掲載日:2018年06月11日 トピックス
文/田口勝己 写真/モトメンテナンス編集部
記事提供/モトメンテナンス編集部
80年代の10年間、僕はスーパーカブを作っているバイクメーカーの四輪車生産技術部門に勤務していた。国内業務の多くは、鈴鹿製作所の四輪溶接課で新機種導入などを担当。そんな当時、社内事務所の向かいがスーパーカブやCS90の生産ラインで、組み立てられたスーパーカブがわんさか並び、次から次へと、担当者が完成車テストをしている様子を見ることができた。
国内では見たこともない輸出モデルが数多くあり、そんな中で一際目立っていたのが「パスポート」だった。目立つ黄色とポリバケツのような青色、少しだけ橙色寄りの赤色の3色ラインナップ。何故、パスポートが印象に残っていたかと言えば、ソリッドの原色カラーリングで、しかもツートーンのダブルシート!! 他のカブとはまったく違った印象で、なんだかとにかく新鮮だった。
海外業務が多くなり、イギリスへ長期出張したときには赤色のC100を数多く見掛けて驚いた。日本では解体屋さんでしか見なくなったC100が現役バリバリ!! レトロな街並みにも溶け込んでいましたね~。アメリカへの長期出張時には、休日になるとバイク屋さんや部品屋さんへ遊びに行き、そこでは何台ものパスポートと遭遇。
まさかスーパーカブに興味が湧くとは、当時の僕には思いも寄らないことですね。国産絶版車をアメリカから里帰りさせているバイク仲間からLINEが入った「タグチさん、パスポートがありますけど……」といった内容だった。同時に送られてきた写真数点とプライスタグを見て、ちょっと高いな、とは思ったものの、いつかはパスポートにも乗ってみたい、なんて思っていたので購入を決意。カワサキZ1やホンダCB750と一緒に、小さなパスポートをコンテナへ詰め込み「里帰り」をお願いしました。
実は、この黄色パスポート以前に、ポリバケツ色のパスポートを里帰りさせていたが、これがイマイチな程度だった。そんなリベンジもあって、今回、友人が見つけてきたのは黄色ボディで1980年生産車の初期型。何と実走行500マイルちょいしか走っていない、素晴らしいコンディション車だった。もしもこんな感じのZ1や砂型K0があったなら、大変なことになりますが、所詮、パスポートですからね……。