バイクとは体を生身のまま剥き出しで、たとえば公道であれば最高時速100kmものスピードで走るもの。もちろんことさらに「バイクは危険な乗り物だ」などと叫ぶつもりはないが、現実として危険度が高いものだということは否定できない。だからこそ、ライダーたちは自分の身を守るためにヘルメットを装着するのだが、じつは警視庁が公表している『死亡事故における損傷部位』を見てみると、頭部への損傷が全体の約半分。残りの半分は、胸や腹部などへの損傷によって占められている。にも関わらず『都内におけるプロテクター装着率』を見てみると、装着率はたったの1割未満。9割近くがプロテクターを装着していないのである。
対してプロテクターを愛用するライダーを見ると、最近では脊髄や肘だけでなく、胸部にも装着する人が増え、その意識は確実に高まっている。だが、じつはこちらにも盲点がある。それが頸部(首)へのダメージである。いうまでもなく首は重要な神経が集まる部位であり、ここへのダメージはライダーに深刻な結果をもたらす。だからこそ、ヘルメットやチェストプロテクターのように、本来は首もしっかりと守らなければならないのだ。
そこでいま、熱い注目を集めているのが、株式会社 東単が取り扱う首用プロテクターともいうべきアイテム『OMEGA(オメガ)S1ネックブレース』である。
※警視庁調べ
東単といえば、国内最大級のオートバイ用品の卸問屋であり、最近ではオリジナルヘルメット『OWL(アウル)』を展開するなど、幅広い活動によってライダーのバイクライフを支える企業。同社の一貫した理念は“ライダーの安全を何よりも優先する”というもので、たとえばヘルメットに関してはアライヘルメットに絶大な信頼を置き、同社のOEMモデルは高い人気を誇る。OWLも安全性を十分に考慮した商品ということで、その評価は高い。
そんな東単でオリジナルアイテムやパーツの開発責任者を務めるのが杉田 修児さん。プライベートではモトクロスやエンデューロなどのオフロードを趣味とし、4年前のある日もコースで練習していたという。
「実際に弊社でOMEGAを取り扱いはじめたのが3年ほど前(2012年)で、このときはテストも兼ねてOMEGAを使っていました。けっこうハードな練習をしていたこともあって、前転しちゃったんですね。まぁ、僕は憶えていないんですけど、見ていた人から聞いた話では『前転して、そのまま頭から落ちた』と。周りがすぐにヘルメットを脱がせてくれたんですが、まったく動かず、泡を吹いていたそうです。そんな状態なので、すぐに救急搬送……気がついたらCTのなかでした」
ともすれば後遺症が残るようなケガをしていてもおかしくない状況だった、と杉田さんは当時を振り返る。しかし結果として、ケガは肋骨が3本折れたのみ。意識が戻った当初は吐き気やめまいもあったが、CTでもMRIでも異常はなかったという。そして何よりも杉田さんが驚いたのが“むち打ちが一切出なかった”ということ。翌日には何ごともなかったかのように出社したそうだ。
「肋骨は折りましたけど、あの状況でむち打ちにならなかったのはネックブレースのおかげだと改めて思い知りました。アライヘルメットはやっぱり安全性が高いということを確認できたとともに、ネックブレースの効果も素晴らしいということがわかったのです」
当時、すでにネックブレースはオフロードでの認知度が高く、レースによっては装備がレギュレーションによって定められているものがあるほど。だが公道を走る一般のライダーにとっては、その認知度は皆無といっても良い状況だった。しかし、だからこそ「ネックブレースは公道でこそ必要。オンロード用のOMEGAを東単はアピールしていきたい」と、杉田さんは強く思ったという。
前述のとおり、オフロードレースではネックブレース自体の認知度はすでに高まっていたのだが、そのほとんどはウレタン素材で首をグルッと囲む“ドーナッツ”と呼ばれるもの。動かないように固定することで首を守るので、後方確認などが難しい。レースでは良くても、これでは一般公道を走るには大きな支障になる。対してOMEGAは、ドーナッツとはまったく異なる構造を持ち、基本的に首は自由に動かせる。これなら公道でも支障なく使うことができるし、杉田さんたちがOMEGAを一般のライダーたちに広めたいと思った最大のポイントでもある。
しかしここで疑問が湧く。“首が自由に動くのに、本当に守られるのか?”と。杉田さんが答えてくれた。
「人間の首というのは、自分で動かせる範囲であれば一切ケガをしないんです。ただ、その範疇をちょっとでも越えると、小さいものだと“寝違え”だったり、酷い場合は“むち打ち”になる。そういう“首の限界”を越えないように補助してくれるのが、OMEGAなのです」
杉田さんとともに商品の国内販売を担当するのが、管理部の尾上 崇さんだ。尾上さんが続ける。
「私も自分のバイクでテストを重ねましたが、一般的な速度で走る分にはまったく違和感はありません。だけど、サーキットでの走行会など、法定速度を大幅に越えるような速度を出すと、走行風によって浮いてくるという場合があります。それはデメリットになるのかもしれないですけど、時速100km前後であれば問題なし。あと、浮いてくるというのも乗り方や体型、車種など、個人差がありますね」
OMEGAは、イタリアにあるアベスポーツという会社が開発・販売を行っている。3年前に国内販売に向けたプロジェクトがスタートしてから1年間ほど、尾上さんと杉田さんでテストを重ねた結果、日本での販売がスタートしたOMEGA。実用面での一番の利点は“前側が開いている”ということ。これによって、他メーカーの製品と比べても装着がしやすく、脱着を面倒に感じることもない。しかも、走行風がきちんと入ってくるので快適だ。どんなジャケットにも装着できるのも利点のひとつで、お気に入りのジャケットがそのまま着られるのはうれしいポイントだといえよう。
まだまだプロテクター装着率が低いとはいえ、それでも近年ではチェストプロテクターに対する注目も高まり、ライダーの安全意識は確実に高まっているといえる。実際に、2015年3月の東京モーターサイクルショーでも、OMEGAへの興味の高さは十分に実感できたとのことだ。今後は他のイベントにも積極的に出展し、その認知を広めていくという。
オンロード、それも公道用となれば、一般的にはまだ聞き慣れない“ネックブレース”というプロテクター。しかし、尾上さんは強くいう。
「モトクロスコースやサーキットより、むしろ公道のほうが危ない。自分が気をつけていても追突されることがあります。そのとき、体のどこに衝撃が一番くるのかというと、首なんです。本当に何が起こるかわからない公道だからこそ『OMEGA S1ネックブレース』を広めていきたい」
そして、杉田さんが続ける。「弊社は一貫して、ライダーの安全に対する追求と二輪業界の活性化に貢献していきたいと考えてきました。OMEGAもまた、東単の創業以来60年間も変わらない理念のひとつの形なのです」
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株式会社 東単
営業部 杉田 修児さん
杉田さんが実際に被っていたヘルメット。外側のキズもさることながら、帽体の左こめかみ部分が歪んでいる。OMEGAを装着していたため、これだけの衝撃でも首にダメージはなかった。
オフロード用として注目されているのが『OMEGA X1ネックブレース』。写真のように、同じくアベスポーツからリリースされるプロテクター『ZERO7』と組み合わせて装着することも可能だ。
株式会社 東単
管理部 尾上 崇さん
OMEGAの最大の特徴は、首が自由に動き、後方確認なども普段通りにできること。公道用として使用するのに、なんの不自由も感じない。
実際の事故でよくあるのが、転倒後にライダーが滑走して壁にぶつかってしまうケース。OMEGAを装着していない場合は、首が許容範囲を超える曲がり方をするのだが、装着していれば首が大きく曲がるのを防いでくれる。
ライダーは転倒時、反射的に受け身を取るが、パッセンジャーは気づかないうちに転倒に巻き込まれ、ライダーよりケガの度合いが大きいことが多い。それゆえにOMEGAはパッセンジャーにこそ使ってほしい。また、子どもにはヘルメットの重みを支えるという点でも有用である。
万が一の際、大きな後遺症が残る可能性もあるのが、首だ。『OMEGA S1ネックブレース』は、そんな重要な部位をしっかりと守ってくれる。しかし、けっして固定するのではなく、基本的に首は自由に動く。後方確認も不自由なく行えるので、公道用として最適だ。装着方法も、お気に入りのジャケットの上に載せるだけ。落ちないようにベルトで固定するが、窮屈感はなく、重量も分散されて気にはならない。新たなプロテクターとして、ぜひチェックしてほしい。
東単のオリジナルヘルメット『OWL』の開発ストーリー
今年創業60年目を迎えるのが、国内最大規模を誇るオートバイ用品・部品の卸問屋・東単。その歴史や変わらぬポリシー、そして好評のオリジナルヘルメット“OWL”(アウル)の新作ジェットヘルメットについて、営業部部長 杉田修児さんに伺った。
OWLのハイブリッド軽涼ヘルメット『KEIRYO』デビュー
東単から、オリジナルヘルメット「OWL ハイブリッド軽涼ヘルメット“KEIRYO”」がリリースされる。OWLで初となるフルフェイスヘルメットの登場は、多くのライダーに注目されることは間違いない。そこで、その特徴と魅力を、担当者に聞いた。