総合パーツメーカー“OVER”の実力に迫る
    取材協力/オーヴァーレーシング  取材・撮影・文/淺倉恵介 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
    掲載日:2011年8月31日

アフターマフラーの概念を打ち破るニューモデル

昨年、発表され大きな話題を呼んだカワサキのニューカマー Ninja1000。カスタムフリークの熱い視線を浴びている1台だが、その Ninja1000 用のマフラーが、OVER から新たに登場する。OVER では、Ninja1000 用としてはスリップオンマフラー 『 GP-PERFORMANCE RS フルチタン S/O 』 (17万8500円)を既にリリース済み。そして、このたびフルエキゾーストマフラーが完成。近々ラインナップに追加される予定となっている。

 

サイレンサーは Ninja1000 のフォルムにピッタリな、ショートメガフォン形状の RS サイレンサーを4連装。テールパイプはパイプに角度をつけて輪切りにし、再溶接することで曲がりを生み出すウェルドクラフト製法を採用する。

 

ウェルドクラフト製法は曲げ角度の自由度が高く、理想のパイプレイアウトを実現できるメリットがあるが、手作業に頼る部分が多く大量生産には向かない。一般的には、試作品など少量生産のパーツに用いられる手法であり、アフターマーケットの市販マフラーに採用されるのは異例と言っていい。

近日発売予定のフルエキゾーストモデル。ノーマルマフラーにはエンジン下にチャンバーが設けられているが、OVERのフルエキではチャンバーを撤去。大幅な軽量化を果たした上で、全域で性能を向上。もちろん車検対応品だ。写真のマフラーは試作品のため、市販品とはエンドバッフルの形状などが異なる。

近日発売予定のフルエキゾーストモデル。ノーマルマフラーにはエンジン下にチャンバーが設けられているが、OVERのフルエキではチャンバーを撤去。大幅な軽量化を果たした上で、全域で性能を向上。もちろん車検対応品だ。写真のマフラーは試作品のため、市販品とはエンドバッフルの形状などが異なる。

贅を尽くした造形、全ては機能のために

今回お話しを伺った、OVER の高橋篤史氏。企画から開発まで、パーツ開発のほぼ全てに関わり、広報も担当する。ミニモトやクラシックバイクでのレース経験も豊富な、“走って、作れるエンジニア”。

今回お話しを伺った、OVER の高橋篤史氏。企画から開発まで、パーツ開発のほぼ全てに関わり、広報も担当する。ミニモトやクラシックバイクでのレース経験も豊富な、“走って、作れるエンジニア”。

容積の小さなサイレンサーは消音性能の面で不利、騒音規制が強化された現在では難しい部分も多い。また、ウェルドクラフト製法は生産コストが優れているとは言えない。ではなぜ、このマフラーでは採用されているのか? そのあたりを、OVER で企画・開発に携わる高橋氏に聞いてみた。

 

「Ninja1000 のノーマルマフラーは、車体の下側に小さくまとめられています。重量物であるマフラーが車体の中心に近い位置に置かれていますので、マスの集中化という意味から運動性の向上に貢献しています。マフラーを作るにあたり、そのバランスを崩したくなかった。そのための RS サイレンサーですし、パイプを限られたスペースに収めるには曲げの自由度が高いウェルドクラフト製法が必要でした。輪切りのエキパイと4連サイレンサーは見た目のインパクトが強いので、ルックス面で好都合な部分もありました。マフラーはカッコ良くないといけませんからね。」

 

今までにない斬新なフォルムは、性能を追求して辿り着いた必然の形だった。機能優先の設計コンセプトが、結果的にユニークなスタイリングを生み出したというのが何とも面白い。そして注目すべきは、コストを度外視した性能・品質至上主義の設計思想。妥協を許さないモノ作りへのこだわりが生み出した OVER 製パーツのクオリティは、まさに 『 Over Quality = 過剰品質 』 だ。

サイレンサーボディにテーパー形状を持たせた、OVER独自デザインのRSサイレンサーを採用。シャープでマッシブな Ninja1000 のフォルムに、見事なマッチングを見せる。テールパイプ後端部はウェルドクラフト製法を採用。輪切りによる独特の質感がたまらない。エンジン下部のパイプは複雑な取り回しをみせる。限られたスペースの中で求める性能を満たすために生まれた、必然の形である。

大型の乗用車ほどもあろうかという巨大な工作機械は、エキゾーストパイプ部分の曲げ加工に使用するパイプベンダー。OVER の工場内では、このような特殊な工作機械が数多く稼働している。理想の製品、高い品質を実現するためには設備投資は厭わない。モノ造りに対して真摯に取り組む、そんな企業としての姿勢が垣間見える。

マフラーの製造工程には、手作業が必要となる部分が多々ある。これは、サイレンサーのエンドピースを溶接で作っているところだが、なんの淀みもなくスムーズに作業が進んでいく。高性能な工作機械と熟練した職人の技術、そのどちらが欠けても良いマフラーを生み出すことはできない。もちろん、OVER にはその両方が揃っているのだ。

OVERのマフラーは、スポーツバイク用だけでなく様々な車種用がラインナップされている。新製品のPCX用 『GP-PERFORMANCE Type-s チタン』(5万7750円)は、ステンレスエキパイに楕円チタンサイレンサーを組み合わせた本格派。小型スクーター用にも手を抜かない作り込みはさすが。安心の政府認証品マフラーなのも嬉しい。

他にない幅広い商品展開、それは技術力の証明

OVER の特徴のひとつに、その幅広い商品ラインナップがある。メーカーを問わずに多くの車種のパーツを用意している。「自分のバイクはカスタムパーツが少ないから…」と、カスタマイズを諦めているオーナーも、一度 OVER のホームページを訪れてみて欲しい。あなたのバイク用に開発されたパーツが見つかるかもしれない。

 

また、一車種ごとのパーツ点数がとても多いところもポイント。しかも、その幅が広い。マフラーはもちろんだが、ステップ、ハンドル、外装パーツ、ホイール等々…。果てはオリジナルフレームまでラインナップされているのだから驚く他ない。1台のバイクのカスタムが、OVER製のパーツだけで組み上げることが可能なレベルだ。

 

商社であれば、これだけの商品ラインナップは珍しくないが、OVER はメーカー。取り扱っているのは全て自社製品。それも OEM などではなく、自社内で生産しているものばかりである。

OVER はミニモト用パーツにも本気だ。マフラーやホイールだけでなく、オリジナルフレームまでラインナップされている。この車両はオリジナルフレーム『OV-36フレームキット』(37万8000円) を使用して製作されたもの。構成部品のほとんどがアルミ削り出しで製作され、ウィッシュボーン式ガーターフロントフォークを搭載した、独創性に溢れたシャシーだ。このフレームがワンオフのスペシャルでなく、通常ラインナップされているというのだから凄まじい。

OVER はミニモト用パーツにも本気だ。マフラーやホイールだけでなく、オリジナルフレームまでラインナップされている。この車両はオリジナルフレーム『OV-36フレームキット』(37万8000円) を使用して製作されたもの。構成部品のほとんどがアルミ削り出しで製作され、ウィッシュボーン式ガーターフロントフォークを搭載した、独創性に溢れたシャシーだ。このフレームがワンオフのスペシャルでなく、通常ラインナップされているというのだから凄まじい。

 

これほど幅広い商品展開をしているパーツメーカーは他にないと言っても過言ではないだろう。多方面に渡って高性能なパーツ開発が可能なのは、スタッフの技術、知識、経験が優れていることに他ならない。スタッフひとりひとりがスペシャリストである技術者集団、それが OVER なのだ。

ミニモト用の『GP-TEN』、『 GP-SIX 』 とクルーザー用 『 RHYTHM 』 シリーズのみの展開だったアルミ鍛造ホイールに、待望の TMAX 用がラインナップ決定。軽量ホイールが、TMAXの走行性能を更に高い次元に引き上げる。美しい仕上げにも注目だ。

ビレットパーツもOVERの得意分野。中でもバックステップは、剛性感のある踏み心地と、軽快で確実な操作感に定評がある。新製品の 『Ninja1000用4ポジションバックステップキット』 はブラック(5万7750円)とシルバー(5万5650円)の2タイプを用意。

OVER の人気パーツのひとつである 『 レーシングスライダー 』 は、幅広い車種用を網羅する。写真は新製品の Ninja1000用 (2万6250円)。車種別専用設計で、フィッティングは確実。万が一のアクシデント時に、車体へのダメージを最小限に留めてくれる。

OVER の技術力とデザインセンスは、バイクカスタムの世界だけに留まらない。大注目アイテムとしてここでご紹介するのは、人気のスマートフォン iPhone4 用のアルミ削り出しケースだ。素材には航空機にも使用されるアルミ合金 『 A2017 』 材を使用。バイクパーツ製作で培われた削り出しの技術を存分に発揮させた、精緻極まりない仕上がりは見事の一言。
左の 『 division4 』(9975円)は4ピース構成、右の 『 division2 』 (9345円)は2ピース構成とされる。両モデルともパーツ1ピース単位でカラーオーダーが可能となっている。

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