

ビトーR&Dでは、代表の美藤さんがゆっくりと時間を掛けて、チューニングを施したコンプリートマシンを製作する。車種ごとのキャラクターを活かし、特長を引き出していく過程で開発されたパーツがラインナップに加わるのだ。仕上げられたコンプリートマシンは、いずれも立ち姿から美しい。

ノーマルが持っていたポテンシャルを
最新技術と経験でさらに引き出すコンプリートマシン

ビトーR&Dでは、一般的なパーツメーカーのように、新車が出るたびに採寸してラインナップを拡充することはしない。1台のベースモデルを選び、コンプリートマシンとしてカスタムを進めていく中でパーツを開発する、独特の手法をとっている。最新作のドゥカティ・スクランブラーICONのように新車ベースで作るだけでなく、絶版してから年数が経ったモデルがベースになることも珍しくない。

「車種によって変えるパーツは異なります。ドゥカティ・スクランブラーならシートとステップ、ハンドルでポジションを整え、マグ鍛とチタンマフラーで軽くして運動性を高めました」と美藤さん。

「どんなモデルでも、自分で乗っていると、手直ししたい部分が出てきます。“ここだけは我慢出来ない”と。それがコンプリートマシン開発のスタートですね」

車種選定の基準は美藤さんのセンスと好み。「格好良いと感じないと、乗りたくないでしょう?」と笑う。メーカーやエンジン型式は問わない。過去にはヤマハSRX600やドゥカティ・モンスターもコンプリート製作。カワサキW650はお気に入りの1台だ。ビジネスとしては無謀なほどに残存台数の少ない(ほんとうに少ない!)ホンダVF1000Rは、手を加えると俄然面白くなったという。ホンダVFR750R(RC30)も、新車当時は興味がなかったが、マグ鍛で前後17インチ化し、オリジナルの手曲げチタンマフラーとFCRキャブレターの装着で、一気に楽しめるようになった。このようなエピソードは尽きない。

バイクに乗って、考えて、触る。ビトーR&Dの思想はシンプルで、純粋だ。

名車をさらに名車らしく生まれ変わらせる
コンプリートマシン

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カワサキZ1。美藤さんの原点ともいえるモデルであり、未だにZ1を超える魅力を持ったモデルは他にないという。JB-POWERのアルミ鍛造ピストンやビッグバルブの他、クランクのピン溶接やミッションの抜け止め加工など、多数のパーツを投入した。補強したフレームやスイングアーム、マグ鍛JB2がしなやかにパワーを受け止める。

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カワサキZ1000R。カワサキ空冷2バルブの集大成として美藤さんの評価は高い。コスワース製ピストンをはじめ手を加え、マフラーはチタン手曲げのメガホンサイレンサー仕様。ステップやスイングアーム、オイルクーラーまでエンジンに合わせたブラックアルマイト。市販車の中では例外的に優れているという純正シートは表皮を張替え。

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カワサキ・ゼファー1100(右)とゼファー750(左)。重量級の1100は大幅な軽量化と、前後18インチホイール(標準はリアが17)とサスペンションの変更で重心を上げ、軽快感を高めた。コンパクトで運動性能に優れた750は、純正でコストを掛けられなかったポジションや足周りを全面的に見直すことで、存分にスポーツランが楽しめる。

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スズキGSX1100Sカタナ。先鋭的なデザインや低いハンドルという基本スタイルはそのまま、前後18インチ(標準はフロント19、リア17)のマグ鍛JB4とオリジナルのアルミ削り出しフォークブリッジ、そしてスイングアームの装着で曲がりやすい性格になった。JB-POWERラジアルマウント6ポットキャリパーとφ320mm鋳鉄ディスクでブレーキも大きく改善。

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ホンダCBX1000とカワサキZ1300。70年代末の技術の頂点ともいえる並列6気筒の旗艦だ。ビトーR&Dでは、それぞれに専用の6連FCRキャブレターキットを開発し、Z1300ではシャフトドライブに合わせたマグ鍛JB4も製作した。エンジンパーツもCBXではコンロッド込みのピストンキット、Z1300ではビッグバルブを開発したほど。

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ドゥカティ・スクランブラーICON。コンプリートマシンは日本製だけではない。マグ鍛JB4や手曲げチタンの2-1-2マフラーによって大幅な軽量化を計る。シートとハンドル、ステップを変更して自然なスポーツランが楽しめる。ハンドルバーはZ1などと同じJB-POWERのパイプハンドル。車種は変わっても、自然なハンドル形状は同じなのだ。

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Z1やZ1000J/Rに関しては、オーバーホールと同時にチューニングを施したコンプリートエンジンも販売する。性能の要となるクランクは、十年ほど前にデッドストックの新品を数十本もストックしていたが、現在はベアリングを特注することでZ系のクランクの組み立て直しが可能になった。ショップからのコンプリートエンジンの発注も多いという。

ビトーアールアンドディー

ビトーアールアンドディー

住所/兵庫県豊岡市奥野149-1
電話/0796-27-0429
定休/土・日ほか不定
営業/10:00-19:00

代表の美藤定さんがAMAスーパーバイクやGP500のレースメカニックを経て1983年創業。世界最高品質をキーワードに『JB-POWERマグ鍛』や削り出しパーツ、サスペンションなど、こだわり抜いたアイテムを送り出している。