マフラーに求められる要素を満たしたノジマエンジニアリング・ファサームシリーズ
取材協力/株式会社ノジマエンジニアリング  取材・文・写真/木村圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年2月25日
ノジマエンジニアリングが手掛けるマフラーのブランドのひとつがファサームシリーズだ。そのネーミングには強さや逞しさといった意味が込められており、スタイリングやパワー特性、サウンド、軽量化などカスタムパーツとして求められる要素を高次元で満たしている。

INTERVIEW

手曲げの最高峰「プロチタン」と
その思想を受け継いだ機械曲げの「Sチタン」

コンストラクター・野島英俊氏が率いるノジマエンジニアリング。パーツメーカーとしても名を馳せているが、メインとなっているのがエキゾーストシステムだ。以前に取り上げた DLCシリーズもそのひとつであり、いずれもが高い評価を得ている。

 

ノジマ製マフラーの“原点”ともいえるブランドが「FASARM(ファサーム)」シリーズだ。その「プロチタン」は、構成材のほとんどをチタンとしたトップレンジを担う位置づけであり、同社製品の代表的な存在でもある。なお「FASARM」は「力強い」や「逞しい」といった意味が込められた、野島氏による造語である。

 

前述のとおり、ファサームシリーズでのトップレンジモデルが「プロチタン」だ。一部車種を除きそのエキパイに用いられているのは、コニカルヘッダーである。これは排気が入ってくるシリンダーヘッド側を細く、集合部側を太くした物であり、径の変化する部分に継ぎ目の無いスウェージングパイプとされているのが特色のひとつとなっている。そのため曲げ加工ではベンダーが使えず、1本1本バーナーで炙って行われる手曲げのみとなる。コニカルヘッダーを使用しないストレートパイプのエキパイとの違いは、シャーシダイナモのグラフ上には表われ難いのだが、実際に乗ったときのフィーリングには確かに違いがあり、特にアクセルの“ツキ”が良好となる。またルックス向上の点でも、製造工程で生じる鮮やかなチタン独特の焼け色も魅力的なポイントとなっている。

 

ノジマエンジニアリングを率いるコンストラクター・野島英俊氏。メカニックとして世界GPで腕を奮い、培われた豊富な経験と知識をバックボーンに製品の開発にあたっている。

径が変化しているプロチタンのエキパイは機械曲げでは曲げることができない。そのため1本1本、バーナーで炙って形が作られていく。この過程で、独特の鮮やかな焼き色も発生。

エキパイを通った排気が送られるのが集合部だ。ここにはノジマエンジニアリングが特許を持つ「スパイラルコレクター」が採用されている。その名のとおり螺旋形状とした物であり、4-1の集合形式の特色であるピークパワーの向上と低回転域でのトルクの厚みを実現させている。野島氏は永年構想として持っていたのだが、鋳造技術の進歩によって量産が可能となり製品化が実現したのだ。また、良好なパワー特性に加えて“集合管らしい”サウンドが得られるのも、4-1の集合形式であるスパイラルコレクターによる恩恵と言えるだろう。

 

プロチタンの魅力の1つが、圧倒的な軽量化にある。例えば、カワサキZRX1200用であればノーマルの重量が12.6kgに対して、わずか4.9kgとなる。この軽量化に貢献しているのが、チタン材をふんだんに使っていることにある。素材自体に強度があるために薄くすることが可能であり、また耐腐食性にも優れているのだ。プロチタンのサイレンサーでは、シェルはもちろんのこと、前方の差し込み部、排気口のあるテールピース部、さらには内部に使われているパンチングパイプまでもがチタンとなっているのだ。昔から“軽量化に勝るチューニング無し”と言われるように、相対的なパワーアップにもなりハンドリングも向上、また取り回しが楽になるなどの日常の使い勝手の点でも効果は高く、得られるメリットは多岐に渡る。

 

フラッグシップモデル「ファサーム プロチタン」の思想を受け継ぎつつ、ユーザーが手の届きやすいようにと設定されたハイコストパフォーマンスモデルが「ファサーム Sチタン」だ。エキパイの材質は同じくチタンだが、ストレートパイプとする事で焼き色の無い機械曲げとしたほか、サイレンサーの一部パーツにステンレス材を用いている。それでもZRX1200用であれば、重量は5.8kgとノーマルの約半分ほどであり、軽量化のメリットは大きい。そして、改めて言うまでも無く、プロチタン、Sチタン共に排ガスや音量などの各種規制値をクリアしたJMCA認定の車検対応マフラーなのである。

プロチタン特色のひとつが圧倒的な軽量化にある。サイレンサーは前方の差し込み部、排気口のあるテールピース部、内部に使われているパンチングパイプまでもがチタンなのだ。

PICK UP PRODUCTS

眺めて、乗って、聴いて、などなどと
さまざまなシーンで楽しめ味わえるマフラー。

ファサーム・プロチタンが装着された車両を見てみよう。排気系が露わになるネイキッド系でのマッチングの良さは特筆すべき点。大幅なスタイルアップになり、カスタムした満足感と共にバイクへの愛着を大いに増すことだろう。大幅な軽量化による取り回しの際の負担の軽減もメリットだ。そして走らせれば、その違いは歴然であり、奏でるサウンドも気持ちに拍車を掛けるに違いない。つまり、見て、乗って、聴いてと、さまざまなシーンにおいて味わい楽しめるマフラーなのである。

 

画像のZRX1200DAEG用はノーマルタンデムステップが使用可能なタイプだが、ZRX1200RやGPZ900R等一部車種にはサイレンサー部分がアップタイプとなって、よりレーシーなイメージになるファサームプロRチタン/ファサームRチタンも用意されている。

撮影車両はカワサキZRX1200ダエグだが、マフラー以外にも多岐に渡って手が入れられており、リアをノーマルのツインショックからモノサス化したNJ-5となっている。

ファサームプロチタンのエキパイは、継ぎ目無く徐々に太くなるスゥエージングパイプを用いたコニカルヘッダー。特にアクセル開け始のツキの良さに定評があり、T.O.T.などのイベントレースでも多くの有力コンストラクターの支持を受ける。

4-1の集合形式の持つ特色はそのままに、低回転域からの厚みのあるトルクを実現させたノジマエンジニアリングオリジナルのスパイラルコレクター。継ぎ目の無いワンピース構造であり、材質はプロチタン、Sチタン共にステンレス。

サイレンサーの断面形状は真円で、長く付き合っても飽きの来ないスタイルといえるだろう。シェルは画像のチタンの他に、より軽量化を果たせるカーボンもラインナップ。

プロチタン、Sチタン共に製品ラインアップの多くは、国産4メーカーのネイキッドモデルに向けられている。

BRAND INFORMATION

ノジマエンジニアリング

住所/三重県鈴鹿市住吉町7265-7
電話/059-378-3505
FAX/059-370-7811
営業時間/9:00~18:00
定休日/隔週土・日・祝日

代表の野島英俊氏はWGPの世界でメカニックとしてレーシングマシンを支え、鈴鹿8耐やサンデーレースではコンストラクターとしての腕を奮った。レースフィールドで培われた技術やノウハウは、主力商品であるマフラーにも活かされている。パワートレインのみならず、シャーシーチューンにも長けており、リアをモノサス化したNJシリーズも展開。