マン島TT クラス4連覇へ。無限「神電 六」の挑戦

掲載日:2017年05月23日 トピックス    

取材協力/無限  取材・写真・文/山下 剛

神電 六を走らせる二人のTTトップライダー。左は昨年はマン島TTを欠場し、2年ぶりの参戦となるスターライダー、ガイ・マーチン選手。右はジョン・マクギネス選手。無限がマン島TT挑戦をはじめた2012年からずっとライダーを務めている。

2017年マン島TTで4連覇を狙う「TEAM無限」
同年4月に袖ヶ浦実施された公開テストをレポート

無限のマン島TTレース挑戦は2017年で6年目となり、自社開発マシン「神電」も6代目となった。2012年と2013年は2位、2014年からは連覇しており、今年は4連覇をかけた挑戦となる。

無限によれば「神電 六」は、伍から大きなアップデートはなく、スペックだけみれば車重がわずか2kg軽くなっただけだ。開発ライダーを務めた宮城光氏は「今年は大きなことをしていない。各部を見直してすべてがスムーズに動作するようにしただけ」と話す。

しかしその変化はガイ・マーチン選手が神電の感触を掴むべく袖ヶ浦フォレストレースウェイを走らせている、その走行音に表れていた。モーターが発する「キィーーーーン」という特有の高周波がそれまでの神電と違うのだ。ストレートに表現すればカッコいいのだ。とてつもない能力を秘めた機械が放つ音という印象を受けるのである。濁りのない澄んだ音なのだ。まるで音を作り込んだように思えるほどだ。その点を宮城氏に確かめると「音は開発目標に入っていない。あくまで各部を丁寧に調整した結果、ああいう音になったというだけ」との答えが返ってきた。

神電は伍ですでに完成の域にあり、熟成させたマシンが六である、と考えて差し支えなさそうだ。無限には勝算が見えているのだろう。

マン島TTレース、TT-ZERO決勝は2017年6月7日16時20分(現地時間)にスタート予定だ。

※ジョン・マクギネス選手は、このテスト走行後の2017年5月11日に、北アイルランドの公道を使って行われるレース「ノースウェスト200」の予選走行中の転倒で負傷し、2017年のマン島TTレース TTゼロチャレンジクラスに出場できなくなりました。無限では、ジョン・マクギネス選手に代わり、2016年のTTゼロチャレンジクラスで優勝したブルース・アンスティ選手の起用を決定しました。(2017年5月23日無限発表リリースから抜粋)

フォトTOPICS(写真点数/7枚)

01ガイ・マーチン選手の走り。午前中から積極的にコースに出ていき、感触を確かめるように次第にペースアップしていった。マン島TT以外にもパイクスピーク、ボンネビルとチャレンジングなレースに参戦し、2年ぶりにTTへ復帰。「素晴らしい体制のチームに入れて夢のようだ」と語った。

02午前中は前日の雨によるウェットパッチが残っていたため、ジョン・マクギネス選手は来日直前に負傷した左手首の様子を見つつ、路面が乾いた午後から走行開始。「まだ乗り込めていないから断言できないが、今年のマシンはスムーズで乗りやすくなった」とコメントした。

03神電の開発ライダーを務めたのは元GPライダーの宮城光氏。コントロールタワーの屋上に上がり、両選手の走りをじっと観察しながらラップタイムを計測し、マシンの仕上がりを確認していた。今年はチームに帯同してマン島に渡る予定とのことだ。

04走行を控えて最終調整中の神電 六。充電中はオーバーヒートを防ぐため、バッテリーケース内に直接冷風を送って冷却している。フレーム構造はフルカーボンで、バッテリーケースが構造体となるモノコックだ。

05フェアリングは神電 六で大きく変更を受けた数少ない部分だ。テールカウルはトンネル状になっており、走行風を受け流す構造になっている。テールカウル上部にある赤いスイッチは緊急停止ボタンで、レギュレーションにより装着が義務づけられている。

06アンダーカウル後端部は波状にカットされている。先立って無限が公表した資料写真ではこのような形状になっておらず、公開テストに合わせて導入されたものと思われる。これは航空機からフィードバックした技術で、高い整流効果を発揮するのだという。ボーイング787のジェットエンジン部に同様の形状が見られる。

07メーターはフルカラーTFT液晶を装備しており、走行速度、モーター回転数、インバーター/バッテリー/モーターの各温度、スロットル開度などを表示できる仕様となっている。

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