取材協力/日本ミシュランタイヤ  レポート/浅川邦夫(アサカワスピード) 写真・文/石橋知也  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2017年3月31日

サーキット15%、公道85%というシチュエーションを狙ったドライグリップ優先のスポーツタイヤ、MICHELIN POWER RS。だが、そのイメージとは逆に、公道や低温時の乗りやすさに驚かされることに。これが新世代ミシュランの実力だ!

インにツキやすくて
加速のトラクションも◎

ミシュランの新作、MICHELIN POWER RSはグルーブデザインからも分かる通り完全にドライグリップを狙ったハイグリップタイヤだ。ところが、今回の試乗に当たっては街乗りから意外な素顔を見せた。

「まず、ハヤブサに組んで公道を走ってみたら、その乗りやすさに驚いたんだ。フロントの応答性が良く、いとも簡単に曲がっていく。それでいてバンクさせても直進状態でも、安定感があるんだ。タイヤ自体を組むときから剛性感を感じていたけれど、一般路での乗り心地もいい。このところのミシュランとはまるで違う」と、浅川邦夫さん(アサカワスピード代表)。これはちょっと違うぞ、という感じでサーキット走行に臨むと、ここでも嬉しい裏切りが。

「公道でも感じたけど、タイヤがまだ温まっていない状態でも違和感がない。爪で押して固いと思っていたコンパウンドだったけど、走行開始直後からしっかりした手応えがあって固さは感じず、むしろ安心感があった。路面温度が低かったのに、しっかりブレーキが効いた。シリカのおかげかな」

どうやら既存のハイグリップタイヤのイメージとはかなり違う。

サーキット試乗では路面温度が低く、本来のグリップ力を100%試せなかったが、逆に低温性能の良さとハンドリングの素直さを確認。多少のウエットでもブレーキの効きは良い(サーキットでは冷間時F:210/R:190kPa)

「フロントの応答性の良さも公道で感じた以上だったね。コーナーに進入しやすい。ブレーキをリリースしながらスッと気持ち良く入っていける。人間のアクションが早過ぎるとインにつき過ぎるぐらい。でも、ブレーキを残しても、立ちは強くはなく、安定感が増してくるだけなのもいい。フロントを小径に、逆にリアを大径にした効果が確かに出ているね」

そしてトラクションも抜群だ。

「リアにしっかりトラクションがかかる。今回のサーキット試乗では1度も滑っていないぐらい。剛性感があってどんどん開けられる。ただし、低温だったので高いGをかけての本当のエッジグリップは確かめられなかったのが残念」

この剛性感の高さは、MICHELIN POWER RSでリアに採用したミシュランACT(アクティブ・ケーシング・テクノロジー)プラスの効果だろう。カーカスをビードから深いバンク時に使うサイドウォール部まで折り返した構造で、センターはシングルでしなやかに、ショルダーは2枚重ねで剛性アップというもの(フロントは従来からカーカス2枚仕様)。これと2CTプラスとを合わせ、ショルダー部の剛性アップを図っているのだ。

「コンパウンドとケースのバランスの良さからだと思うけど、多少のウエット(水溜り以外)でも不安なく走れるから、公道でも十分使えるハイグリップタイヤ。もちろんサーキットで使うなら、さらに楽しく走れるはずだよ」

ハヤブサでは公道(高速道路と一般路)でもテスト。前後サイズはF:120/70ZR17、R:190/55ZR17。空気圧は前後冷間時250kPaで始めて、前後230kPaまで落とした

フロントは従来のミシュランより、センター外径で小径に。プロファイルはシングルクラウン(単一アール)を採用する。リアはフロントと逆にやや大径になった

スリックなショルダーにはウエアインジケーター(穴)を設けてある。グルーブデザインは太く短く、完全にドライ重視だ

前後デュアルコンパウンドで、センターが100%シリカ(ハード)、ショルダーがカーボン主体(ソフト)と分かれる。フロントは従来からの2CT構造で、リアはセンターのハードを内部でショルダー基部に潜り込ませた2CTプラス構造。これはタイヤ剛性アップとタレの抑制効果がある配置なのだ

テスト担当は浅川邦夫さん。「パワーRSは今日的なハンドリングで、最近のミシュランとはひと味違う。この感じでもう少し溝の多いスポーツツーリングタイヤもぜひ、作ってほしいよね」

BRAND INFORMATION

住所/東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー13F
電話/0276-25-4411
日本でのタイヤ販売事業は1964年にスタート。浜松町-羽田空港間に新設されたモノレールに、ミシュランスチールラジアル“X”タイヤが採用されたのが日本におけるミシュランの第一歩だった。1991年にはR&Dセンターも設立。