取材協力/東単 取材・文/野岸泰之 写真/堤 晋一 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

バイク用品店のヘルメットコーナーで、アライのヘルメットなのに同社のホームページに載っていないカラーリングのモデルを見たことがないだろうか? それは、もしかしたら「東単オリジナル」モデルのアライヘルメットかもしれない。国内最大級のバイク用品・部品の卸問屋である株式会社東単がアライとコラボレーションして独自のグラフィックモデルを販売する理由、そしてその魅力を探ってみよう。

INTERVIEW

安全をキーワードにアライヘルメットの
パートナーとして独自商品を企画

今回話を伺った株式会社東単 営業部課長代理の金森一男氏

株式会社東単の創業は1955年。以来60年以上にわたり、ヘルメットやオイルをはじめとするバイク用品、マフラーや外装部品などのアフターパーツ、ヤマハとカワサキの純正パーツなど、多くのバイク用品、部品を取り扱う総合卸売問屋として、ライダーに選りすぐりの商品を届けている。取り扱い商品は全国の用品店、二次卸問屋などに流通し、その規模は国内最大級を誇る。たとえ名前は知らなくても、お世話になっているライダーは多いはず。また同社ではアフターメーカーとパートナーシップ態勢をとり、東単としてのオリジナリティのある商品を企画、開発、販売している。アライのヘルメットで東単オリジナルのグラフィックを施したモデルが販売されているのも、東単とアライのコラボレーションによるものなのだ。

ではなぜ東単は数あるヘルメットメーカーの中からアライをパートナーに選んだのだろうか。話を伺った営業部課長代理の金森一男さんは、同社の創業以来のポリシーが“安全”だからです、と語る。

「アライさんとは40年以上のお付き合いをさせて頂いておりますが、何よりも安全性にこだわった製品づくりを大切にしておられるのはもちろん、快適性、かぶり心地などに対する企業努力も惜しまないところが、パートナーとして魅力ある点ですね。流行に左右されず、頭を守るという基本を重視している企業姿勢は職人気質でもあり、とても尊敬できます」

ユーザーのニーズに寄り添いながらも安全性を第一に考える、東単とアライにはそんな企業理念が共通しているのだという。では、アライの帽体を使用した東単オリジナルグラフィックのヘルメットはどうやって生み出されているのだろうか。

「東単オリジナルのグラフィックモデルは30年以上前からあるんですが、もともとは“日本で発売していない、海外向けグラフィックモデルを東単オリジナルとして出してみないか”とアライさんに提案していただいたのが最初です」

「東単さんは販売のプロであり頼れるパートナーです」と話す、株式会社アライヘルメットの上幸一氏

メーカーとしてはあまりラインナップが増えすぎても在庫管理や保管が大変になる。そこで大きな倉庫を持つ東単と組み、オリジナルの商品とすることで、多くの選択肢が欲しいユーザーと自社製品の販売拡大を目指すアライ、オリジナル商品を展開したい東単の三者にとって、誰もが納得するいい形が出来上がったのだ。

「毎年秋以降、バイクシーズンが一段落した頃に、アライの担当者と会議を行って“来期モデルはこういう路線で行きましょう”など、打ち合わせをするんです。グラフィックのデザインについてはアライさんからご提案いただくことが多いんですが、中には弊社社員のラフスケッチをアライさんにご提案し、商品化されたものもあります」

フルフェイス、オープンフェイス、オフロードなど現行のアライヘルメットのほとんどのモデルについて、東単オリジナルのグラフィックが存在する。その数は約70種類にもなるというから驚きだ。ここ10年ほどは、毎年3月に行われる東京モーターサイクルショーの東単ブースで参考出品として試作デザインが公開され、ユーザーの反応を見て社内で検討した後、そこから実際に商品化されるのが通例となっているという。

東京モーターサイクルショーにはヘルメット以外にも、東単オリジナルのマフラーなども展示されていた

そんな東単について、パートナーであるアライの担当者、上幸一さんは「頼りになる強力な販売力をお持ちなのはもちろん、販売店やユーザーの意見をダイレクトに伝えてくれる存在でもありますので、とても大切でありがたい存在です。これからもよきパートナーとして、ユーザーに喜ばれる商品を一緒に企画していきたいですね」と話してくれた。

東単としては今後、女性向けのモデルやデザインにも力を入れていきたいと思っています、と金森さん。これからも多彩なグラフィックで我々を楽しませてくれるであろう東単オリジナルモデル。バイク用品店のアライヘルメットのコーナーで、ぜひ探してみてほしい。

PICKUP PRODUCTS

東京モーターサイクルショーに
独自グラフィックのヘルメットを参考出品

70種類以上に及ぶという東単オリジナルのグラフィックモデル。同社のホームページでもチェックできるが、毎年3月の東京モーターサイクルショーには東単の誇るオリジナルモデルをはじめ、参考出品として新製品候補が展示されるのが通例だ。ここでは今年の東京モーターサイクルショーの東単ブースにどんなヘルメットが展示されていたのか、あらためてチェックしてみよう。はたしてこの中からニューモデルが生まれるのだろうか……楽しみに待ちたい。

01東単オリジナルモデルのほとんどが展示されるブース。あらためてその多彩なグラフィックには驚く。

02ヘルメットが並ぶブースとは別に、もうひとつの東単ブースにはパーツや用品などが多数展示されていた。扱う商品の多彩さがわかる。

03安全にこだわりながら、より質の高い多彩な商品をユーザーに届けるのが東単のポリシー。我々のバイクライフを豊かに彩ってくれる。

04東単オリジナルのヘルメットにはMIGLIA(ミレア)のブランド名を持つものも。かつてレーシングブランドとして展開していたので懐かしい人もいるはず。

05ブースには東単が扱うブランドのロゴが掲示されていた。国内メーカーから海外ブランドまで、いかに多くの商品を扱っているかがわかる。

06参考出品の一例。虎をモチーフにした「ROAR(ロアー:雄叫び)」という名のグラフィックは海外モデルで人気のデザイン。

07こちらも参考出品「ROAR(ロアー:雄叫び)」の色違い。帽体はRAPIDE IRだ。これらの中から今年のニューモデルがいくつ出てくるか、楽しみに待ちたい。

08参考出品の一例。高級感のある塗装に幾何学的な模様を組み合わせた。帽体は新型のツアラー向けモデルASTRAL-Xだ。

09桜をモチーフにしたグラフィックは東単社員のスケッチをもとに、過去に商品化されたもの。

10海外用のモデルではなく、はじめて東単が提案し完全オリジナルとして世に出たのがこのグラスブルーシリーズ。

11往年の名ライダー、ケビン・シュワンツのレプリカグラフィックも東単オリジナルとして販売されている。帽体はRX-7X。

12ブースにはヘルメット以外に、明るさを一瞬で変えられる電子調光式シールドインサート「AkariR AX.12」も参考出品されていた。

13人気のオフロード用モデル、ツアークロス3にも東単オリジナルのグラフィックが存在する。

14フルフェイスばかりでなく、オープンフェイスのSZ-RAM4のオリジナルグラフィックも人気だ。

15同じグラフィックをさまざまなタイプの帽体で採用しているケースもある。ユーザーとして選択肢が広がるのはうれしい限りだ。

BRAND INFORMATION

住所/東京都港区芝浦4-16-13
電話/03-5427-3114
ファックス/03-5427-3102
創業60年を超えたオートバイ用品・部品の老舗総合卸問屋。東京モーターサイクルショーにあわせて独自のカラーグラフィックを施したアライヘルメットを参考出品し、人気カラーを発売するのが定番となっている。