オフ走行の基礎テクニック

【Vol.02】地形とアクセルワークだけで3Dライディングを楽しむ!

掲載日:2009年01月16日 オフロードライテク講座オフ走行の基礎テクニック    

Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。

バイクのGを体感すれば、簡単にフロントアップできる!

前回のレクチャーでテールスライドをマスターした生徒クラモチ。今回はフロントアップに挑戦だ。

三橋 「平地でフロントアップするには、フロントサスを縮めるためのボディアクションが必要になってくるけれど、もっと簡単な方法があるよ。ちょっとした斜面や段差を使えば、アクセルワークだけでフロントアップできるんだ。ここに高さ20cmくらいの斜面があるから、これを使ってフロントアップしてみよう。まずはクラモチ君の好きなようにやってみて」

と三橋さんにいわれたクラモチ。斜面のはるか手前から2速で勢いよくアプローチしてきた。そして、かなり速いスピードで斜面に差しかかったものの、XR230は舐めるように斜面をクリアしてしまった…。

三橋 「フロントアップするのにスピードはいらないよ。それよりも、バイクを加速させる力(トルク)が、いちばん出るエンジン回転を使うんだ。パワーバンドとか、アクセルの付きがいいとか言われたりするエンジン回転域のことだね。でも、そんな言葉より、アクセルを開けた時にバイクが力強く前に出るGを体感することが大切なんだ。バイクの加速力がいちばん出る状態は、バイクがいちばん動く状態でもあるんだ。だからバイクがいちばん動く状態になるように、アクセルワークでエンジン回転数をコントロールしてやるんだ」

ということで、まずはフラットな場所で、自分のバイクの加速力がいちばん出る状態を体感してみよう。

生徒クラモチのダメダメな例

メリハリのある加速が出来ていないクラモチ。斜面のはるか手前でアクセルワークを行なっている。これだとフロントサスが伸びているので、斜面をフロントサスが吸収してしまう。加速力を体感するには、1速で早歩きくらいのスピードが分かりやすい。ポイントは、スピードではなく加速力!

平地でアクセルを開け、マシンの加速Gを体感

 

マシンがグワッ!とくるポイントを探せ!

地形を使ってフロントアップするコツは、アプローチのスピードに頼るのではなく、マシンの加速力を使うこと。それには自分のマシンのエンジン特性を知っておくことが重要だ。まずは1速で、早歩きくらいのスピードで直進しよう。そして、そこからアクセルを開けてみよう。いきなり全開にしなくても、マシンがグワッと加速するアクセル開度があるはずだ。いろいろなアクセル開度を試して、いちばん加速Gを感じられるところを見つけていこう。

前輪が斜面にかかった時に、加速Gを発揮させる

 

アクセルワークだけでこんなに上がる!

自分のバイクの加速力がいちばん発揮されるポイントを体感できるようになったら、次は斜面で練習してみよう。タイミングはフロントタイヤが斜面にかかった時に、加速力がいちばん発揮されるようにアクセルワークする。アプローチスピードは1速で早歩きくらいのスピードでやろう。加速している状態でフロントタイヤを斜面に当てると、次の瞬間、走り幅跳びで踏み切ったようにフロントタイヤが上がっていく。加速状態=バイクがいちばん動く=フロントサスが縮むという訳だ。

斜面で加速力を使えばフロントアップできる

バイクの加速Gを体感せよと言われたクラモチ。1速で早歩きくらいのスピードで、いろいろなアクセル開度を試している。

クラモチ 「あ!一度アクセルを開けてから戻して、もう一度開けてみるとバイクが加速しません。2回目のほうがパワーは出ている感じなのに、1速だともう加速しないんだ」

と閃いたクラモチ。

三橋 「そう! 加速力(トルク)とパワーは別なんだ。それに気付けば、フロントアップにスピードがいらないのが分かるよね。XR230の場合、アクセル開け始めから少し開けたところが、いちばん加速力が出るんだ。あとは、フロントタイヤが斜面にかかった時に、加速力がいちばん出るようにタイミングを合わせてやるだけ。そうすれば、ほらこのとおり」

と、ゆっくりとしたアプローチスピードなのに、三橋さんはアクセルワークだけで高々とフロントアップしてしまった。そして、クラモチも練習すること数回。徐々にバイクの加速力が斜面で出るようになってきた。そして、ついにアクセルワークだけでフロントアップできるようになった。

クラモチ「やったー! アクセルワークだけで、ビンビンです!!」(意味不明)

ベタ座りのまま、アプローチしてみよう

グッとこらえてフロントアップをキープ!

フロントアップしたのに、すぐに前輪が落ちてしまう場合は、ベタ座りのまま斜面にアプローチしてみよう。失敗の原因は、アクセルをすぐに戻してしまうことと、リアタイヤが斜面を通過する時の衝撃を体で吸収してしまうことだ。前輪が上がると少し怖いけれど、リアタイヤが斜面を通過するまではグッと我慢して、ベタ座りのままアクセルを開け続けておく。こうしてリアタイヤにGをかけると、シーソーのようにフロントアップ状態をキープできる。

今回はコーナーのわだちを使って練習したけれど、ちょっとした段差や石を使ってもフロントアップすることができる。フロントアップのきっかけとする場所は、高さよりもフロントタイヤがスムーズにアプローチできる斜面を見つけることが重要だ。そうすれば写真のような石を使っただけで、高々とフロントアップできるようになる。そのためには、まずはアクセルワークでしっかり加速できるようになっておく。そうした加速Gを体感するために、最初はベタ座りのまま練習しよう。それからスタンディングに挑戦してみよう。スタンディングは、リアタイヤが斜面を通過する時の衝撃を無意識に体で吸収してしまいがちだ。両足で踏ん張るようにGをかけてやろう。
三橋 淳
インストラクター
三橋 淳

2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。

クラモチ
生徒
クラモチ

GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。

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