取材協力/ノジマエンジニアリング  取材・撮影・文/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2013年10月9日

世界GPなどの檜舞台でメカニックとして腕を奮ったコンストラクター 野島英俊氏。その高い技術力をバックボーンとして、

マフラーをメインとしたオリジナルパーツを展開しているのが 『ノジマエンジニアリング』 だ。
独創的な集合部を持った “スパイラルコレクター” は、低速域での豊かなトルクと高回転域での盛り上がりを両立させている。

シャーシチューンにも長け、リアをモノサス化した “NJ” シリーズも、レースからのフィードバックだ。

BRAND HISTORY

“いいとこ取り” を実現したスパイラルコレクター
マフラーは好みのスタイリングもチョイスが可能

コンストラクター野島英俊氏が率いる 『ノジマエンジニアリング』 は、パーツメーカーとしても著名な存在であり、主力商品であるマフラーでは “ファサーム” や “ロックオン” などのブランドを展開。それらを愛用している方々も決して少なくはないだろう。

野島氏は1976年にモリワキエンジニアリングに入社(夏休みに故郷である宮崎から自転車を漕いで鈴鹿へ行き、森脇護社長に直談判!)、メカニックとしての道を歩み始めた。在職中には鈴鹿8耐でグレーム・クロスビーやワイン・ガードーナーのマシンを担当し、結果を残した。その後、退社と共にノジマエンジニアリングを設立。国内はもとより、福田照男氏や上田昇氏のメカニックとして、世界GPの世界で腕を奮ったのである。

帰国後はサンデーレースを中心に参戦、そちらでも輝かしい戦績を残しているが、なかでも特に印象が強いのが、1999年からの鈴鹿8耐だろう。ベースマシンに選んだのは、スーパースポーツ系ではなくネイキッド系のカワサキ ZRX1100 だった。それが不利なことは承知の上。「アルミフレームのマシンに鉄フレームのバイクがどこまで迫れるか?」をテーマとした、野島氏の反骨的な精神からのチャレンジだったのである。

その ZRX1100 レーサーは、2年目から素材こそノーマルと同じ鉄(クロモリ鋼)だが、オリジナルのフレームを製作。リアはツインショックの限界からモノサスへと変更され、8耐ではクラスのコースレコードを残している。また、近年では筑波サーキットで1分を切るマシンも増えてきているが、ノジマレーサーはこの当時に先駆けて成し遂げており(ライダーは新垣敏之氏)、タイヤの性能を考えれば(当然、現在ほど進化はしていない)驚異的なことだったのである。

 

このことからもわかるように、野島氏はパワートレインのみならず、シャーシチューンにも長けたコンストラクターである。そして ZRX1100 レーサーで得たノウハウをコンシューマーユースにフィードバックしたのが “NJ” シリーズだ。ZRX1200 や XJR1300 など、ネイキッドバイクのリア回りを大幅に変更してモノサス化したものであり、その内容はフレームの加工、専用のスイングアームが用意されるなど、スタイリングはキープしたまま、スーパースポーツ的なハンドリングが得られる、いわば公道で味わえるノジマチューンとも言えるだろう。

 

主力商品であるマフラーにおいても、ノジマエンジニアリングらしいテクノロジーが発揮されている。そのひとつが、マルチエンジン用の独創的な集合部 “スパイラルコレクター” だ。これは、その名の通り集合部分を螺旋形状としたもので、4-1の集合形式でありながらも 4-2-1 のような扱いやすさを兼ね備えている。つまり低回転域では十分なトルクを得られ(4-1の不得意分野)、中回転から高回転域では集合管らしい、盛り上がりのあるパワーとなっているのだ。いわば 4-1 と 4-2-1 の集合形式の「いいとこ取り」の実現であり、排気の流れを見直すことで、高回転時では “抜け” を良く、逆に低回転時には排気ガスをエキパイ内に留めることでシリンダー内への混合気の充填効率を高めた物なのである。

 

機能的な面のみならず、ルックスもノジママフラーの特筆すべきポイントだろう。オーソドックスな楕円サイレンサーに高硬度なカーボン薄膜をコーティングし、ブラックアウトとした 『DLC-TITAN』 や、異形断面、エンド部にはドライカーボンを配した 『ロックオン』、さらに各種の規制をクリアしながらも、ネイキッド系にマッチするクラシカルな形状を持つ 『ノジマメガホン』 と、好みのスタイリングが構築できるのである。

ノジマエンジニアリング代表の野島英俊氏。世界GPなどでのメカニックとしてレーシングチームを支えた後、その経験やノウハウを活かしたマフラー作りを開始。おっとりとした口調でありながらも闘志を秘めており、前例の無かったZ1000のFCR化を果たして好成績を残すなどチャレンジ精神も旺盛。

 

鈴鹿8耐参戦時のノジマZRX1100レーサー。リアがノーマルの2本サスからモノサス化しているのがよくわかる。タンクは大型化、ビキニカウルはフレームマウント、そのフレーム自体もノジマオリジナルとするなど、手が入れられていない部分を探すのが難しいが、ルックスはノーマルの雰囲気を色濃く残している。

  • ノビーこと上田昇氏(写真右の人物)のメカニックとして世界GPで転戦していた頃のひとコマ。レースの合間に撮られた和やかなひととき、といった趣だ。写真中央の人物が野島氏である。

  • ダエグをベースにしたNJ-5。インジェクションの制御がサブコントローラーで可能になったために新たにシリーズのラインナップに加わった。モノサス化の最大のメリットは、リンクによるプログレッシブ効果で、サスペンションの動き始めは軽く、旋回中などの高い荷重が加わっても底着しない。構造変更を行い車検にも対応している。

PICK-UP PRODUCTS

求められる要素を高いレベルで実現
ノジマテクノロジーが込められたマフラー群

ノジマエンジニアリングの主力商品はマフラーだ。ノジマ製マフラーの原点的な存在となる 『FASARM(ファサーム)』 シリーズから、最新の 『DLC-TITAN』 まで車種にマッチした豊富なラインナップが揃っている。いずれもマフラーに要求される性能、サウンド、そしてスタイリングが高いレベルにあり、ノジマらしい作り込みがなされていると言えるだろう。レース用と表記のあるもの以外は全て各種規制をクリアしており、車検にも対応している。

ノジマ製マフラーの集合部 “スパイラルコレクター” は、その名の通り螺旋状の外観だ。一見すると何でもないようだが、この形状で量産を実現するまでにはかなりの時間と労力が掛かっている。

スパイラルコレクターの内部。集合部で排気は渦を巻きながらテールパイプへと送られる。低回転域では十分なトルクを、中回転からは集合管らしい盛り上がりのあるパワーを得られる。

ファサームやロックオンシリーズマフラーにラインナップされているのが “手曲げ” だ。シワの防止に内部に砂を詰めたチタンパイプをバーナーで炙って設定された形状にする。

ノジママフラーはそのほとんどの工程を社内で製造している。画像はマフラーのパーツの製作工程のひとつで、治具に固定したパイプにスプリングを引っ掛ける部分をTIG溶接しているところ。

ファクトリー内でのマフラーの製作風景。向かって右に見えるのは、排気の出口となるエンド部分で、サイレンサーの外観の大半を占めるシェルと1つ1つ丁寧に合体される。

マフラーの開発に欠かせないのがシャーシダイナモだ。試作品ができあがると車体に取り付け、ベンチテストを行なう。目指すパワー特性となっているか? が試されるのだ。

シャーシダイナモで測定して得られるのがパワーグラフだ。青がノジマ、赤がノーマルマフラーのパワー出力を示している。車種や機種によってグラフの形状に違いはあるが、いずれもノーマルを上回る(グラフはNinja1000用DLCチタン1本出しを装着)。

“大人の艶黒”を掲げている『DLC-TITAN』。DLCとは“ダイヤモンド・ライク・カーボン”の略で、ダイヤモンドに近い硬度を持つ炭素皮膜がコーティングされており、素材表面の美しさを保つ。

9DLC-TITANのサイレンサー形状は丸形では無く楕円とされている。DLC加工が施されたサイレンサーシェルには磨き込まれた凝った造りのエンド部分が組み合わされる。

10サイレンサー前後にあるリベットバンドも凝った作り。ここもDLC-TITANの外観的なポイントのひとつだ。エンド側の上部には“Nojima”のロゴが入る。

11サイレンサー部分を車体側に固定するサイレンサーバンドは、その内側のゴム帯までもが肉抜き加工されている。

12カワサキZX-14R用DLC-TITANは、画像の左右2本出しのほか、右1本出しのフルエキゾースト、サイレンサー部分を交換するスリップオンタイプの3種類が用意されている。

13カワサキNinja1000用DLC-TITANは、画像の左右2本出しのほか、右1本出しフルエキゾースト、サイレンサー部分を交換するスリップオンタイプの3種類が用意されている。

14カワサキNinja250用DLC-TITANは、フルエキゾーストながらフロントパイプをステンレス、テールパイプをチタンとしたハイブリッド仕様で、内容に比べてリーズナブルな価格を実現。

15異形断面の形状を持つのが『LOCK-ONシリーズ』だ。サイレンサーはリア方向にかけて太くなる凝ったデザインで、バンク角を確保している。テールカバーにはドライカーボンを使用。

16ネイキッド系とのスタイリング的なマッチングに優れた『ノジマメガホン』。この形状はサイレンサーの容量的には厳しいが、内部構造を見直すことで、音量を含めた各種規制にも適合。

17オーソドックスな形状の『FASARM(ファサーム)シリーズ』。手曲げチタンフルエキゾーストからミドルクラス向けのステンレススリップオンまで幅広いラインナップを展開。

18マフラー以外にも、画像のラジエターコアガード(こちらはダエグ用)を始めとして、アルミ削り出しのカバー類やボディパーツなどをノジマブランドとして展開している。

BRAND INFORMATION

ノジマエンジニアリング

代表の野島英俊氏はWGPの世界でメカニックとしてレーシングチームを支え、鈴鹿8耐やサンデーレースではコンストラクターとしての腕を奮った経歴を持つ。レースフィールドで培われた技術やノウハウは主力商品であるマフラーにも活かされている。またパワートレインのみならずシャーシチューンにも長けており、リアをモノサス化したNJシリーズも展開している。

 

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