“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson8/Uターン

掲載日:2010年11月19日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson8/Uターン
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson8/Uターン

走る・曲がる・止まるを
スムーズにつないでいこう

白バイが行うUターンは「小道路旋回」と呼ばれる特殊なテクニックである。独特な足の着き方もさることながら、エンジン回転数を上げつつ半クラの当て方で倒し込みをコントロールする高度な技術が必要になる。一般ライダーがそのまま使えるものではないが、「小さく曲がる」ためのヒントが詰め込まれているので参考にされたし!

 

白バイが行うUターンは小道路旋回と呼ばれる種目である。片側1車線を想定した狭いコースの中で素早く正確に180度ターンしなければならない。ここまでは単なるUターンだが白バイ流にはいくつか特徴がある。ひとつは発進前の後方確認。白バイの競技大会では、振り返り様にプラカードに表示された車種名を声に出して確認しなくてはならい。これは単に後ろを「振り向く」だけでなく、しっかり「目視している」ことを意識するため。百戦錬磨の白バイ隊員であってもやはり発進直後が最も危険だという。儀礼的なものではなく、自分と相手の安全を守るためでもあるのだ。

 

「白バイは通常、交通指導と取締りを業務していますが、緊急発進して違反車を追跡しなくてはならない場合もあります。このとき、焦っていきなり出てしまうと後方の車両と接触する危険性が高まります。事故を防止するためには、どんなときでも平常心を持って、安全確認を怠らないよう努めることが大事です」と笹野巡査長は語る。これは我々一般ライダーにもそのまま当てはまることだろう。

 

白バイ流Uターンのもうひとつの特徴は「足着きターン」であることだ。競技規則では足を出さなくてもいいが、安全・確実にターンをこなすための補助的な手段として使う。実技を見ていると、発進と同時に逆操舵で一気にバイクを倒し込むため、その勢いを止めるために一瞬「ポンッ」と内側の足を着いているようだ。ジムカーナなどで着いた足を軸にコンパスのように回る、いわゆるボックスターンとは異なる技術だ。

 

半クラの使い方にも特徴がある。発進では最初にかなり回転数を上げた状態でクラッチをつなぎ、半クラを当てっぱなしで旋回する。そして、半クラの加減によって自在にバイクを倒し込んだり起こしたりしているのだ。Uターンでは右足を出すので当然リヤブレーキは使っていない。通常のUターンではリヤブレーキで速度調整する方法もあるが、白バイの場合は半クラでそれを行っている。俊敏な機動力が求められる白バイの職務的な特性上、このような技術が編み出されたのだろう。

 

このように、同じUターンでも一般ライダーが行うものとは技術的に大きな違いがあり、そのまま真似することはおすすめしない。ここでは「安全確認の重要性」や「足を着いて安全にターンする」ことを参考にしてほしい。

片側1車線の狭い道路でのUターンを想定した「小道路旋回」。振り返って目視し、競技では後方に出されたプラカードの車種を大声で確認。前後ブレーキはかけておく。

振り返って後方確認

片側1車線の狭い道路でのUターンを想定した「小道路旋回」。振り返って目視し、競技では後方に出されたプラカードの車種を大声で確認。前後ブレーキはかけておく。

回転数を上げた状態で半クラを当てて発進。同時にハンドルを外側に切ると逆操舵の効果により車体は急激にイン側に傾き始める。一気に半クラまで持っていくのがポイント。

半クラを当てつつ逆操舵

回転数を上げた状態で半クラを当てて発進。同時にハンドルを外側に切ると逆操舵の効果により車体は急激にイン側に傾き始める。一気に半クラまで持っていくのがポイント。

逆操舵からの倒し込みは車体が素早く寝てくるため、セルフステアを待っている時間がない。そこでハンドルを自分から切り戻していく。この時点でほぼフルステア。

倒し込みつつステアリングを戻す

逆操舵からの倒し込みは車体が素早く寝てくるため、セルフステアを待っている時間がない。そこでハンドルを自分から切り戻していく。この時点でほぼフルステア。

発進では車体を前に進めるためにクラッチを多めにつなぐが、旋回中は逆にクラッチを切り気味にして車体を傾けていく。半クラの中でパワーを調整するのがポイント。

半クラでバンク角を調整

発進では車体を前に進めるためにクラッチを多めにつなぐが、旋回中は逆にクラッチを切り気味にして車体を傾けていく。半クラの中でパワーを調整するのがポイント。

発進したらすぐに後ろを振り返るぐらい頭を回して先を見る。バイクの傾きに対して上体は比較的起こしたリーンアウト的なフォームが特徴だ。

振り返るぐらい後ろを見る

発進したらすぐに後ろを振り返るぐらい頭を回して先を見る。バイクの傾きに対して上体は比較的起こしたリーンアウト的なフォームが特徴だ。

バイクの動きに遅れないように足は斜め前方に出していく。足は踵から着いて爪先で軽く地面を蹴るイメージだ。爪先を前輪と同じ方向に向けていくのがポイント。

爪先を曲がるほうに向ける

バイクの動きに遅れないように足は斜め前方に出していく。足は踵から着いて爪先で軽く地面を蹴るイメージだ。爪先を前輪と同じ方向に向けていくのがポイント。

夏用グローブは操作性を重視したタイプで、掌側は滑りにくい合成皮革、甲側はメッシュになっている。冬用は白い革製を使用。写真は千葉県警交通機動隊専用タイプ。

白バイ隊員の装備その③「グローブ」

夏用グローブは操作性を重視したタイプで、掌側は滑りにくい合成皮革、甲側はメッシュになっている。冬用は白い革製を使用。写真は千葉県警交通機動隊専用タイプ。

伝統的な牛革製の長靴タイプで夏冬兼用。グローブ同様、長時間の任務に耐えられるよう操作性と快適性を重視した作りになっている。サイドストライプが白バイの証。

白バイ隊員の装備その④「ブーツ」

伝統的な牛革製の長靴タイプで夏冬兼用。グローブ同様、長時間の任務に耐えられるよう操作性と快適性を重視した作りになっている。サイドストライプが白バイの証。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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