カワサキ Z 45周年の今その原点とシリーズの各車両を知る その1

掲載日:2018年06月06日 トピックス    

写真・文/ロードライダー編集部
記事提供/ロードライダー編集部
※この記事は『LEGEND BIKE SERIES02 KAWASAKI Z SERIES』に掲載された内容を再編集したものです。

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現代バイクの基本を築いたカワサキ900スーパー4=モデルZ1が登場して2018年で45年が経つ。未だに古さを感じさせず、新しいバイクの範となり逆に新しい手法の取り込みやカスタム化で進化する。そんなZシリーズの歴史を見る。

以降のバイクのベンチマークとなった
Zの立ち位置をキーワードで紐解く

750を大きく超える903ccという排気量にそれを鈍重に思わせない軽快なハンドリングを持たせて1973年型として発表されたカワサキのZ1は、バイク界を大きく変え以後のバイクの基本さえ作った。各種あるキーワードから、その素性を知る。

ザッパーを軸に7年の
時間をかけ世界を席巻

“超える”“超越”。1967年、つまり半世紀前に、世界のすべてを超えようと設計が始まった4ストローク4気筒の大排気量エンジン。構想当初名前もなかったそれは、まず“N600”、後に有名な“ニューヨークステーキ”というコードネームを経て、最終的に900スーパー4、モデルZ1(ゼットワン、ズィーワン)と称されることとなる。Z1は、始まりにして究極。そんな意味を内包するものでもあった。

欧州を中心にしたOHVツイン、650ccから、大排気量4スト重量車へと時代は必ず変わる。そのためにDOHCヘッドで4気筒、750ccが必要だと社内から声が挙がる。カワサキも当時から最重要市場だったアメリカを重視し、入念に市場調査を行う。大前提となったのは「軽くて加速のいい“ザッパー”であること」だった。このザッパー=ZAPPERは、風を切る音=ZAPから生まれた当時の俗語で、小気味よい速さや軽快感を表すにはぴったりの言葉だった。

そのために排気量は750~850cc最高出力70ps、最高速度120mph(約192km/h)、SS1/4マイル(0→400m加速)12.9秒という数字が集まり、これを形にすることとなった。

1968年6月の1次試作エンジンは既に当初の目標値だったリッター100psを軽くクリアし、この時点でビッグエンジンの重厚さを出す直立シリンダー、対称の美しさとスペースの問題を解決するギア式1次減速という、量産までつながるメカデザインがなされていた。コード番号は“N600”とつけられた。

開発途中、1968年の東京モーターショーに現れたホンダCB750Four(SOHC)に量産車初の直4の座は奪われる。だが、むしろCBが大排気量4気筒の市場の下作りをしたと取って、改めて1969年10月に、CBを超える900ccの排気量が決まる。

開発コードは1970年春に“T103”へと変わり、アメリカで行うと決められたデザインが行われたが、不調となる。これを受けて明石側でデザインが進められる。この時に、全体につながりのあるオールインワンデザインが加えられる。ザッパーの語は、3S=スリム、スリーク、セクシーというポイントを得て、飽きの来ない機能美に昇華される。

ダブルクレードルフレームと軽快なハンドリング。さらに整備性の高さ、スープアップへの余裕までを盛り込み、細部仕様を確定し、1972年9月には1973年型としての900スーパー4、モデルZ1が送り出され、歴史が変わることになる。

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Z1開発当時に既にDOHCも4気筒もあったが、直4ではなかった。DOHCで4気筒、大排気量を提唱したのはカワサキ・エンジニアグループの稲村暁一さんで、試作段階から成功の片鱗を見せた。カタログではスムーズで静か、環境に優しく、力強く、外部オイルラインのないきれいな造形と解説。

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白地に紺文字で“900スーパー4、モデルZ1”と書いた初代カタログの表紙。900スーパー4が車名で、Z1は型式名だった。この記事のメインカットのZはこのカタログの中面で、右肩に同様の車名が入る。an expression of confidenceはそのまま読めば信頼の表現だが“自信あり”と読んでいいだろう。900cc、直4の超越モデル。その始まりにして究極を“モデルZ1”として表した。上写真のエンジンアップ、下写真のマフラーアップも中核となったエンジンへ目を向かせつつ詳細を説明している。

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ファイヤーボールあるいは火の玉。初期型=1973年型Z1のカラーリングはキャンディブラウンのベース色にオレンジを配したもの。内プレス式の燃料タンクに施された配色の印象から海外で“ファイヤーボール”と呼ばれ、国内でもZ2(750RS)が同色で、和訳した“火の玉”が通称となった。北米市場では1972年の9月にこの色で先行販売され、欧州は約2カ月後に販売。この時にキャンディイエロー×ゴールドの、いわゆるイエローボールが限定色として設定された。1974年型Z1(Z1A)で採用されたストライプパターンは配色とラインの印象から“トラ”(タイガー)パターンと呼ばれ、年式の識別にも使われた。

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長期展開も視野に入れたZには、飽きの来ないデザインも大きな要素となった。当初のアメリカ製デザインは廃案となり、日本・明石で起こし直される。そのデザインチーフを務めたのが多田憲正さん。氏が当時好んでいた、BSAの3気筒が持っていた全体につながり感のあるオールインワンスタイルに、アメリカで支持されるティアドロップタンクを組み合わせ、テールカウルも加えて3S=スリム、スリーク、セクシー=細身で流れるような、魅惑的な要素でまとめた。右写真は最終モックアップだが、立体化した初期段階からほぼこの形だった。

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マスターピース=Masterpieceは代表作や傑作、あるいは腕試しの作品という意味。カタログでは“経験あるライダーへ”誰にでも向けたわけではなく、究極のパフォーマンスがある。だから(読んだ)あなたがそれを引き出す余裕と技術を持つ経験あるライダーなら、最高の体験をさせてくれる、とある。傑作であることは分かった。楽しめるかは腕にかかっているというある種のくすぐりが、冒頭のマスターピースとして表現された。

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