ノーマルから多機能デジタルメーターへ美しく取り付けるためのノウハウとは
取材協力/有限会社エービーシー有限会社オートマジック  取材・撮影・文/森下 光紹
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2014年7月2日
バイクのメーターを交換するのには様々な理由がある。古いモデルの場合は、ノーマルメーターの入手が困難で、その代替えという理由。新しいモデルの場合は、イメージの変更と、機能のグレードアップも譲れない理由である。しかし機種ごとの専用設計ではないデジタルメーターは、簡単に取り付けることができるのだろうか? 専門ショップのメカニックが行う作業を追ってレポートする。

FEATURE

ACEWELLの多機能デジタルメーター
『ACE-6000』とは

さまざまなタイプのデジタルメーターをラインナップする『ACEWELL(エースウェル)』の中で、このACE-6000はデジタルの要素とアナログの要素を同時に備えた機能的なメーターである。

 

メーター本体の寸法は、130.6×83.4×31.3mmと非常にコンパクトであり。重量も極めて軽い。最大の特徴は、タコメーター表示がアナログ式で、マックス回転数を9,000と12,000と1,5000rpmに設定された3機種が用意されている点である。針の位置から回転数を瞬時に判断できるアナログメーターは、特にエンジン回転を把握するにはとても重要な方法であり、もちろん機能的にはフルデジタルだが、とても見やすいアナログ表示となっている。

 

多機能デジタルとしての性能は、スピードのリミットが399.9kmと充分なこと。ツイントリップを備え、オドメーターの距離設定も任意に可能。その他、水温計や燃料計、外気温や電圧も表示できる。個性的な機能として、オイル交換時期などのメモに使えるメンテナンスリマインダー表示や、サーキット走行などで威力を発揮するラップタイマー機能、シフトアップのタイミングを設定できるシフトワーニング機能などもある。ツーリングに便利な機能としては、平均速度計算機能や、ライディングタイムの表示機能なども備えている。多くの機能が凝縮された、優れたデジタルメーターなのだ。

 

基本的に、12V電源でバッテリー搭載車種であればどんな車体にも取り付けることができる。そして、その取り付けの安定を図るためには、『Woodstock(ウッドストック)』社が製作する専用のメーターステーを使用することを強くお勧めしたい。

MAINTENANCE

実際にスズキGS1100カタナへ装着
作業はカスタムプロショップ『Auto Magic』で行った

ACE-6000には、本体の他に簡単な汎用ステーが付属されている。しかしこれは暫定的にどんな環境でもとりあえず取り付けることができるように用意されていると判断すべきであり、とくにメンテナンス経験や知識が浅く、取り付けに自信の無いユーザーにとっては、少し不安があるとも言える。メーターは、ただどこにでも取り付けられていれば良いというものではなく、ライダーに正確な情報を瞬時に提供するためには、その角度や取り付け強度も重要なのだ。その点、様々な車種に取り付けられるといっても、やはりそれぞれしっかりとしたフィッティングを考え、追加ステーの製作や、ハンドルを切った場合のクリアランス確保など、押さえるべきポイントは数多いのだ。

 

もちろん、汎用性のあるメーターなので、ある程度の金属加工や改造のスキルがあり、メンテナンスが得意なライダーならば、愛車とのフィッティングを考えながら、自分で作業することもできる。しかし、手元にそれなりの工具や工作機械(電動ドリルやサンダー、溶接機等)を持たないユーザーは、やはりカスタムやメンテナンスが得意なバイクショップに作業を委ねるのが妥当だろう。

 

そして配線にも注意を払わなくてはならない。もし繋ぎ間違いをしたまま電源を入れると、最悪の場合、復活不可能な故障に陥ることもあるのだ。

 

まずは外装の取り外し。電装品であるデジタルメーターの取り付けは、メインハーネスからコネクターを分割し、電源を取りだす必要がある。そのためには外装がそのままでは無理である。

シートやサイドカバー等を外したら、燃料ホースを分割してガソリタンクも外す、タンクとフレームの間にメインハーネスが通っているからである。

アッパーカウルのあるモデルはもちろん取り外す。ネイキッドモデルの場合は、ヘッドライトを外す必要があるかもしれない。もちろん、元々取り付けられていたノーマルメーターは取り外す。

これはオートマジックで製作した専用のステー。微妙な角度が付けられ、メーターの取り付け穴には6mmボルトを使用できるナットを溶接してある。頑強なスチールで製作し、ラッカー系の塗料でブラック塗装を施す。

フロントフォークのトップブリッジにあるノーマルメーターの取り付け位置に、製作したステーを仮止めする。

デジタルメーター本体に『ウッドストック』製の専用ステーを取り付ける。メーターを取り囲むようにマウントする精巧な作りになっている。

取り付けが完了したステーのマウント位置に、アルミ製のスペーサーを取り付ける。スペーサーの長さは、仮にメーターを設定した位置を理想的に固定するために設定された長さ。

車体に跨って、仮止めしたステーにメーターを取り付ける。まだボルトを締め込んではいないので、トップブリッジのセンターを見ながら違和感のない位置を決定する。

ボルトの本締め。先ほど設定した位置からメーターがずれないように注意しながら、ボルトをしっかりと締め込む。

10バイクの配線図は絶対に必要だ。それぞれの配線を間違えないように繋ぐのだが、接続は一度に全部繋ぐのではなく、各パートに分けてチェックすることが重要。動作確認を行いながら配線し、仮に繋いだ後、長さを揃えてカットし、もう一度繋ぎ直すのである。

11コネクターは、車体のノーマルで使用されているものを分解して再使用するか、オリジナルで製作する。銅線だけを巻き付けてビニールテープ巻きなどという方法は絶対にN.G.だ。

12コネクター接続ではない単線接続の部分は、電工ペンチを使い、ギボシ端子を取り付ける。車体側にもギボシを取り付け、オスとメスの状態で接続する。

13スピードメーターケーブルを専用のホルダーに差し込み、そこから回転パルスを拾い出す構造。

14全ての配線が終了したら、車体の金属部分にアースをとる。アース部分はサビていたり塗装が乗っていたりすると接触不良を起こすので注意が必要である。

15接続が終了した配線は、スパイラルチューブでまとめて車体に固定する。この時ハンドルを左右に切って、どこにも不具合が生じないことをしっかりと確認する。

16電源を入れ、正常に作動するか確かめる。エンジンもかけて、針の動きやマウントのガタ、他のパーツとの干渉がないかなど、細かくチェックする。

17すべての作業が終わったメーター裏側。アルミのスペーサーと製作したステーの角度など、微妙な設定が、見やすさや使いやすさの決め手となるのだ。

IMPRESSION

やはり専門店での作業は違う

まず考えなくてはいけないことは、汎用メーターという設定は、どんなバイクにでも簡単に取り付けられるということではなく、どんなバイクにでも、工夫次第でしっかりとかっこ良く取り付けられるということである。

 

今回の取り付け作業で重要だったことは、ノーマルメーターを取り外したそのポジションに違和感なくデジタルメーターを装着するには、やはり、任意に設定した位置に正確に取り付けるための専用ステーやスペーサーを製作する必要があったということだろう。もちろん、ユーザーがD.I.Y.で取り付けることも充分可能だ。しかし、それがもし近所のホームセンターなどで売られている汎用の穴開きステーなどで取り付けた場合、理想的な角度や強度を確保できるだろうか。そして、配線の問題もある。ただ配線しただけでは、ハーネスの長さが余ってしまうし、もし間違えた配線をしてしまうと、本体故障の大きな原因にもなる。配線には専用の工具と、かなりのスキルが必要だと言わざるをえないだろう。

 

多機能のデジタルメーターは、防水性も抜群で魅力的なアイテムである。そしてそのメーターが取り付けられたコックピットは、ライダーの視覚に常に入る場所。ツーリングでもサーキットでも、どこを走っていても必ず見ているコックピットだからこそ、理想的なマウント位置や装着強度には、こだわりたいものである。

 

軽量コンパクトなデジタルメーターは、機能的な位置に装着することが条件である。角度の設定は、基本的にはライディング中のライダー目線から表示面が真っ直ぐに見える角度にする。その角度が浅いと、空の明るさや太陽、街灯などを直接反射してしまう恐れがあるからだ。瞬時に見て情報をキャッチしなくては、高機能の意味がない。

取材協力店

Auto Magic

住所/千葉県千葉市若葉区東寺山町929-1
電話/043-254-8198
営業/10:00-20:00
定休/火曜

今回の取り付け作業は、千葉県のオートマジックで行なった。カスタムが得意な老舗で、様々なノウハウを持っているショップである。フレームの加工からエンジンチューニング。もちろん各パーツの取り付けに至るまで、細かいこだわりを表現できるお店なのだ。

BRAND INFORMATION

エースウェル日本総代理店
有限会社 エービーシー

住所/大阪府和泉市池上町4-10-2
電話/0725-44-7831

高機能なデジタルメーターを数多く扱うエービーシー。ACEWELLのデジタルメーターは全国のパーツ量販店や、カスタムバイクショップなどで購入することができる。各種のカタログは販売店でも手に入るが、ホームページからPDFでダウンロードすることも可能だ。