ホンダ アフリカツイン
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ホンダ CRF1000L アフリカツイン – 再生か?新生か? ニュー・アフリカツイン!

掲載日:2016年08月26日 試乗インプレ・レビュー    

テストライド/東福寺保雄 写真/長谷川 徹 まとめ/小川浩康、櫻井伸樹
※この記事はオフロードバイクマガジン『GARRRR(ガルル)』360号掲載記事を再編集したものです
※記事の内容は雑誌掲載当時のものです(GARRRR vol.360 2016年4月発売)

見よ、この走り。
コイツはオフロードバイクだ!

パリ・ダカールラリーがアフリカ大陸を走る冒険ラリーだった1980年代に、4連覇を果たしたホンダワークス・ラリーマシンNXR750。そのNXRレプリカとして1988年に登場したのがアフリカツインだ。厳格化された排出ガス規制により1999年モデルで国内販売は終了となったが、その間に全世界累計で7万3,000台が販売。多くのライダーが世界を旅する相棒としたのは、オフロード走破性能を損なうことなく、オンロードでの快適性能を両立していたからで、さまざまな状況で発揮される走破性の高さは、まさにラリーマシンNXRの遺伝子を受け継いでいた証。アフリカツインがアドベンチャーマシンとして認められていた理由でもある。

それから時は流れ、2013年。24年振りのホンダワークス・ダカールラリー参戦と同時にCRF1000Lアフリカツインの開発もスタート。翌2014年にはプロトタイプ「TrueAdventure」を発表。そして2016年2月、DCT(※デュアル・クラッチ・トランスミッション)という機構をタイプ設定し、ついに日本で新車発売となった。DCTはすでにホンダNC750Xなどに搭載されているが、CRF1000LアフリカツインのDCTは走りやすさと燃費を両立させたDモードと、エンジンパワーを生かしたスポーツ走行向きのSモードが選べ、そのSモードはシフトチェンジタイミングを3つのレベルから選択できる。さらに、よりスパっとしたクラッチミートになり、ダート路面でダイレクトなマシンコントロールがしやすくなるGスイッチを新たに装備。トラクションコントロールはオフを含めて介入具合を4段階に設定でき、ABSはリアのみ解除可能。これらの組み合わせでセッティング設定は全80パターンを実現。自分のライディングスタイルや路面状況に合わせたセッティング選択が可能になっているのが、DCT仕様の大きな特徴になっている。

このCRF1000Lアフリカツインの試乗会が、本格的なオフロードコースである福島県モトスポーツランドしどきで開催。テストライダーは国際ラリー入賞歴もある東福寺保雄氏に担当してもらった。なお、ダート走行用試乗車にはコンチネンタルTKC80というオフロード向きのタイヤが装着されていた。ちなみに、東福寺氏はABSとトラクションコントロールをオフ。Sモード・レベル2、Gスイッチオンという設定を選択。ダートでの印象を聞いてみると、「DCTは速いですね。コーナー進入でリアブレーキをロックさせてもエンストしないから、マシンの向きを変えるのも速い。そして、そこからクラッチ操作をしなくてもシフトアップを自動で行なってくれるので、アクセルを開けるだけで加速していけます。エンジン回転を合わせる必要もなDCT、本当にイージーライディングです。

それと、フロントサスにしっかり感があるので、コーナー進入でマシンを倒し込んでいっても重さが出てきません。だから狙ったラインに入っていきやすいんです。そうしたダートでのコントロール性のよさはフロント21インチホイールの恩恵も大きいですね。ワダチやギャップで振られにくく、タイトコーナーでは切れ込むクセもありません。さらにそこからスピードを上げていってもグラグラしません。接地感がありながら重さはないDCT、どんな速度域でも安定したハンドリングになっているんです。これはフレーム剛性の高さも貢献していますね。

ただ、足を着いて停止している時には重さを感じます。それでもDCTはエンストしないし、1000ccのパワーは必要充分以上。マシンが少しでも動いていれば、重さが苦になることはないですね。あと気になったのは、リアブレーキをつま先だけで踏もうとする時に、クランクケース(DCTユニット)カバーと干渉したことです。操作できないことはないですが、ハードに攻めるには慣れが必要ですね。それにしても、DCTは楽に速いから、モトクロッサーにも搭載してほしいですよ」と、イージーかつ速いDCTを高く評価。続いてMT仕様に試乗してもらった。「DCT仕様より車重が10kg軽いですが、その差はアクセルを開けていった時にハッキリ分かります。それと、ブレーキターンやフロントアップといったピンポイントでのマシンコントロールが必要な状況は、MT仕様のほうがレスポンスがよりダイレクトなので、やりやすいです。クラッチも軽いの、レバー操作が苦にならないのもいいですね。

その代わり、タイトコーナーでは半クラッチを使ってエンストさせないようにする必要もあります。といっても、低速トルクも太く、2速でも粘ってくれるので、ストンとエンストすることはなかったですけれど」と、車重の軽さとピンポイントでの操作性はMT仕様に分があるようだ。

次はオンロードでの印象。「DCTはシフトチェンジがとにかくスムーズですね。マッタリ流しても、ちょっと速いペースで峠を走っても、シフトチェンジのタイミングに違和感がありませんでした。ダートで軽快だったハンドリングは舗装路でも同じで、コーナーの切り返しでも車重は気になりませんでした。ブレーキも安定しているし、アクセルワークだけでスムーズなコーナリングが決まるので、DCTは自分が上手くなったように感じさせてくれます。高速道路を走る時間はなかったですが、胸に風が当たらなかったので、スクリーンもかなり効いてますね。

MT仕様も乗り味は大きく変わりません。ただ、フロントサスのセッティングがちょっと違っていて(編集部注・DCTのほうが車重がある分、プリロードも多めになっている)、MT仕様のほうが柔らかいです。コーナー進入時のブレーキングで、フロントの入りを大きく感じました。コーナー立ち上がりでのマシン挙動もDCT仕様より大きいですが、これはレスポンスのよさでもあります。よりシャープな走りが好みという人はMT仕様がオススメです。ただ、個人的にはDCT仕様がいいですね。排気量1,000ccで車重242kgの車体をストレスなく、しかもイージーに扱うことができるんですから。長時間、長距離になるほど、クラッチ操作をしなくてもいい恩恵も大きくなっていくはずです。走り出したら、オンでもオフでも軽い。はじめてのアドベンチャーバイクとしてもおすすめですよ」

高いオフロード性能と快適なオンロード性能の両立という歴代アフリカツインのDNAをしっかりと受け継ぎ、最新テクノロジーが現代的な乗りやすさをプラス。ビギナーも扱えて、東福寺氏のようなエキスパートがレーサーへのDCT搭載を熱望する。道のオンオフを問わず、誰にも乗る楽しさを堪能させる。CRF1000Lアフリカツインは、そんな奥深さを持って新生したのだ。

HONDA CRF1000L Africa Twin DATA FILE

足着き性

スタンダード・ポジションのシート高は870mm。身長172cmのライダーがまたがると、両足つま先立ちとなる。しかし、シート幅は広すぎないので、少し尻をズラせば、片足をしっかり着くことができた。さらに工具不要でシート高を20mm下げたロー・ポジションにできる。ダートではロー・ポジションの足着きが安心だが、スタンダード・ポジションのほうがヒザの曲がりがきつくなく、リラックスできる。

PRICE

(左)DCT仕様 価格:138万円(デジタルシルバーメタリックは135万円)税抜き
(右)MT仕様 価格:128万円(デジタルシルバーメタリックは125万円)税抜き

CRF1000Lアフリカツインの詳細写真は次のページにて

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