「逆ハンの忠さん」再び! 鈴木忠男氏がDT-1で爆走!

掲載日:2018年05月07日 フォトTOPICS    

写真・文/Ryo Tsuchiyama
取材協力/MFJ Holly Equip

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「逆ハンの忠さん」再び!
ヤマハDT-1発売50周年記念イベントに鈴木忠男氏登場!

2018年4月22日(日)に埼玉県川越市のオフロードヴィレッジで行われた全日本モトクロス選手権第2戦関東大会で、ヤマハDT-1発売50周年を記念したメモリアルイベント【ヤマハ・トレールDT-1発売50周年と「逆ハンで全開! 豪快の忠」】が開催されました。

1968年にヤマハが発売したトレールバイクDT-1。250ccの空冷2サイクル単気筒エンジンを、オフロード用に専用設計された車体に搭載したDT-1は、その高い悪路走破性とDKデザインによる美しいスタイリングで日本はもちろん世界中で大ヒットした名車なのです。

今回のメモリアルイベントは、DT-1のデビュー後にDT-1改で当時の全日本モトクロス選手権で大活躍した鈴木忠男氏(現・SP忠男代表)の活躍を振り返ろうという趣旨で行われたもの。会場には、鈴木氏が駆ったDT-1スペシャルを忠実に再現したマシンや、当時の全日本モトクロスでの活躍を偲ばせる写真パネル、当時ヤマハが販売していたレース用キットパーツを装着した貴重なマシンの展示などが行われました。

さらに全日本モトクロス選手権の空き時間を利用して、鈴木忠男氏がDT-1スペシャルを実際に走らせる「パレードラップ」も開催されました。当時のウエアに身を包んでパレードラップに登場した鈴木忠男氏は、当時を彷彿とさせるような豪快な開けっぷりで集まった新旧モトクロスファンたちを楽しませてくれました。

ここからは当日の模様を写真でご紹介しましょう。

晴天に恵まれた2018全日本モトクロス選手権第2戦関東大会。最新のモトクロッサーがひしめく会場で、ヤマハDT-1発売50周年を記念する特別展示が行われました。

ヤマハDT-1が発売された1968年から70年代前半までのマシンが並んだブースには新旧モトクロスファンが詰めかけました。

ブース内には、DT-1発売前年の1967年にヤマハが全日本選手権で走らせた試作車YX26の活躍を伝える展示パネルも用意されました。YX26で形になったオフロード専用設計という概念は、そのままDT-1にも引き継がれています。そのほか、ヤマハワークス製DT-1改と、その後の鈴木忠男さんの活躍が克明に記されたパネル展示に多くのファンが足を止めていました。

展示パネルを写真に撮る人も多かったですね。写真のマシンはこの日のために用意されたDT-1スペシャル・鈴木忠男レプリカ。詳細はのちほどじっくり紹介します。

1968 ヤマハDT-1 「GYTキット装着車」。市販トレールモデルのDT-1をベースに、当時ヤマハ純正のチューニングパーツとして販売されていた「GYTキット」を組み込んだマシンです。撮影車は、GYTキットのシリンダー&シリンダーヘッド、ピストン、&ピストンリング、キャブレター、アップチャンバー、フロント21インチ化スポークキット、インナーローターが組みこまれています。さらにH型アルミリム、フロント小径ブレーキハブ、社外品の前後樹脂フェンダーをセットして、当時の定番プライベーター仕様が再現されています。

鈴木忠男さんのデモランのために、オフロードビレッジのスターティングエリアに並んだDT-1スペシャル(手前)とAT-2ノグチスペシャル(奥)。

1972 ヤマハAT-2ノグチスペシャル。125ccエンジンを積むAT-2は250ccのDT-1よりもひと回り小ぶりな車体です。このAT-2は当時2ストローク車の各種チューニングパーツを販売していたノグチ製キットを多数組み込んだマシン。

VM28キャブレター、アルミシリンダー&シリンダーヘッド、ピストン&ピストンリング、エアクリーナーボックス、中通しチャンバー、インナーローターキット、FRP前後フェンダー、FRPシートパンはすべて当時のノグチキット。撮影車はさらにヤマハワークス製アルミタンクやチェリアーニ製リアショックを装着しています。フロントホイールはもちろん21インチ化されています。

1969 ヤマハDT-1スペシャル・鈴木忠男レプリカ。この日のために用意されたマシンは、1969年当時の鈴木さんのマシンを再現したもので、多数のワークスパーツが装着されています。ヤマハワークス製のダウンフレームはエンジン位置を50mmも下げてあり、ストックのDT-1とはまったく異なる佇まいです。

ダウンフレームによってタンクとエンジンの間には大きなすき間があいています。市販車のDT-1は、最低地上高が充分に確保されていますが、このワークスフレームはダウンチャンバーの採用とも相まって、見る限り最低地上高はそんなに多くありません。モトクロッサーの製作が手探りだった時代を偲ばせるフォルムです。

オールアルミのシリンダー&シリンダーヘッド、ダウンチャンバーはヤマハワークス製。クランクケースの前半分が欠けたような形状になっていますね。ココは市販車のDT-1ではオイルポンプが収まる場所で、モトクロスで使用する際にはオイルポンプを取り去って混合燃料を使用するため、こうしたモデファイが行われています。

エンジン左サイド。クランクケース前半分は砂型のステーターカバーに覆われています。もちろんワークスパーツです。クランクケース後半のチェーンカバーも大胆にカットされています。また、ゼッケンプレートを兼ねたFRP製のサイドパネル、リアフェンダーと一体型になったエアボックスもヤマハワークス製。撮影車のキャブレターはミクニVM32を使用しています。

サイレンサーエンドが細く伸びたダウンチャンバーは独特の高周波サウンドを響かせます。また、補強入りの角型スイングアームもヤマハワークス製のパーツです。

ヤマハワークス製のトリプルクランプ。アンダーブラケットにいたってはなんとアルミ削り出し! 当時のワークスパーツとあってかなりお金のかかった仕様です。また、このマシンはレストアの際に当時のヤマハワークスレプリカのディッシュボルトを各部に使用。細部にまでこだわりが詰まった1台です。

今も昔もワークスパーツの証のひとつと言えるのが削り出しのフロントフォーク・ボトムケースでしょう。撮影車はフロントブレーキパネルにもヤマハワークス製のアルミ削り出し品を装着しています。また、市販車DT-1では19インチだったフロントホイールは21インチへと変更されています。

燃料キャップ前方のわずかな隆起にDT-1の面影を感じる以外はまったくの別モノと言えるガソリンタンク。これもヤマハワークス製で材質はもちろんアルミ。タンク後端に見える黒いヒモはマウント用のゴム。時代を感じる作りですね。装着されるシートもヤマハワークス製です。

鈴木忠男さんのパレードラップに向けて暖気が始まりました。慎重に、しかし慣れた手順でキックを踏むのは、奈良県のビンテージモトクロススペシャルショップ、ホーリー・エクイップ(Holly Equip)代表の堀口さん。今回のメモリアルイベントの企画や展示は堀口さんの熱意によって実現したものなのです。

1969年シーズンを再現したマシンに、当時を再現したコスチュームで跨る鈴木忠男さん。カメラを向けたら、ばっちりピースサインをいただきました! ちなみに「忠さん」のトレードマークである目玉マークのヘルメットや、ジャージ、ゼッケン、ブーツなどは、この日のために当時の資料をくまなく調査して有志たちが再現&製作したもの。

全日本モトクロス選手権のお昼休みを使って行われたパレードラップには多くの観客が集まり、鈴木忠男さんの走りに注目!

半世紀の時を超えて、全日本モトクロス選手権に帰ってきたDT-1と鈴木忠男さん。この日はヤマハ関係者や、SP忠男出身の元MotoGPライダー、中野真矢氏も鈴木さんの雄姿を目に焼き付けるべく、会場に足を運んでいました。

1周目こそマシンの調子を確かめるように慎重に周回していた鈴木さんでしたが、2周目以降は全開で走りだしました。テーブルトップのくだりでは軽くジャンプをしてくれるファンサービス!

「逆ハンの忠さん」が帰ってきた! 暴れるマシンをもろともせず、スロットルをガバ開けする鈴木さん。それにしてもこの身のこなしには、さすが! と言うほかありません。

立ち上がりではフロントを浮かせるほどDT-1を振り回していました。現役当時を思わせる豪快なその走りに、観客も僕らプレスも大興奮でした。

空冷2ストロークマシン独特の乾いたエキゾーストが響きわたったパレードラップ。日本のモトクロス黎明期を疑似体験できる数分間でした。

パレードラップ後の記念写真。ホーリー・エクイップのスタッフのみなさん、鈴木さんとも親交のある現役レディースモトクロス選手の安原さや選手が花束を贈呈。鈴木忠男さんも走り切った! という表情ですね。

走行後ブースに戻ってきた鈴木さんでしたが、すぐにファンたちに囲まれて撮影会が始まりました。そんななかでも笑顔を絶やさないモトクロス界のレジェンドは、ファンサービスでも神対応でした。

ヤマハDT-1発売50周年を記念して開催された今回のイベントは、新旧モトクロスファンを巻き込んで大盛況のうちに幕を閉じました。会場に足を運んだ誰もが日本のモトクロスの歴史に触れた1日だったのではないでしょうか。

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