オフ走行の基礎テクニック

【Vol.10】障害をスマートに乗り越える“抜重”テク

掲載日:2009年12月08日 オフロードライテク講座オフ走行の基礎テクニック    

Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。

マシンにかかっている荷重を抜く

リア荷重のコツをつかんだクラモチは、さっそくそのテクニックを使おうと段差に挑んでいった。背中を丸めてリアサスにGをかけたままにしているので、リアタイヤが路面をしっかりグリップし、フロントタイヤはフワッと浮き上がって段差を乗り越えた。このままあっさりクリアするかと思われた瞬間、バイクは竿立ち状態になり段差からまくれ上がってしまった。

クラモチ「フロントタイヤが段差を越えたから行けると思ったのに、次の瞬間には竿立ちになってました。いやぁ、ビビリました」

と涙目のクラモチ。

三橋「ボディアクションでリア荷重してグリップを得て、さらにフロントアップも出来ているから、アプローチは満点だよ。以前は偶然や勢いでの成功が多かったけれど、今はマシンコントロールしているから格段に進歩しているよ。この段差をクリアするには抜重が必要なんだけど、そのやり方はまだ教えてないから失敗しても仕方ない。それよりもセクションに挑んでいく姿勢がいいよね」

クラモチ「リア荷重でリアタイヤを路面にグリップさせられて、フロントアップも出来るようになったら、ダートを走るのが楽しくなりました。セクションも前より怖くないんです」

三橋「走れるエリアが広がると楽しくなるよね。今回の抜重をマスターすれば、走れるエリアがさらに広がるよ。リア荷重で縮めたリアサスが元に戻ろうとする動きをライダーが妨げないこと。これが抜重のポイントだけど、G RIDE流抜重は簡単にできるのもポイントなんだ」

未知の地形を走破するのがクロスカントリー・ライディングの醍醐味だけど、トライアルと違うのは足を着いてもOKということ。

セクションを確実に走破するには、積極的に足を着いていく場合もある。その代表例ともいえるのが、今回の段差をクリアするための抜重だ。

三橋「フロントタイヤが段差を乗り越えたら、両足を段差の角に着く。そしてアクセルは開けたままにして、両足で角を蹴り出すようにする。この動作だけで抜重ができるんだ」

フロントアップしなければ、フロントタイヤは障害を乗り越えられない。フロントタイヤを障害の上に載せることが出来ても、リア荷重したままではリアタイヤが段差に引っかかってしまう。リアタイヤは路面をグリップしたままになり、バイクは障害を垂直に上ろうとしてしまうので、このバイクが垂直に上ろうとする力を、障害を乗り越える方向に変えてあげるライダーのボディアクションが、抜重なのだ。縮めたリアサスは伸びてくるが、この伸びてくる動きを妨げないことが抜重の極意。荷重を抜くこと=抜重ということを覚えておこう。

フロントアップしなければ、フロントタイヤは障害を乗り越えられない。フロントタイヤを障害の上に載せることが出来ても、リア荷重したままではリアタイヤが段差に引っかかってしまう。リアタイヤは路面をグリップしたままになり、バイクは障害を垂直に上ろうとしてしまうので、このバイクが垂直に上ろうとする力を、障害を乗り越える方向に変えてあげるライダーのボディアクションが、抜重なのだ。縮めたリアサスは伸びてくるが、この伸びてくる動きを妨げないことが抜重の極意。荷重を抜くこと=抜重ということを覚えておこう。

リアサスを縮めたままにしてリアタイヤのグリップを得ることをリア荷重と言う。しっかりリア荷重してやれば、マディやヒルクライムを確実に走破出来るだけでなく、フロントアップ出来るという副産物も生まれる。一方、抜重はリアサスが元に戻ろうと伸びてくる動きを妨げないこと。つまり、荷重してない状態では抜重は出来ないということだ。セクションや自然の地形を走破するには、まず荷重をマスターしておくことが大前提となる。

リアサスを縮めたままにしてリアタイヤのグリップを得ることをリア荷重と言う。しっかりリア荷重してやれば、マディやヒルクライムを確実に走破出来るだけでなく、フロントアップ出来るという副産物も生まれる。一方、抜重はリアサスが元に戻ろうと伸びてくる動きを妨げないこと。つまり、荷重してない状態では抜重は出来ないということだ。セクションや自然の地形を走破するには、まず荷重をマスターしておくことが大前提となる。

クラモチ「え? 足を着いて蹴り出すだけでいいんですか?」

と、今までは足を着かないテクニックが多かったのでクラモチは目から鱗のようだ。

三橋「リアサスを縮めているリア荷重を抜いてあげることで、リアサスが元に戻ろうとする力を使うんだ。リアサスは円運動をするから、この力を使えばバイクは真上に行かず前に進むようになる。と、理屈で考えると難しくなるけど、リアタイヤを路面に押しつけるのではなく、路面から跳ね上げるような動きをイメージすると分かりやすいかな。要は、リアサスが戻る動きをライダーが妨げないことがポイントなんだ。で、クラモチ君に質問だけど、足を着いて蹴り出したとき、体はどうなっているか分かる?」

クラモチ「あ! 背筋がピンと伸びて、お尻もシートから浮き上がっています。そっか。荷重は背中を丸めてシートを押していたけど、抜重はシートから飛び上がるような感じなんですね。これならリアタイヤが段差に当たったときの衝撃で体が跳ね上げられることもなくなりますね」

三橋「Gは路面をグリップさせるだけでなく、バイクの進む方向もコントロールできる。荷重と抜重をマスターすれば、平面だけでなく立体的な動きもできる。ということは、立体的なセクションつまり自然の地形を走破できるようになるんだ」

ありがちなミステイク もし抜重ができないと…

【左】しっかりとリア荷重しているのでフロントアップしたまま段差にアプローチしているクラモチ。フロントタイヤが段差に引っかからないので、ここまでは満点と言える。【中】フロントタイヤが段差を乗り越えた後もリア荷重しているので、リアサスは縮んだまま。その結果、リアタイヤが段差の路面をしっかりグリップし、バイクが垂直になっている。【右】しっかりグリップしているとはいえ重力に逆らうことは出来ないので、バイクが段差からめくれてしまいロケット発射状態に。リア荷重を抜くことが成功のカギとなる。

しっかりとリア荷重しているのでフロントアップしたまま段差にアプローチしているクラモチ。フロントタイヤが段差に引っかからないので、ここまでは満点と言える。

フロントタイヤが段差を乗り越えた後もリア荷重しているので、リアサスは縮んだまま。その結果、リアタイヤが段差の路面をしっかりグリップし、バイクが垂直になっている。

しっかりグリップしているとはいえ重力に逆らうことは出来ないので、バイクが段差からめくれてしまいロケット発射状態に。リア荷重を抜くことが成功のカギとなる。

縮んだサスを伸びやすくするため 足を着いて荷重を100%抜く

【左】ギアは1速。段差に対して真っすぐにアプローチしていこう。【中】アクセルを開けていき、クラッチをスッとつなぐと同時に背中を猫背のように丸めてリア荷重。リアタイヤが路面をしっかりグリップしているので、フロントタイヤがフワッと浮き上がっている。【右】フロントアップしているのでフロントタイヤは段差を難なくクリア。

ギアは1速。段差に対して真っすぐにアプローチしていこう。

アクセルを開けていき、クラッチをスッとつなぐと同時に背中を猫背のように丸めてリア荷重。リアタイヤが路面をしっかりグリップしているので、フロントタイヤがフワッと浮き上がっている。

フロントアップしているのでフロントタイヤは段差を難なくクリア。

【左】両足を段差の角に着く。アクセルは開けたままだ。【中】両足を角に着いたら「ヨイショッ!」という感じで両足で角を蹴り出していく。すると背筋がスッと伸び、お尻もシートから離れる。シートに体重がかかっていないので、リアサスが元に戻る動きを妨げない。このライダーのボディアクションが抜重だ。リアのGが抜け、リアタイヤは段差に沿うように上がってくる。【右】斜面を上るために今度はリア荷重して、リアタイヤのグリップ力を増強してやる。

両足を段差の角に着く。アクセルは開けたままだ。

両足を角に着いたら「ヨイショッ!」という感じで両足で角を蹴り出していく。すると背筋がスッと伸び、お尻もシートから離れる。シートに体重がかかっていないので、リアサスが元に戻る動きを妨げない。このライダーのボディアクションが抜重だ。リアのGが抜け、リアタイヤは段差に沿うように上がってくる。

斜面を上るために今度はリア荷重して、リアタイヤのグリップ力を増強してやる。

ステップに乗ったままの場合は抜重のタイミングがシビアになる

レースなどタイムを競う場合、両足を着いて段差をクリアしようとするとスピードダウンしなければならず、タイムロスの原因となってしまう。スピードダウンせず一連の流れでクリアするには、ステップの上で蹴り出す動作を行なう。こうすることで背筋がスッと伸び、抜重のボディアクションになるのだ。しかし、角に足を着かないので、蹴り出すタイミングをつかむのが難しくなる。これは、リアタイヤが段差に当たり、リアサスが縮む感覚を練習で身につけておくしかない。

レースなどタイムを競う場合、両足を着いて段差をクリアしようとするとスピードダウンしなければならず、タイムロスの原因となってしまう。スピードダウンせず一連の流れでクリアするには、ステップの上で蹴り出す動作を行なう。こうすることで背筋がスッと伸び、抜重のボディアクションになるのだ。しかし、角に足を着かないので、蹴り出すタイミングをつかむのが難しくなる。これは、リアタイヤが段差に当たり、リアサスが縮む感覚を練習で身につけておくしかない。

タイヤがロックする直前が一番おいしい

抜重のテクニックは丸太越えでも使える。アプローチは段差越えと一緒で、しっかりリア荷重してフロントアップ。フロントタイヤを丸太に当てずに通過させたら、スタンディングフォームに移行する。するとリアタイヤが丸太に当たるが、その衝撃でアクセルを戻さないようにする。アクセルを開けたままにしているとリアタイヤが丸太を乗り越えてくるが、このときの衝撃をヒザを曲げることで吸収してやる。こうすることでリアサスが縮む動きを妨げず、衝撃を吸収し易くなる。こうした丸太などの障害物から受ける衝撃を、体を使って吸収することも抜重なのだ。

抜重のテクニックは丸太越えでも使える。アプローチは段差越えと一緒で、しっかりリア荷重してフロントアップ。フロントタイヤを丸太に当てずに通過させたら、スタンディングフォームに移行する。するとリアタイヤが丸太に当たるが、その衝撃でアクセルを戻さないようにする。アクセルを開けたままにしているとリアタイヤが丸太を乗り越えてくるが、このときの衝撃をヒザを曲げることで吸収してやる。こうすることでリアサスが縮む動きを妨げず、衝撃を吸収し易くなる。こうした丸太などの障害物から受ける衝撃を、体を使って吸収することも抜重なのだ。

三橋 淳
インストラクター
三橋 淳

2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。

クラモチ
生徒
クラモチ

GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。

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