取材協力/ベビーフェイス  取材・撮影・文/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2013年12月25日


今では一般的となっているパーツの機構や製品を、どこよりも先駆けてリリースしてきたのが『ベビーフェイス』だ。
自分達が「欲しい!」と思う物を商品化し、それがレースフィールドという最前線でも選ばれ、使われている。
さらにそこから得られた様々な情報はフィードバックされ、再び製品作りに反映されているのだ。

ユーザー目線を忘れず自分達が欲しい製品を創出
選ばれ続けるために絶え間ない改良も

2014年で創業から30周年目を迎えるベビーフェイス。当初はレース用車両のメンテナンスから始まり、自分達が必要と考えるマフラーの製作を手掛けたことが、パーツメーカーとしてのスタートになった。現在ではアルミの削り出し、それにドライカーボンを自社製品の柱としている。そのクオリティの高さから信頼のブランドとしての地位を築き、ユーザーから指名買いされることも多い。

ベビーフェイスのモノ作りのモットーは“ユーザー目線を忘れないように”である。自分達が「欲しい」「あったらいいな」と思う物を商品化しているのだ。したがって「第1に格好良く」、そして「高性能であること」、さらに「手の届く範囲内で」というのがポリシーとなっている。そのための研究や開発は絶え間なく行われ、世に先駆けて登場した製品も多い。例えば、現在では一般化している、ステップ位置が変えられる“マルチポジション”や、可動部へのベアリングの採用、アクシデントの際に車体へのダメージを最小限とする“フレームスライダー”などが挙げられる。マフラーを製作していた時も、相当に早い段階でシャーシダイナモを導入し、また、航空機などに用いられる最先端素材、ドライカーボンの製品化も実現している。

ベビーフェイスの製品は、一般ユーザーのみならずレーサーからも選ばれ、使われているのが特筆すべき点だろう。レース用と言ってもコンセプト自体は市販品と同じだ。そして実際のユーザーから得られる「声」に耳を傾け、「褒め言葉は要らない。悪いところだけ言ってくれ!!」というスタンスで、常により良い製品造りを目指している。そのフィードバックは日本国内にとどまらない。たとえばステップの別軸については、アメリカのレーサーからの意見を反映したものだ。余談だが、アメリカにバックステップを広めたのはベビーフェイス(海外では『サトーレーシング』のブランド名で展開)と言っても過言ではない。

他所のメーカーに先駆け、近々導入される三次元測定器により、さらに製品精度が高まり、また新たな製品の実現が可能となることにも繋がる。我々に「欲しい!」と思わせるアイテムが、これからも増え続けるに違いない。

2013年の鈴鹿8耐では、3位入賞となった加賀山就臣選手率いる『Team KAGAYAMA』のマシンを筆頭に、3割近くの車両にベビーフェイスのステップを始めとした製品が装着されていた。レーサーでの使用は国内のみならず、アメリカAMAで参戦する多くのレーサーにも選ばれており、そこからのフィードバックも、製品造りに反映されている。

PICKUP PRODUCTS
  • ハンドルバーエンド&レバーガード。バーエンドはルックスの向上と共に、インナーウェイトを追加することで手に伝わる振動の軽減という機能を持っている。そのためアルミ製の他にステンレス製もラインナップされ、異なる長さも用意されている。

  • レバーガードは、元々はMotoGPでブレーキ側への装着が義務づけられ、全日本選手権でも多く使用されている。ストリートではハンドガードとしての役割もあり、左側(クラッチ側)へも取り付けることができる。

  • 主にアルミ合金のブロックから削り出しで作られているバックステップキット。意匠性の高い形状で機能的、さらに大阪ゴールドの着色アルマイトで所有感は非常に高い。

  • フレームスライダーは万が一のアクシデントの際に、車体を滑らせることで危険なコース上から排除、及び衝撃を吸収し、車体へのダメージを最小限にすることを目的としている。耐久レースで産まれたアイテムをストリートユースでも。

  • フレームスライダーと同様に、アクシデントの際にアクスル部分へのダメージを少なくするアクスルスライダー。画像のパニガーレ用ではレーシングスタンドの使用も可能。

  • ノーマルのタイミングホールと置き換えて装着するタイミングホールプラグも、アクシデントの際に車体へのダメージを少なくするプロテクションパーツ。ベビーフェイスのスライダー類は、プロテクション効果の高い素材を吟味している。

  • ちょっとバイクから離れたりする時に、ヘルメットを車体に取り付けておくためのヘルメットロック。汎用のハンドルホルダータイプと、各車種用に設定されたタイプがある。

  • トランポに積載する際に、バイク側にタイダウンを掛ける場所が無くて苦労した、という経験から産まれたレーシングフック。機能性の高さに加えてデザイン的な美しさも兼ね備えている。

  • ベビーフェイスでは、画像のフルードキャップ(ブレーキやクラッチのリザーバータンクのキャップ)を始め、リンクロッドなど様々な削り出し製品をリリースしている。

  • ベビーフェイスの『Lighten Max-Dry Carbon』は、1つひとつ手作業で製造するため高価な製品になってしまうが、8年ほど前から研究を開始し、ノウハウの積み上げによってウエットカーボンパーツ並の価格を実現している。

社内で一貫生産されるパーツたち
刻まれたロゴには想いが込められている

ベビーフェイスからリリースされている製品は、アルマイトといった特殊処理を除き、削り出し、ドライカーボン製品共に社内で設計から試作、量産まで一貫して行われている。これまでのノウハウやユーザーからのフィードバック、あるいは実際の効果などから、金属パーツやスライダーの樹脂パーツでは、それぞれ用途や目的に見合った素材が吟味され、選ばれている。最近では“コピー商品”も多数出回っており、誤ってニセモノを購入しないよう注意が必要だ。見た目はソックリでも、適していない材質であることもあり、万が一のアクシデントの際は余計な出費となる可能性もある。製品に記された『Baby Face』のロゴは、自信を持って世に送り出されている証であり、そこには造り手からユーザーへの想いが込められているのである。

 

設計にはCAD、CAM、CAEを使用している。モニター画面上で3D化された状態を見ることができる。

ファクトリー内には削り出しパーツを製作するための工作機械が並ぶ。マシニングセンタは3台導入し、そのうち1台(写真)は多軸を持つアメリカ製。

写真のNC旋盤も3台設置され、そのうち2台は複合加工機。2台のマシニングセンタとNC旋盤は、信頼性の高い国産メーカー、OKUMA製だ。

機械が稼働しているときには切削油が噴射され、エンドミル(歯)がアルミやステンレスのブロック削っていく。ブロック自体は人間の手でセットしなければならない。

マシニングセンタで加工途中のステップ。表面は切削油で濡れている。これからさらに削り込まれ、滑り止めのためのローレット加工も彫られていく。

オートクレーブ(釜)から出された状態のドライカーボンパーツ。製品の周囲には余分な「耳」があるので、それをカットする段階。表面には比較的ツヤがない。

余分な部分をトリミングし、その後表面をザラザラに荒らす。紫外線から素材を保護する耐UVクリアペイントを塗布するためだ。トリミングや表面加工など、工程は全て手作業だ。

表面に耐UVクリアペイントが塗布されて完成。ドライカーボンの製造工程は、これまで積み重ねてきたノウハウの結晶だ。そのため全てをご紹介できないのが少し残念。

9製品には『Baby Face』のロゴが透かし的に入れられている。ドライカーボンはプレプリグという素材を型に張り込み、その後、密着させるために真空状態にし、加圧しながら加熱する。

BRAND INFORMATION

ベビーフェイス

アルミやステンレスの削り出し、ドライカーボンをメインとするパーツメーカー。アメリカのガスケットメーカーCOMETIC(コメティック)、ハイパフォーマンスコンロッドのキャリロ、鍛造ピストンのJE国内総代理店を務める。ベビーフェイスの製品は海外へも積極的に展開され、世界中のライダーから高い評価を受けている。

 

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