ビトーR&Dは“マグ鍛”ホイールをはじめ、代表の美藤定さんの情熱を、最先端の技術とレースメカニック時代から蓄積した経験で形にしてきた。取り扱うパーツはいずれも数字上のスペックだけでなく、カワサキZ1や上写真のレストアした1976年式の911タルガに通じる、上質な機能美を感じさせる。

バイクと過ごす上質な時間のために
ビトーR&Dのパーツ群は生まれる

エンジンパーツから車体、そしてホイールやブレーキパーツまで自社で開発し、生産するビトーR&D。整然としたファクトリー（上写真）では、社名のR&D（Research and Development=研究開発）の名の通り、テストを含めたパーツ開発から生産までの多くが自社内で行なわれている。

ビトーR&Dでは、ノーマルの性能を引き出すことから開発が始まる。ホイールやマフラー、ブレーキパーツは、市販パーツに満足できるものがないから自社開発し、マグ鍛やオールチタンの手曲げマフラーを生み出してきた。一方、コスワース製ピストンやケーヒンCR/FCRは、満足できる最高品質だから自社で取り扱う。パーツのラインナップも車種により違う。スイングアーム交換が必要なら製造するし、ノーマルでも満足できるならあえて作りはしない。理由は明確だ。

ライディングポジションを決めるパーツにもビトーR&Dの考えが現れている。ステップは各車種に合わせた1ポジション。ライダーの体格には関係なく、ベストな乗車位置に足を置く。ラインナップするパイプハンドルもバー形状は1種類、公道メインのライディングに、もっとも向いた形状としている。性能と品質を追求した結果、すべてはシンプルになっていくのだ。

「必要なものを作る」それがビトーR&Dのフィロソフィ

美藤さん自身がもっとも高く評価しているバイクがカワサキZ1。車体とエンジンのバランス、余裕のある設計。そして美しくて、くつろげるデザイン。「見ても、乗ってもZ1には攻撃的な感じがありません。それがここまで生きながらえ、愛される理由だと思います」と美藤さん。パーツラインナップは現在も進化し続けている。

英国のコスワース製鍛造ピストンの輸入元でもあるビトーR&D。レースの最先端で使われてきた名門だ。またケーヒンCR/FCRキャブレターの代理店として長い経験を持ち、メーカー出荷仕様ではなく各車種ごとに基本セッティングを施した“ビトー製”キャブレターは国内外のユーザー、そしてショップから極めて高い評価を得ている。

美藤さんがレースメカニック時代にも手がけてきたCB-Fシリーズ。そのフラッグシップ、CB1100RはCB750/900Fよりもエンジン、基本の車体設計でも進化している点が気に入り、コンプリートマシンを製作。ビトーR&Dではベースとなる車両に普遍的な魅力があることがカスタム開発の第一歩となる。

クラシカルなデザインのマグ鍛JB1とJB-POWER KYBφ41フォークなど、自社製パーツの組み合わせでCB1100Rのハンドリングを美藤さんの考えるベストに昇華させる。ラジアルマウントの6ポットキャリパーとφ320mmのローターも、ビトーR&Dが独自に開発したもの。制動力に加えてフィーリングやバネ下の軽量化も重視。

①パイプ一本ずつ手曲げするチタンマフラー。写真は空冷並列6気筒のCBX1000用。②「ノーマル、市販品ともに満足できるものがない」とシート表皮も製作。③アルミ削り出しのステップキット。ステップバーはラバー仕様。④カワサキZ系では、手に入らない新品クランクに代わり、ベアリングを新造してフルオーバーホールを可能にした。

①NBAの伝説、マイケル・ジョーダンがオーナーのAMAでのレースチームをはじめ、海外レースでもマグ鍛の評価はきわめて高い。②美藤さんの転機が20代の北米生活。Z2を運んでの旅の途中、当時北米に拠点を移していたヨシムラでメカニックとなる。右写真はウエス・クーリーと。③ヨシムラの後はアメリカンホンダのレースメカニックに。中央はマイク・ヘイルウッド、右はフレディ・スペンサーの担当メカニック時代。

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