エージェーピー PR4 240リミテッド(特別編) 試乗インプレ・レビュー

PR4 240Limited
PR4 240Limited

エージェーピー PR4 240リミテッド(特別編)

掲載日:2016年06月15日 記事カテゴリ 試乗インプレ・レビュー   

テストライド/小林直樹  写真/長谷川徹  まとめ/小川浩康
※この記事はオフロード雑誌『GARRRR』の人気企画『小林直樹のオフロードバイク・テイスティング』を再編集したものです
※記事の内容は雑誌掲載当時のものです(GARRRR vol.333 2014年01月発売)

オフロード走破性を重視した作り込みの
ライトウエイトスポーツマシン

今回テストするAJPは、自分でパーツを組み合わせることで、自分の使い方に合った仕様にすることができるセレクトビルドシステムが大きな特徴になっているけれど、このPR4 240リミテッドはマルゾッキ製フロントサスとリーガルキットがセットアップされた公道走行仕様のコンプリートモデル。公道走行も考慮されているので、1デイツーリングでの使い勝手をチェックしてきたんだ。

スリムで軽量な車体が市街地で
取りまわしやすさを感じさせてくれる

フロントサスとフレームの剛性が高く、乗り心地はカチッとしている。路面からのコツコツとした衝撃も伝わってきて、レーサーに乗っている感じがするけれど、低速トルクは2速発進もこなせるほどの太さがある。全体的にローギヤードなギヤ比もあって、市街地の交通の流れには余裕で乗っていける加速性も発揮してくれる。ただ、ローギヤードなのでエンジンの頭打ちも早く、そのエンジンからも驚くようなパワーは出てこない。アクセルを開けただけでライダーが置き去りにされるようなことはなく、加速感はセローやXR230といったミドルサイズトレール並みと言える。

シート高は少し高めに感じるけれど、スリムな車体と軽い車重のおかげで停止時にグラッとくることがない。つま先立ちでも十分に支えられるので、足着き性に不安を感じることは少ないはずだ。それと、ウインカーにはプッシュキャンセル機能はないけれど、操作性には節度感があり、少し乗れば慣れてしまった。 適度なパワーは市街地でキビキビした走りを実現してくれる。そして軽い車体は足着き性をカバーし、取りまわしやすさになっている。ミドルサイズトレール並みの扱いやすさはあるのだけど、振動は多い。アクセルを開けるほどに振動は多くなり、タイヤパターンも影響して、振動が手と足にくる。チョイ乗り程度であれば問題ないけれど、街乗りする機会が多いライダーにはモタードホイールをおすすめしたいのが正直なところだね。

振動が多く高速道路は
緊急時の移動に留めたい

市街地で感じたギヤ比の低さは、高速道路でさらに顕著に感じることになる。流入車線での加速でエンジンが吹け切ってしまい、100km巡航は正直厳しい。スプロケットを交換すれば最高速を伸ばすことは可能だけれど、それでも振動を減らすのは難しいだろう。エンジンからの音も大きくなり、精神的に不安を感じてしまう。車体の剛性感はあるけれど、標準装備されたタイヤがエンデューロタイヤということもあって高速走行時のグリップ感も少なく、レーンチェンジすると揺り戻されるような動きが残る。

スリムな車体と軽い車重で取りまわしは確かによく、ミドルサイズトレール的な取りまわしを求めている人にはオススメできる。ただ、ミドルサイズトレールと異なるのは、このAJPの出自が、ベースとなる車体にリーガルキットを装備しているということ。法規上高速道路を走行できるけれど、高速道路を多用するツーリングは重視していないということなんだ。高速道路はナンバー付きレーサーと意識して、林道と林道の移動で1区間だけ乗る。そして林道まではトランポに積載して移動する。そうした使い方をするほうが、マシンへの負担軽減にもなる。

ライダーの積極的なボディアクションで
峠をスポーティに駆ける

車重の軽さは峠での切り返しやすさになっているけれど、その軽さが接地感の少なさにもなっていて、マシン任せにダラダラ走っても気持ちよくないんだ。だから積極的にボディアクションで荷重をかけて走るといい。ステップを踏み込んだ際の車体のレスポンスがよく、向きを変えるきっかけを作りやすい。適度なパワーは2速3速とのマッチングがよく、コーナー脱出時にアクセルを開けすぎてもパワーがドンと出てこない。そして燃料タンクがシート下にあることでヒザまわりがスリムになり、前後左右どの方向へもボディアクションしやすい。ライダーがマシンコントロールに集中するほど走りにスポーティさが増してくるんだ。

個人的に気になったのはリヤブレーキ。ブーツを履いた状態でもかなり踏み込まないとリヤロックさせられなかった。峠でリヤロックさせることはないけれど、細かいマシンコントロールをするには制動力が足りないと感じた。

それとパワーがドンと出てこないと言っても、1速はローギヤードなので、上りでアクセルを不用意に開けすぎるとフロントアップになりやすい。そうした意味ではシフトチェンジはシビアと言えるだろうね。

ダラダラ走っても気持ちよくないけれど、マシン任せで走れるだけのパワーもトルクもある。これは、ボディアクションして走った時との乗り味の差が大きく、トレールバイク的なクルージングに合わせたセッティングになっていないということなんだ。峠ではメリハリのはっきりした乗り味になっているよ。

軽量高剛性な車体が
ダートでの路面状況を明確に伝えてくれる

フレームとサスの剛性感はダートでもはっきり分かる。硬い乗り心地が路面からの振動を伝えてくるけれど、エンデューロタイヤが路面をしっかりグリップしてくれるから、振動は路面状況を明確に伝える要素になってくれる。サスもストローク量がありながらもフワフワしていないから、マシン挙動もシャープ。ローギヤードな1速はアクセルレスポンスもクイックにしてくれて、軽い車体はステップ荷重をダイレクトに反映する。だからウイリー、リヤスライド、ジャックナイフといったアクションがやりやすい。そうしたアクションをする際にはクラッチを使うけれど、クラッチレバーは重くなく、スパッとつながるのでタイミングをとりやすい。頻繁にアクションをしているとクラッチの遊びは変わってくるけれど、アジャスターがついているのですぐに調整できるのもいい。

ダートでは、アクセルを開けた分だけスピードが出るからマシン挙動もつかみやすい。フラットダートを3速で飛ばしても車体には安定感があり、振られることもない。ただ、そこからさらにペースアップしようとすると振動が気になってくる。だからモトクロッサーのように開け開けで走るよりも、1速から3速までの低中速域でのアクセルレスポンス使ったほうがAJPのよさは生きてくる。

エンデューロではフルサイズマシンが主流だけれど、その多くのユーザーが車体サイズとパワーに振りまわされているように見受けられる。AJPもシート高は低くないけれど、スリムな車体が足着き性をカバーしてくれる。そして適度なパワーと低中速域での自在なマシンコントロール性がセクションでライダーを助けてくれる。トップスピードはフルサイズマシンに及ばなくても、スタックしにくさがトータルで走破性の高いマシンとしてくれる。そうした乗り味は車体の軽さによるところが大きく、舗装路での快適性よりもダートでの操作性を重視した作り込みになっている。ダートでの軽快な走りが楽しいマシンだね。

朝晩の冷え込みは厳しかったものの、日中は晴天に恵まれ、穏やかな初冬の1デイツーリングとなった。今回は高速道路での移動距離が短く、総走行距離は100km程に留まった。しかし、ダートは30kmを走破。ダート路面はフラット、ウッズ、ガレ場、沢、マディと多岐に渡り、トレッキングからハイスピード走行までチェックできた。その反面、燃費は伸びず、ダート区間では12km/Lとなった。タイヤ、スプロケットをトレールバイク寄りにすれば20km/Lは走るだろう。ちなみにガソリンはレギュラーとなる。

まさに五月晴れとなった今回のテストは、走行風が気持ちいい絶好のツーリング日和だった。総走行距離は約150kmとなったが、ハードパックな林道、ガレ場、ウッズ、獣道と、ダート路面のバリエーションは豊富だったと思う。総燃費は19.9km/Lだったが、350ccのレーシングエンジンをベースとして開発されている割りには好結果と言えるだろう。一般的な林道ツーリングであれば、もう少し燃費は伸びるはずだが、タンク容量は5.5Lしかなく、航続距離は100km程度に留まってしまう。自走ツーリングでのルーティングには、給油ポイントの確認が欠かせない。

低速でピックアップのいいエンジンと軽い車体の組み合わせでフロントアップしやすい。ウッズでの取りまわしはフルサイズを凌ぐ。

幹線道路の流れに乗れるパワーはあるが、全体的にローギヤードなので最高速は伸びない。また、アクセルを開けるほど振動も増えていくので、市街地ではトレールバイク的な快適性は少ない。

市街地以上に振動を感じる高速道路。これはタイヤとギヤ比による所が大きい。オンロードでの快適性を求めるなら、セレクト・ビルドシステムを活用し、モタード仕様をチョイスすればいい。

AJP PR4 240Limited DATA FILE

エージェーピー PR4 240リミテッドとは

AJPはポルトガルのエンデューロライダー、アントニオ・ピント氏によって創業されたバイクメーカーで、走りに合わせて好きなパーツを組み合わせる「セレクト・ビルドシステム」を導入しているのが特徴だ。このシステムは、125ccか240ccの空冷4ストエンジン、パイオリかマルゾッキのフロントサス、スモール・スタンダード・モタードの3タイプのホイールサイズなど、全96通りの組み合わせが可能となっている。「プロライダーのような特別なライディングスキルを持っていなくても、誰もが楽しいと感じられるバイクをデザインしたい」というピント氏の思いを結実させたシステムなのだ。今回のテストバイクPR4 240Limitedハイスペックコンプリートモデルは、扱いやすい240ccエンジン、スチール製メインフレームとアルミ製サイドフレームのハイブリッドフレーム、シート下燃料タンク、一体鋳造製スイングアームといったPRシリーズ共通の基本コンポーネントに、フロント21・リヤ18インチオフロードホイール、マルゾッキフロントフォーク、リーガルキットを標準装備。公道走行対応のオフロードバイクとして、コンプリート販売されている。

足着き性

身長170cm体重70kgの小林氏がまたがると両足のつま先が着く。「お尻を少しズラせば片足をしっかり着くことができるし、車重も軽いからグラっと来ない。シート幅もスリムで、それも足着き性をカバーしてくれている。ハンドル位置は高めで、スタンディングするとトライアルマシンに乗ったような感じとなる。アクションライディングしやすいけれど、シッティングでの移動はもう少しハンドルは低いほうが楽になると思う。ふところは広すぎず狭すぎないけれど、ややリヤ寄りのポジションだと感じた」と言う。

IMPRESSIVE POINT

「極低速からトルクが立ち上がるけれど、パワーは必要十分といったレベル。ハイスピード走行を求める人に物足りないけれど、獣道アタックやトライアル的なライディングをしたい人には最適のエンジン特性で、ビギナーも扱いやすさを感じられるはずだ。そして燃料タンクがシート下にあるので、通常のタンク位置がスリム。前後左右どの方向にもボディアクションしやすいライディングポジションになっているのもいい。ローギヤードなギヤ比はアクションライディングを重視する俺には扱いやすさになるけれど、高速域の伸びを抑えてしまう。トレールバイク的に乗りたい人は、もう少しハイギヤードがいいね」

PR4 240リミテッドは こう味わえ!

ミドルサイズトレール並みの扱いやすさに、低中速域でピックアップのいいエンジンを搭載。それでいて車重はトレールバイクよりも軽いから、ダート走破性は高い。排気量にモノを言わせて走るような場所では非力さを感じるけれど、セクション系エンデューロでは軽さと扱いやすさがライダーを大いに助けてくれるはずだ。ただし振動は多めで、ナンバー付きとは言っても舗装路での移動はトレールバイクほどの快適さはない。そうした点を理解していれば、ナンバー付きの理由がクローズドコース以外を走れることだと納得できるだろう。125の軽さと250の安定感を兼ね備えた乗り味が、日本人にジャストサイズの車体に詰まっている。ダートでのマシンコントロールを身につけるのに最適な1台だよ。

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