オフ走行の基礎テクニック

【Vol.01】滑りやすいなら、滑らせて遊べ!

掲載日:2008年12月15日 オフロードライテク講座オフ走行の基礎テクニック    

Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。

走れるところが増えれば、楽しさも増えてゆく

三橋淳さんをインストラクターに迎え、オフロードでの派手なライテクを伝授してもらおうと鼻息を荒くしているガルル編集スタッフのクラモチ。三橋さんが現れるや否や…

クラモチ 「三橋先生! 景気のいいド派手なテクニックを教えてください!!」

この日は前夜から雨が降り続き、路面はかなり滑りやすい状態になっている。

三橋 「ハデなテクニックもいいけど、こんな滑りやすい路面を走ったことはあるの?クラモチ君?」

クラモチ 「いえ、まったくないです…」

三橋 「じゃあ、とりあえず走ってきてごらん。それで分かることもあるから」

と、XR230で走り出してみたものの、アッという間に戻ってきてしまった。

クラモチ 「リアタイヤが滑ってまっすぐ走れないし、コーナーではコケそうになって全然走れませんでした…」

三橋 「滑りやすい路面こそリアタイヤにしっかり荷重して、アクセルワークでマシンをコントロールしていくんだよ。そうすればこんな走りもできるんだよ」

写真をご覧ください 写真をご覧ください

三橋 「結果的にハデな走りになったけれど、これは滑りやすい路面の走り方がわかっているからできることなんだ。目の前にある地形の走り方がわかっていれば、それだけ自分の走れる場所が広がるし、走れる場所が広がれば遊べることも増えていく。つまりオフロードライディングの楽しさが増えていくんだよ」

目の前にある地形を使って、遊びながら上達していく。これがクロスカントリーライディングをベースとした三橋流『G RIDE』だ。

 

滑りやすいからアクセルワークで、カンタンにターンできる

クラモチ「直線はなんとかバランスをとって走れるんですけど、コーナーが滑りやすくて、すぐにバランスが崩れてしまいます……」

三橋 「滑りやすい路面でのターンは、滑ることを積極的に利用したほうが走りやすくなるんだよ。バイクは車体を傾けてコーナーリングするんだけど、こういう滑りやすい路面ではちょっと傾けるだけでリアタイヤが滑ってしまう。ということは、言い換えれば、少ししかバイクを傾けなくてもコーナーリングできるということなんだ。つまり、滑りやすい路面はいつもよりターンしやすい状況なんだ」

それを聞いたクラモチ。なにかが閃いたようだ。

クラモチ 「あっ、そうか! ということは、アクセルを開ける量がいつもより少なくても、テールスライドできるってことですね」

三橋 「そう。滑りやすいから、いつもより遅いスピードでもテールスライドできるんだ。ほら、滑りやすい路面が楽しくなってきたでしょ?」

クラモチ 「はい! ドリッドリです!!」(意味不明)

ハンドルを切ることでターンのきっかけを作ろうとして、バイクも傾けすぎてしまっている。これではアクセルターンになってしまい、その場で向きを変えることしかできない。体も遅れているので、左足が開きすぎコントロール不能になっている。滑りやすい路面でのターンは、バイクを傾けすぎず、進行方向を見て、アクセルワークでコントロールする

生徒クラモチのダメダメな例

ハンドルを切ることでターンのきっかけを作ろうとして、バイクも傾けすぎてしまっている。これではアクセルターンになってしまい、その場で向きを変えることしかできない。体も遅れているので、左足が開きすぎコントロール不能になっている。滑りやすい路面でのターンは、バイクを傾けすぎず、進行方向を見て、アクセルワークでコントロールする

お手本

滑りやすい路面なので、ほんの少しのきっかけをバイクに与えるだけで、リアタイヤをスライドさせることができる。だから、乾いた路面でスライドさせるときのようなスピードは必要ない。走りながらよりも、最初はゼロ発進からスライドさせるほうがやりやすい
練習する場所はコーナーではなく、フラットでなるべく広い場所を選んでやろう。路面が滑りやすいので、最初からコーナーリングの練習をするよりも、まずは、リアタイヤが滑るのをアクセルワークでコントロールするという意識を身につけることが大切
リアタイヤをスライドさせ始める位置も、最初は自分がやりやすいと思った位置でOK。アプローチするスピードもゆっくりで大丈夫だ。1速だとギクシャクしてしまい、3速だとスピードが速すぎてしまうので、2速でゆっくりアプローチしていくとやりやすいはずだ
滑りやすい路面で積極的に滑らせるのは、スリップしているのではない。滑るリアタイヤにライダーが荷重する(Gをかける)ことで、バイクが前に進もうとするグリップ力(トラクション)を加えてやるのだ。そうすると、リアタイヤがスリップしている状態でもグリップ力が生まれ、リアタイヤのスライドをコントロールできるようになる。滑りやすい路面でリアタイヤに荷重をかけないと、ただのスリップになる。コントロールできない原因はコレだ

バイクは傾けすぎず、リアにGをかける!

バイクは傾けすぎず、リアにGをかける!

滑りやすい路面ではバイクを傾けすぎず、リアタイヤにGをかけることが大切だ。Gをかけるには、体をシートに押し付けるようにする。そのためには、バイクの動きにライダーがついていくようにする。足は地面に着きっぱなしにせず、ケンケンをするように着いた足をバイクに寄せていくようにしよう。こうすると、体がついていき、バイクも傾きすぎないで起きてくる

滑らせる・傾ける、鋭角ターンをキメる!

三橋 「じゃあ、次は壁を使って遊ぼうか。土の斜面があるから、そこを使ってターンしてみよう。バイクは傾けてターンするのはわかるよね?」

クラモチ 「今度はバイクを倒し込んでいくんですか? それじゃあ滑りすぎると思うんですけど…」

三橋 「大丈夫。斜面が壁の代わりになるからストッパーのような役目を果たしてくれるんだ。フロントタイヤが逃げて転倒することを防いでくれるから、滑りやすい路面でもバイクを傾けられる。だから、フラットなところよりも鋭いターンができるようになるんだ。さっきよりも少しスピードを上げてやってごらん」

 

バイクを傾けないようにして進入。するとバイクは斜面をしっかりとグリップし、まるで坂を上るかのように進んでいってしまった。傾けてスライドさせたバイクを、それ以上スライドさせないために斜面をストッパー(壁)として使うのがポイント。しっかりバンクさせて進入しよう

クラモチの場合

バイクを傾けないようにして進入。するとバイクは斜面をしっかりとグリップし、まるで坂を上るかのように進んでいってしまった。傾けてスライドさせたバイクを、それ以上スライドさせないために斜面をストッパー(壁)として使うのがポイント。しっかりバンクさせて進入しよう

お手本

フラットな場所で練習したときよりも速めのスピードで進入していこう。進入スピードが遅すぎるとバイクを傾けた角度(バンク角)とバランスが取れず、転倒する原因となる。スピードと合うバンク角は、走って探っていくしかない
スピードが上がっていくと、ジャイロ効果も大きくなってバイクが直立しようとする。つまり傾けにくくなっていく。ここでバイクを傾けるためのGをしっかりかけていかないと、バイクをスライドさせることはできなくなる
スピードがあがれば、斜面から受ける反発力も大きくなる。斜面をグリップするためには、シート前方に座って、おしりでシートを押さえつけるようにして荷重する。腹に力を入れて腹筋背筋を使ってGをかけてやろう

スピードを上げていけば遠心力も大きくなって、斜面にかかるGも大きくなる。それは、スピードを上げれば、バンクさせられる角度を深くしてもバランスが取れるということでもある。しっかりスピードを出して進入し、斜面にGをかけてやれば、ここまでバイクを倒し込んでターンできる! 誰もがマネできる走るではないけれど、ちょっとした斜面を使っただけで、こんなこともできてしまう。地形を使って遊ぶ。これが、G RIDEなのだ

三橋 淳
インストラクター
三橋 淳

2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。

クラモチ
生徒
クラモチ

GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索