カワサキ モーターサイクル Zフェア 2018 「伝説の鼓動よ、再び。」 レポート Vol.02

掲載日:2018年02月08日 トピックス    

取材協力/株式会社カワサキモータースジャパン  文・写真/Hiroyuki Maeda

カワサキ モーターサイクル Zフェア 2018 「伝説の鼓動よ、再び。」 レポート Vol.02の画像

不変の人気を誇る、Z1シリーズのディティール!
そして、新型Z900RSの可能性。(前編)

クラシックバイク、旧車、絶版バイク、、、色々な言い方はありますが、日本におけるZ1、Z2シリーズの人気はまさに不動。当時のカワサキのコピーにも使用されていた、まさに「King Kawasaki」として、日本のクラシックバイク界の重鎮と言えるシリーズでしょう。

2月18日(日)まで神戸市のカワサキワールドで開催されているZフェアでは、カワサキが所有する歴代のマシンが初代Z1から展示されています。全てが当時のまま保管されている、完全に純正のモーターサイクルではなく、レストアされたものもあるそうですが、レアなフレームナンバー01の車体などもあり、じっくりと楽しむことのできる展示内容となっています。

今回のレポートはZシリーズがお好きな方からすると、当たり前のディテールのオンパレードだとは思いますが、そこまで馴染みのない方にとって、「ほぉ、ここが特徴なんだな」と思っていただけましたら幸いです。ぜひカワサキワールドのモーターサイクルZフェアに足を運んでみてください。

900 Super Fourという正式名称がありながら、日本では「Z1」として親しまれ、通称「火の玉カラー」と呼ばれるカラーリングを纏うアイコニックな1台。Z1は900という排気量と、DOHCを備え1972年に生まれました。日本では排気量の自主規制があったためZ2の登場を待つ必要がありましたが、OHVや2気筒の時代から完全なる「新時代」の幕開けを告げた歴史的モーターサイクルです。

Z1と一口に言っても、年式と共にZ1(72~73年)、Z1A(74年)、Z1B(75年)とアップデートされており、様々な違いがあります。そのため、探し求める場合はどの「Z1」かをよく熟知する必要があるようです。ちなみに、メーター周りに配されるインジケーターが横並びとなっているのも、このZ1の特徴の一つ。後継機のKZ900からは変更されるディテールです。

「火の玉カラー、ファイアーボール」と呼ばれる72~73年の初期型に用いられたカラー。丸みを活かしたラインの流れが秀逸ですね。ヨーロッパ向けには「イエローボール」と呼ばれる黄色と緑のカラーも。Z1Aでは「タイガーカラー」、Z1Bになると「玉虫カラー」とそれぞれにニックネームがあります。ニックネームが付けられるマシンは、それだけ愛されるマシンの証と言えるでしょう。

Z1ではフロントのディスクを取り付けるボルトが6つ配置されており、後のKZ900では4つになります。フロントフォークのアウターチューブにあるリフレクター部に、フェンダーを取り付ける部分が段付きでポコッとなっているものを「カマボコ型」と言い、こちらも初期Z1の特徴だそうです。ディスプレイされているマシンでも確認できますので覗いてみてください。

ブラックアウトされたエンジンが特徴の初期Z1。Z1Aからはアルミの鋳肌となるそうです。ロッカーボックスの一部がシルバーとなっているポイントは、新型Z900RSにも継承されていますね。迫力のインライン・フォーはまさにタイムレスな魅力です。Z1好きの方々の間では、初期型のエキゾーストパイプの曲げにも一家言あるとか……深すぎるZ1の世界です。

Z1のサイレンサーもこだわりのポイント。写真の角度が悪く、確認しづらいですがエンド部に縦のラインが入っているものが「縦ピン」呼ばれ、75年のZ1Bと750ccのZ2Bまで装着されているとのこと。さらに、刻印の有り無し、マフラー刻印などの違いも。ピン有り、無しで内部のバッフルの形状も違うそうです。

数々の名ディテールを持つZ1。現代版の制作にあたり、どれだけデザインを継承させるかという葛藤は、とてつもなく大きなものだったのでは……と推測してしまいます。決して「レトロ」ではない、21世紀のロードスポーツモデルとして産み落とされたZ900RS。900 Super Fourが人々に与えた「駆ける喜び」の感動は、時代を超えて引き継がれているのでしょう。

このフェアのスタッフとして、川崎重工やKTECのカワサキファミリーの方々がいらっしゃることは前回にも触れましたが、このZ900RSの開発リーダーを担当された萩尾さんの姿も。スタッフの方々は当番制とのことで、いつも会場にいらっしゃる訳ではないそうですが、Z900RSを前に丁寧にご説明いただきました。

1976年よりZ900としてフラッグシップ機となった後継モデル。初代の900 Super Fourから、このZ900までの総生産台数は10万台を越えているそうで、クラシックバイクとしては玉数も多く、世代を超えたファンに根強く愛される要因と言えるでしょう。

Z900のイントロダクションより。「The King is still the King!」というフレーズがインパクト大! 文中にも「King」という単語を繰り返し用い、カワサキの誇りが垣間見れる気がします。

ツインストライプの細かな意匠と、深いグリーンのタンクを備えたZ900。タンクのキャップは鍵付きとなっています。

メーター周りのインジケーターは、Z900よりメーター間に縦に並ぶようになりました。

Z1ではフロントフォークに取り付けられていたリフレクターが、Z900では変更され、タンクの下へと移動されました。フレームのダウンチューブの補強ガセットもアップデートされた箇所。

サイドカバーの形状は少しシンプルにリファイン。キックもまだ装着されています。また、リアサスペンションのリフレクターがなくなっていることが確認できます。このZ1とZ900との違いも、奥深いものですね。

こちらがZ1のサイドカバー。キャブレターからサイドカバーへと接続するラウンドされたラバーの形状や、ガソリンコックに合わせ、豊かな曲線で仕上げられています。ちなみに、ガソリンコックや、キャブレターの仕様もZ1ならではのチェックポイントだそうです。

開館間もなく見学されていたロンドン北部にお住まいのイギリス人の方。観光で神戸に来られたそうです。「ちょっと柵の中に入って、バイクと写真撮って良いのかな?」と聞かれ、心苦しい返事をしました。もう少し近寄れたらな……というのはバイク好きの方であれば思うかもしれません。Kawasakiさん、ぜひ一つの意見としてご検討ください!

こちらは750RS、通称「Z2」の後継として1976年に登場したZ750Fourのカタログ。「異論はあるまい。精緻(せいち)なるメカニズムと華麗なるシルエット。限界の壁を破り、また自らが壁になった。これが現代のモーターサイクル、先駆車。」というコピーの鋭さは、ライダーの胸にダイレクトに届いたのでしょう。機械と人間との一体感を追い求めるようなスタンスを感じます。

輸出用だったZ1と比べ、国内仕様だったということから生産台数が少ないZ2。そのこともあり、通称「ゼッツー」は旧車の中でも特別な存在となりました。それゆえに、ゼッツーという呼び名をどのモデルまで適用するか……と、詳しい方々の間では話題に上ることもあるそうです。

Z1同様に、先代と比べるとテールランプの形状が四角くなり、テールカウルも変更されました。サイレンサーのエンド部の、通称「縦ピン」も無くなりました。

穴が開くほど展示を眺めるエンスージアストにとっては何時間でも滞在できる空間です。ちなみに筆者は隣の常設展も含めると、5時間以上滞在しました。

展示車両はZ900LTDでしたが、翌年のZ1000LTDのカタログイメージが展示されていました。リアタイアを16インチとし、たっぷりとしたシートを備えたクルーザータイプとして生まれたLTD。海外のサイトでは「日本のメーカーが初めて手掛けたカスタムバイク」という記述も見られました。

Z900LTDのモーリス製キャストホイールはカワサキが別注したもので、当時のレース用のものと比べアルミの比率が高く、キャスティングがしやすく、また腐食にも強いものだったそうです。

キング&クイーンと呼ばれる肉厚なシート。16インチのキャストホイールと相まって、19インチ&18インチのレイアウトを持つスタンダードなモデルと比べるとファンキーな出で立ちですね。

カスタムプロジェクト「ビヨンドZ(Beyond Z)」として、Z900RSのお披露目と共に展示された個性あふれるスペシャリストによる3台のマシンも展示されています。ヨーロッパのハイエンドなモーターサイクルを、さらにプレミアムなものへと手がけるモトコルセによるZ900RSは、代表の近藤氏によると「過去の夢の具現化」がキーワードだそうです。

Zとモトコルセの融合に注力したというZ900RSは、CGにて数十種類のスタイリングが検討されました。タンクのクロームラインはアルミシートから切り出され、熟練工の手作業によるものだとか。心血を注ぎ、生み出された作品Z900RSを大きく変えることなく、モトコルセ流の極みにブラッシュアップされたマシン。

Z系の絶版パーツの製造や販売を得意とするドレミコレクションも、ビヨンドZに参加。70年代後半にアメリカで活躍したZ1レーサーを念頭に、Z1ならではのボリューム感やディテールをZ900RSに吹き込み、仕上げられました。フレームのアンダーチューブに見せかけたエンジンガード、Z2タイプのポイントカバーの装着などツボを抑えたカスタムはさすが。

ゼファー用のZ2タイプのテールとサイドカバーを装着し、往年の雰囲気を色濃く演出。前後のフェンダーも敢えてスチール製とし、重厚な雰囲気が表現されています。当時、世界のサーキットでZ1が活躍していた姿は、ドレミコレクション代表の武氏にとって衝撃的だったそうです。

Z1の代表的なディテールの一つである、エンド部に「縦ピン」がある4本出しのマフラーが再現されています。Z900RSのノーマルマフラーを分解し、その中身を内部に組み込み、新たな4本出しとして製作したという手間のかかった大事な箇所。当時の音質を表現するため、素材は敢えてスチール。

ミュージアム前はこのような気持ちの良い光景が広がり、ポートタワーも目の前。ハーバーランドも至近なので、ぜひ近隣の散策もお楽しみください。

こちらは「Zオーナーズ写真展」として、あなたの愛車(Zシリーズのみ)の写真が展示される催しです。詳しくは前回のレポートをご覧ください。どれだけ埋め尽くされるのか、楽しみですね。

今回だけでは、まだまだご紹介したいZ1ファミリーを網羅できなかったので、続きは後編にて。次回はZ1-R、Z1300を中心にレポートをお届けしましょう! そしてレポートの最終話は、カワサキの歴史に触れる常設展についてご紹介します。

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