掲載日:2016年02月08日 トピックス
記事提供/アウトライダー編集部
文/野岸“ねぎ”泰之 写真/鳴海 武史
※この記事は雑誌『アウトライダー』の連載企画『ツーハピ・ラボ』に掲載された内容を再編集したものです
※記事の内容は雑誌掲載当時のものです(アウトライダー vol.54 2012年5月11日発売)
諸君はロケットストーブなるものを知っておるかのぅ? ま、簡単に言えば煙突効果で劇的に燃焼効率を高めたストーブのことじゃ。少しの薪で絶大な火力を誇り、灰もススもほとんど出ないことから、巷でちょっと流行っているらしい。それに毒された所員002号が「カッコイイのがあるんですよ、絶対欲しい~」と連呼するもんじゃから、それならばワシが自作してやろう、と思い立ったのじゃ。
研究所員002号がホレたのはイギリス製の『DK ROCKET STOVE』で、鉄の角パイプL型構造が確かに美しい。しかし当ラボではとにかく安さと、バイクでも何とか持ち運べるよう、分割できる点にこだわった。秘密の資材センターで3時間以上も素材選びにあれこれ悩んだ結果、煙突のパーツを組み合わせて作ることに決定したのじゃ。元のイメージとまったく違うモドキじゃと? フン、これがまたB級っぽくていいんじゃよ。とにかく手作りしてみることに意義があるのじゃ、フォッフォッ。
実際の製作作業は、切った張った穴開けた、の工作レベル。見栄えは悪いが、めでたく完成したこいつを“NG(ネギー)ロケットストーブ”と命名したゾ。さぁて、燃焼実験に移るとするかの?。
まずは材料選びからスタートじゃ。ホームセンターという名の資材庫でな。財政難の当ラボでは、見かけのカッコ良さより実利を優先するのじゃ。
煙突のパーツと内部の通気を確保する板、脚部のパーツなど、全部でたったの3,840円、安いじゃろ~!!
90度に曲がったパーツはその形からか「エビ」と呼ばれる。切込みを入れて接合するのじゃ。
ゴトク部分は穴開きの曲げ板を挟み込む仕様じゃ。
脚部はU字金具をアルミ板で挟み込んで固定。地面から浮かすことが肝心じゃ。
燃焼室には空気の通り道を確保するため、スチールのプレートを仕込んだ。
典型的なロケットストーブというのは、L字型のパイプの横部分を燃焼室とし、縦の部分はまさに煙突なのじゃ。本来は煙突部分を断熱することで、排気がより高熱になり燃焼効率がアップする。NGロケットストーブは断熱までは行なわないが、煙突部と燃焼室、そして燃料投入口の3つで分割できるようなスペシャル設計なのじゃ。
さっそく研究所特設の実験場で組み立て、脇の投入口から小枝などの燃えやすい薪を放り込み、着火。少し燃え出したら、横のパイプの奥にどんどん薪を押し込んでやる。するとどうじゃ、どこからともなく「クゥオォォ~」という音がしだした。煙突部を上から覗いてみると、よく燃えている。「ホレみろ、成功じゃ!」。しかしすぐに音が止まり炎も見えなくなった。「おかしいゾ、失敗なのか?」。見ると、ごく短時間なのに薪がすべて燃え尽きてしまっていたのじゃ。急ごしらえなのに、ものすごい燃焼効率じゃぞ。
そうとわかれば、あとは薪をジャンジャン放り込むのみ。するとどうじゃ、「シュババ~、ゴォォォ~」という、まさにロケットのような音を発し始めたゾ。燃料投入口付近では木々が勢いよく燃えているが、炎が上に出ず、内側に吸い込まれるという不思議な燃え方じゃ。煙突を覗くと、炎が横の燃焼室から上に向かって、まるで竜巻のように渦を巻き美しく伸びておる。「す、すごいです所長っ」、002号よ、そんなに興奮するでない。ツーハピ・ラボにかかればこんなのは朝飯前なのじゃ、ファハハ。さて、次回もライダーの幸福のために、がんばるかのぅ~。
大小の枝を集めたら実験開始。このストーブ、キャンプ用の椅子にちょうどいい高さじゃろ!?
曲がった「エビ」部分から、まずは小枝を投入。着火は若干コツを要す。
火が付いたら薪を横に押し込む。燃焼が進むと、縦に差し込んだ薪が勝手に落下してどんどん自動的に燃える。
正直なところ、ここまで強力に燃えるとは予想していなかったゾ。自分の才能に嫉妬するわい。ロケット的な燃焼音とともに、炎が真横~上に噴き出ている。見飽きないのぅ。
約500ccの水を沸かすのにおよそ8分、意外と時間がかかるな。ゴトクをもう少し下げて安定させるなど改良の余地ありじゃ。