コンストラクター・野島英俊氏が率いるノジマエンジニアリング。パーツメーカーとしても名を馳せているが、メインとなっているのがエキゾーストシステムだ。以前に取り上げた DLCシリーズもそのひとつであり、いずれもが高い評価を得ている。
ノジマ製マフラーの“原点”ともいえるブランドが「FASARM(ファサーム)」シリーズだ。その「プロチタン」は、構成材のほとんどをチタンとしたトップレンジを担う位置づけであり、同社製品の代表的な存在でもある。なお「FASARM」は「力強い」や「逞しい」といった意味が込められた、野島氏による造語である。
前述のとおり、ファサームシリーズでのトップレンジモデルが「プロチタン」だ。一部車種を除きそのエキパイに用いられているのは、コニカルヘッダーである。これは排気が入ってくるシリンダーヘッド側を細く、集合部側を太くした物であり、径の変化する部分に継ぎ目の無いスウェージングパイプとされているのが特色のひとつとなっている。そのため曲げ加工ではベンダーが使えず、1本1本バーナーで炙って行われる手曲げのみとなる。コニカルヘッダーを使用しないストレートパイプのエキパイとの違いは、シャーシダイナモのグラフ上には表われ難いのだが、実際に乗ったときのフィーリングには確かに違いがあり、特にアクセルの“ツキ”が良好となる。またルックス向上の点でも、製造工程で生じる鮮やかなチタン独特の焼け色も魅力的なポイントとなっている。
ノジマエンジニアリングを率いるコンストラクター・野島英俊氏。メカニックとして世界GPで腕を奮い、培われた豊富な経験と知識をバックボーンに製品の開発にあたっている。
エキパイを通った排気が送られるのが集合部だ。ここにはノジマエンジニアリングが特許を持つ「スパイラルコレクター」が採用されている。その名のとおり螺旋形状とした物であり、4-1の集合形式の特色であるピークパワーの向上と低回転域でのトルクの厚みを実現させている。野島氏は永年構想として持っていたのだが、鋳造技術の進歩によって量産が可能となり製品化が実現したのだ。また、良好なパワー特性に加えて“集合管らしい”サウンドが得られるのも、4-1の集合形式であるスパイラルコレクターによる恩恵と言えるだろう。
プロチタンの魅力の1つが、圧倒的な軽量化にある。例えば、カワサキZRX1200用であればノーマルの重量が12.6kgに対して、わずか4.9kgとなる。この軽量化に貢献しているのが、チタン材をふんだんに使っていることにある。素材自体に強度があるために薄くすることが可能であり、また耐腐食性にも優れているのだ。プロチタンのサイレンサーでは、シェルはもちろんのこと、前方の差し込み部、排気口のあるテールピース部、さらには内部に使われているパンチングパイプまでもがチタンとなっているのだ。昔から“軽量化に勝るチューニング無し”と言われるように、相対的なパワーアップにもなりハンドリングも向上、また取り回しが楽になるなどの日常の使い勝手の点でも効果は高く、得られるメリットは多岐に渡る。
フラッグシップモデル「ファサーム プロチタン」の思想を受け継ぎつつ、ユーザーが手の届きやすいようにと設定されたハイコストパフォーマンスモデルが「ファサーム Sチタン」だ。エキパイの材質は同じくチタンだが、ストレートパイプとする事で焼き色の無い機械曲げとしたほか、サイレンサーの一部パーツにステンレス材を用いている。それでもZRX1200用であれば、重量は5.8kgとノーマルの約半分ほどであり、軽量化のメリットは大きい。そして、改めて言うまでも無く、プロチタン、Sチタン共に排ガスや音量などの各種規制値をクリアしたJMCA認定の車検対応マフラーなのである。
ファサーム・プロチタンが装着された車両を見てみよう。排気系が露わになるネイキッド系でのマッチングの良さは特筆すべき点。大幅なスタイルアップになり、カスタムした満足感と共にバイクへの愛着を大いに増すことだろう。大幅な軽量化による取り回しの際の負担の軽減もメリットだ。そして走らせれば、その違いは歴然であり、奏でるサウンドも気持ちに拍車を掛けるに違いない。つまり、見て、乗って、聴いてと、さまざまなシーンにおいて味わい楽しめるマフラーなのである。
住所/三重県鈴鹿市住吉町7265-7
電話/059-378-3505
FAX/059-370-7811
営業時間/9:00~18:00
定休日/隔週土・日・祝日
代表の野島英俊氏はWGPの世界でメカニックとしてレーシングマシンを支え、鈴鹿8耐やサンデーレースではコンストラクターとしての腕を奮った。レースフィールドで培われた技術やノウハウは、主力商品であるマフラーにも活かされている。パワートレインのみならず、シャーシーチューンにも長けており、リアをモノサス化したNJシリーズも展開。