ビッグキャブ化で多くの混合気を吸い込み、エキスパンション・チャンバーで効率良く排気する。吸排気のモディファイで驚きの速さや瞬発力を獲得できるのが2ストエンジンの特徴である。カムシャフト交換やボアアップから始まる4ストチューニングとは大きく違うのだ。
メーカーの開発ライダー経験が豊富なケイツー・テック代表の久保さんにチャンバー開発に関するお話を伺ってみた。
「パワー主義ではダメだと思います。ストリートでもサーキットでも、必ずカーブやコーナーがありますよね。レース用ならある程度は割り切った設計にできますが、ストリート用で様々な走行状況を考慮したとすれば、低中速を犠牲にはできません。それにサイドスタンドがあるので思い通りの取り回しが難しいことも多々あります。その分だけチャンバー作りは難しいです。」「最近は性能重視ではなく、ノーマルの性能を確実に超えていてリーズナブルな商品が求められているように思います」と語る久保代表。同社WEBを見ると同一モデルでも様々なバリエーションで対応しているのがわかる。
「RZ250R用と350R用では膨張室の大きさに違いがあります。250ccなのに350用を取り付けると、全域でぼやけてしまってパンチを感じないフィーリングになってしまいます。ですから搭載エンジンの排気量に合わせたチャンバーを取り付けないと、いくらストリートでも楽しめなくなってしまいますので、このあたりは知っていて頂きたいですね」とお話を続けて下さった。チャンバー職人である代表自身が、実走行テストで性能チェックするケイツー・テック。さらなるラインナップの拡充に期待しよう。
2本出しのレーシングチャンバーからストリート用の集合チャンバーまで、11種類ものバリエーションを持つRZ250/350 用。価格帯は3万2400円~11万8800円。インテークチャンバーやラジエターコアガードもある。
ケイツー・テック主宰 久保和寛(Kazuhiro KUBO)
選手権レースに参戦しながら「もの作り」の腕を磨き、マフラービルダーとして独立しケイツー・テックを立ち上げた久保和寛さん。年毎に適合機種を増やし2ストロークファンの期待に応えている。世界GP日本ラウンドではGP125クラスにワイルドカードで出場し、好成績をおさめた実績もある、走れるビルダーだ。
ハンドメイドのチャンバーは3本ローラーなど使わず型棒に合わせて手の力で曲げ込みロール成形するそうだ。この方法で作業することでワークにキズを付けずに商品化できる。まさにこだわりのハンドメイドである。
本格レーサーレプリカ時代の幕開けを予感させたヤマハRZ250R。エキスパンション・チャンバーの装着によってノーマルの走りを超えテイストフルな世界へと導いてくれる。写真はRZ350R用チャンバーの装着イメージだ。
高品質マテリアルSUS304を使いポリッシュ済みパーツを組み合わせ溶接した鏡面クロスチャンバー・タイプ2( 価格/11万8,800円)。SUS素材のまま製作されたSTDステンレスクロスチャンバー・タイプ2(価格/10万8,000円)もラインナップ。
膨張室の容積が異なりそれぞれ専用設計となっているRZ250Rと350R 。350用は最大膨張部が太く長い。それぞれの排気量に合わせて製作され、走行テストを経た後に細部をさらに詰めて完成させる。溶接ビードも芸術的だ。
TZR250R(1KT)用だけでも6種類のチャンバーをラインナップ。マテリアルやデザイン、表面処理などなど、ニーズに応じた設定だ。価格帯は4万3,200円?11万8,800円。
ホンダNSR250RはガルアームのMC21とプロアームのMC28用でそれぞれ3種類ずつラインナップ。膨張室が太いためアンダーカウルと一部干渉がある。要バックステップでオプション販売も行う。
トリプル用は5種類ラインナップ。コストパフォーマンスに優れたストレートチャンバー・タイプ1( 価格/7万200 円)から最高峰の鏡面ステンレスクロス・タイプ2(21万600円)まで揃う。