ハラファクトリーで始める絶版&旧車ライフ
取材協力/ハラファクトリー  取材・文・写真/モリヤン  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年04月15日
近年、国産絶版車の人気がどんどん高まっているが、その理由はやはりトラディショナルなバイクに対する純粋な憧れということだろう。60年代から70年代は、急速に国産バイクが進化した時代で、各メーカーの名作も数多い。想い出深いその時代のモデルを今乗ることは、きっと何よりも贅沢なことなのだ。

INTERVIEW

技術に裏打ちされたショップは
豊富な経験から成り立っていた

神奈川県の横浜。港北ニュータウンの中にあるハラファクトリーは、カワサキのZ1やホンダのCB750を筆頭に、国産旧車や古いトライアンフ等を扱うビンテージバイクの専門店だ。店内には様々な旧車が並び、どれもがきっちりとメンテナンスを終えてから商品としてこのショップを巣立っていく。エンジンのメンテナンスは当然ながら、車体や足回り、外装にいたるまで徹底的にリファインされたバイクは、まるで新車のような輝きを取り戻していた。

 

現在は、その拠点を横浜の都筑区に置いているが、創業は10年前、鶴見でオープンしている。代表の原幸一さんは敏腕メカニックであり、優れたレーシングライダーでもある。その実績は、30年近くになるのだ。

 

ーまずは、ショップオープンまでの経歴を教えてください。

原(以下、同)「最初はカワサキのグリーンショップで普通のメカニックとして働いていました。一般整備が主な仕事ですが、バイクブームまっただ中だったこともあって、特にカワサキ車は過酷な使われ方をしてもオーナーがそのバイクに対する思い入れが強くて重整備することが多かったですね」

 

ーニンジャが大ヒットした時代ですね。

「そうです。それにZ1以来、様々な年代のZ乗りがとにかく多かった。チューニングでもリペアでも本当に様々なメンテナンスを経験しました。僕のベースはそんな時代に作られた感じですね」

 

ーその後独立したわけですね。

「独立と言っても、店を出すのではなくて、ショップの下請けとしてのメンテナンスを専門にやっていました。やはり基本はZ系のエンジン修理やレースエンジンのチューニングです。ハラファクトリーとして店をオープンしたのは、40歳を過ぎてからですね」

 

ー原さんの、レーサーとしての経緯を聞かせてください。

「レースは、ショップをオープンする以前からずっとやっていました。以前はイベントレースが盛んでしたから、本当に様々なレースに出場していましたね。筑波サーキットで開催されていたグランドスラム4とか、トランスエコーとかです。現在でも開催されているテイストオブ筑波の前身だったテイストオブ・フリーランスにも出場していました」

 

ーそんな経験が、今に生かされているということでしょうか。

「やはり過酷な状況でテストすることは重要です。チューニングのポイントとか、メンテナンスにおいてもウィークポイントを見つける手段になりますから。でも僕自身がとにかく走ることが好きだったということでしょう。最近は、ツインリンクモテギで開催されているDE耐にハマっていて、お客さんと共に楽しんでいます。かつてはチームイワキで走ったこともありますが、50歳を過ぎてからは裏方に回りました。2014年は、土曜日も日曜日も僕らのチームが優勝しました。これは、旧車の再生とはまた違うこの店の特徴ですが、意外とお客さんはオーバーラップしています」

 

ーそれでは、旧車を楽しむ上で、原さんのこだわりとは何ですか?

「これはどんなバイクでも共通ですが、しっかりとしたメンテナンスです。僕が、ZやCB系をイチオシする理由は、旧車にも人気モデルとそうではないモデルがあって、この2車はメーカー欠品しているパーツでも、多くのサードパーティーがリプロパーツを販売していることが大きいですね」

 

ー具体的にはどんなパーツですか?

「Z1やCB750は、ガソリンタンクやサイドカバー等の外装はほとんど新品で手に入ります。しかも塗装済みで、最近はとても品質が良い。キャブレターの中身も、ほぼ新品パーツで再生できます。それに、メーカーから出るパーツも皆無というわけではありません。その点、マイナー旧車は少し厳しい状況ですが、僕らの創意工夫でなんとか蘇らせる努力はしています」

 

ーユーザーが旧車と付き合うことで、気をつけるポイントとはどんなことでしょうか。

「よほどメンテナンスのスキルが高い人でないかぎり、バイクを買うだけということでは、旧車ライフは長続きしません。やはり信頼できるショップとの付き合いは、必要不可欠になりますね。パーツが手に入らない場合でもなんとかできるノウハウが、専門店にはありますから」

PICKUP PRODUCTS

徹底的なオーバーホールで
新車のように蘇らせる

ハラファクトリーの仕事は、その徹底ぶりにある。バイクを知り抜いたメカニックだからこそできる再生力とでも言うべきか。エンジンは完全に分解して、各部を計測後、すべてリペアして組み立て、フレームや足回りも同様である。特に経年劣化の激しいフレームは細部まで検査してリペア。その行為に原さんは「特別なことは何もしていない」という表現をする人なのだ。優秀なメカニックが一台ずつ手間暇をかけて組んだバイクは、当時の新車以上のクオリティを持っていると言っても、決して言い過ぎではないだろう。ハラファクトリーの仕事は、大切な国産名車を次の世に残す重要な役割を担っているように思えた。

 

BRAND INFORMATION

ハラファクトリー

住所/神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎南5-20-22
TEL/045-949-3515
FAX/045-949-3516
営業時間/11:00-20:00
定休日/毎週水曜 第1・3木曜

カワサキZやホンダCBだけでなく、様々な旧車の再生を手がけるショップ。最近は、ホンダの古いハンターカブや旧トライアンフ等のレストアも手がけているのがハラファクトリーである。