オフ走行の基礎テクニック

【Vol.17】サンドを楽しむ基本テク~コーナリング~

掲載日:2010年07月13日 オフロードライテク講座オフ走行の基礎テクニック    

Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。

サンドサーフィンを楽しもう!

前回の G RIDE で、サンド路面の発進と停止を練習したクラモチ。慣れない路面を走ったことで、いつも以上に体力を消耗していた。うまくバランスをとることが出来ず、マシンをスムーズに加速させられなかったのが原因だ。

しかし「マシンを直立させて、吹けきる前にシフトアップしていく」という三橋さんのアドバイスを受けて練習していくと、かなりスムーズに発進できるようになっていった。そして、停止は「ハンドルを真っすぐにして、腰を引いてリアにGをかけ、マシン全体を沈めるようにする」というアドバイスを守ることで、バランスを崩すことなく確実に止まれるようになった。

サンド走行初体験のクラモチだったが、以前から砂丘越えに興味があったと言うだけあって、今回はいつも以上にマスターするのが速い。

クラモチ「三橋さん。サンド路面でコーナリングすると、ブワーっと砂煙が巻き上がりますよね。あれカッコイイので、ぜひやり方を教えてください」

三橋「あの砂煙はカッコのためにやってるんじゃないんだよ。サンド路面でのコーナリングはアクセルを開けて曲がっていくのがポイントなんだ。だからコーナリングすれば必然的に砂煙が巻き上がるというわけ」

クラモチ「そうだったんですか。僕は必要以上にアクセルを開けていて、見せるためのテクニックだと思っていました。じゃあ、コツを聞いたので早速やってみます」

と、憧れのテクニックだけにマッハの食いつきを見せるクラモチ。しかし、颯爽とコーナリングに挑戦してみるも、コーナリング途中でフロントタイヤが路面に引っかかってしまったり、コーナー出口でリアタイヤがサンドに埋まってしまったりと、ギクシャクした走りに終始してしまった。

三橋「開けて曲がるってアドバイスしたでしょ? これはコーナー進入から脱出まで、ずっとアクセルを開けておくということなんだよ。クラモチ君はコーナーの進入でブレーキングしたら、アクセルを開けずにハンドルを切って曲がろうとしている。だからフロントに砂の抵抗がかかり、フロントタイヤが路面に引っかかってしまうんだ。それは急ブレーキをかけたのと同じような状況だから、体もフロント側へ行ってしまう。そして、そのままのポジションでアクセルだけ開けているからリアにGがかからず、リアタイヤのグリップ力を引き出すこともできない。だから、アッという間にリアタイヤが埋まってしまうんだ」

クラモチ「自分ではアクセルを開けているつもりだったんですが…」

三橋「コーナー出口近くでは開けているよ。でも進入からクリッピングまでは開いてない。それにマシンも倒してないし、ハンドルを切って曲がろうとしているから、フロントタイヤが砂の抵抗をもろに受けてしまっているんだ。だからフラフラしたり、コーナー途中で止まってしまいアクセルターンで向きを変えるようになってしまうんだ」

クラモチ「ハンドルを切っているつもりはなかったんですけど、実際は切れていたんですね」

三橋「うまく走れないときは、どこかにミスの原因が必ずあるんだ。だからどこでミスをしているのかを把握することが、ライディングスキル向上の第一歩になるんだ。原因が分かったんだから練習あるのみ!」

サンド路面のコーナリングのポイントは “曲がりたい方向にマシンを傾けること”、“アクセルを開けて曲がること” この2つだ。つまり通常のコーナリングと変わらない。では、なぜサンド路面になると途端に難しくなるかと言うと、それは砂の抵抗が大きくフロントタイヤが振られやすいからだ。

たとえばフラットな路面であれば、アクセルを閉じたままでも惰性でマシンの向きを変えていける。もちろんアクセルを開けていないのでトラクションが得られず、フラフラとした不安定なコーナリングになってしまう。しかしサンド路面で同じことをやると、砂から受ける抵抗が大きく、フラフラする間もなく一気にフルブレーキングした状態になってしまう。だから急に止まってしまったり、ハンドルが切れすぎてフロントタイヤが砂に埋もれてしまったりするのだ。

三橋「クラモチ君は、コーナーは自分の曲がれるスピードで進入するという基本は出来ているけれど、そこまでなんだ。そのあとにアクセルを開けていないから、マシンが進まずコーナー途中で止まってしまうんだ。それからマシンを全然傾けていないよね。最初は傾けるのが怖いかもしれないけど、サンドなら転けても痛くないから、思いきってやってごらん」

サンド路面のコーナリングは基本に忠実でないとターンしていけない。言い換えれば、サンドのコーナリングが出来ないのは、基本が出来てないことの表れでもある。

クラモチ「ごまかしが利かないから、自分の悪い部分がはっきり分かってしまいますね。マシンを傾ける、アクセルを開けて曲がるを確認しながらやってみます」

何度か失敗を繰り返していくうちに、コーナーに合ったマシンの傾け具合とアクセル開度が見つかってきた。

クラモチ「だいぶスムーズになったと思うんですけど、どうですか?」

三橋「コーナリングがちゃんと一連の流れになっているよ。少しだけ腰を引いて、リアにGをかけられるポジションに座っておくと、もっとトラクションをかけられるようになるよ」

そして、練習することさらに数回。ついにきれいな砂煙をあげてコーナリング出来るようになった!

コーナリングの基本が出来なければサンドでのコーナリングも出来ない

クラモチのダメダメな例

コーナー手前でブレーキング。

コーナー手前でブレーキング。

惰性で進入してきて、ハンドルを切って曲がろうとしている。マシンは傾いていない。

惰性で進入してきて、ハンドルを切って曲がろうとしている。マシンは傾いていない。

惰性で進入してきて、ハンドルを切って曲がろうとしている。マシンは傾いていない。

なんとかマシンの向きは変わったが、アクセルが開いてないのでコーナリングスピードが遅すぎる。

なんとかマシンの向きは変わったが、アクセルが開いてないのでコーナリングスピードが遅すぎる。

フロントが砂の抵抗を受けている。

フロントが砂の抵抗を受けている。

そしてハンドルが切れ込んでいきバランスが崩れてしまった。

そしてハンドルが切れ込んでいきバランスが崩れてしまった。

無理矢理アクセルを開けていったが、時既に遅くリアタイヤは埋まっていくばかり…。

無理矢理アクセルを開けていったが、時既に遅くリアタイヤは埋まっていくばかり…。

曲がりたい方向にマシンを傾け アクセルを開け続けてターンする

三橋センセイのお手本

早めのシフトアップでしっかり加速しておく。

早めのシフトアップでしっかり加速しておく。

アクセルを開けてコーナリングするために、コーナー手前で自分が曲がれるスピードまで減速しておく。コーナー直前で減速しようとすると急ブレーキ状態になりやすく、バランスを崩す原因になる。急な操作・動作を避けるのもスムーズなコーナリングには欠かせないポイントだ。

アクセルを開けてコーナリングするために、コーナー手前で自分が曲がれるスピードまで減速しておく。コーナー直前で減速しようとすると急ブレーキ状態になりやすく、バランスを崩す原因になる。急な操作・動作を避けるのもスムーズなコーナリングには欠かせないポイントだ。

アクセルを戻すとフロントにGがかかるので、少し腰を引いた位置に座ってリアにGをかけ、フロントとリアが同時に沈むようにバランスを取る。曲がりたい方向へしっかりとマシンを傾けていく。このときも少し腰を引いた位置をキープしてリアにGをかけ続け、リアタイヤのグリップ力がしっかり発揮されるようにする。ハンドルは切らず、アクセルを開け続けていることもポイントになる

アクセルを戻すとフロントにGがかかるので、少し腰を引いた位置に座ってリアにGをかけ、フロントとリアが同時に沈むようにバランスを取る。曲がりたい方向へしっかりとマシンを傾けていく。このときも少し腰を引いた位置をキープしてリアにGをかけ続け、リアタイヤのグリップ力がしっかり発揮されるようにする。ハンドルは切らず、アクセルを開け続けていることもポイントになる

コーナーへの進入を正面から見ると、マシンを傾けているのがよく分かる。アウト側のヒザ(この場合は右ヒザ)でマシンをはたき込むような感じにすると、傾けやすくなる。目線は曲がりたい方向へ向けておく。

コーナーへの進入を正面から見ると、マシンを傾けているのがよく分かる。アウト側のヒザ(この場合は右ヒザ)でマシンをはたき込むような感じにすると、傾けやすくなる。目線は曲がりたい方向へ向けておく。

リア荷重したまま、アクセルを開けてマシンの向きを変えていく。

リア荷重したまま、アクセルを開けてマシンの向きを変えていく。

リア荷重したまま、アクセルを開けてマシンの向きを変えていく。

マシンを傾けても、アクセルをしっかり開けていればイン側に倒れ込んでいくことはない。また、ハンドルを切っていないのに、マシンの向きがきちんと変わっているのがよく分かる。猫背の姿勢でリアにGをかけ、リアタイヤを確実にトラクションさせていこう。

マシンを傾けても、アクセルをしっかり開けていればイン側に倒れ込んでいくことはない。また、ハンドルを切っていないのに、マシンの向きがきちんと変わっているのがよく分かる。猫背の姿勢でリアにGをかけ、リアタイヤを確実にトラクションさせていこう。

コーナー出口が見えてきたら、マシンを起こしていく。

コーナー出口が見えてきたら、マシンを起こしていく。

早めのシフトアップで加速していき、コーナーをクリア。コーナリングの基本を再確認しながら練習しよう。

早めのシフトアップで加速していき、コーナーをクリア。コーナリングの基本を再確認しながら練習しよう。

三橋 淳
インストラクター
三橋 淳

2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。

クラモチ
生徒
クラモチ

GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。

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