ホンダ CRF250L
ホンダ CRF250L

ホンダ CRF250L – オールマイティに使える、ザ・トレールバイクという乗り味

掲載日:2015年12月22日 試乗インプレ・レビュー    

テストライド/小林直樹  写真/長谷川徹 まとめ/小川浩康
※この記事はオフロード雑誌『GARRRR』の人気企画『小林直樹のオフロードバイク・テイスティング』を再編集したものです
※記事の内容は雑誌掲載当時のものです(GARRRR vol.322 2013年1月発売

オールマイティに使えるマシン特性
ザ・トレールバイクという乗り味

今回のテストバイクCRF250Lには、新車発表時とローダウン仕様との比較テスト時に乗ったことがあるけれど、林道ツーリングはこれが初めて。1日乗り続けることで印象は変化するか? そんなことも意識しつつ走ってきたんだ。

クラッチの軽さがマシンを軽く感じさせ、
市街地走行もスムーズにこなす

発進停止を繰り返す市街地では、クラッチ操作の回数も必然的に増える。そんな時に、CRF250Lのクラッチ操作の軽さが大きなメリットになる。軽く操作できるので指が疲れにくいのはもちろん、スパッと切れてスパッとつながるから、マシンをスッと動かすことができる。余分なマシン挙動がないから、バイク自体も軽く感じられるんだ。

CRF250Lはエンジンもモーターのようにスムーズで、アクセルを開けた分だけ回転も上がっていく。パワーもいきなり立ち上がらず、低回転から高回転まで同じ感じで出てくる。だから各ギヤをレブリミットまで引っ張るより、早めにシフトアップしてやればスムーズに加速していける。ドカンというパワーはないので物足りなさを感じることもあるけれど、絶対的にパワー不足というわけではないから、市街地走行では扱いやすさを感じられるはずだ。

ブレーキも握った分だけ制動力が立ち上がるのでコントロールしやすいが、フロントサスが柔らかめなのでブレーキング時の沈み込みはやや大きめ。ただ、エンジンからの不快な振動がないので、乗り心地はいい。個人的にはフロントブレーキの遊びをもう少し増やしたい。レバーを握るとすぐに利きはじめるのでコントロール性はいいけれど、疲れている時にはそのクイックさをシビアに感じてしまうからだ。

安定感のあるハンドリングで
高速道路も苦痛を感じずに走り続けられる

250トレールで高速道路を走り続けるのは苦行に近いものがあったけれど、CRF250Lはそうしたイメージを払拭してくれるね。まずは振動の少なさ。高回転まで回してもエンジンから不快な振動や音が出ず、精神的負担はかなり軽く感じる。そして前後サスはダンパーがしっかり利いていて、余分な動きをしない。それでいて段差や目地を通過した際の衝撃はしっかり吸収してくれる。ハンドリングにはステアリングダンパーが装着されているようなしっとり感があって、わだちにタイヤが取られることもない。かと言ってレーンチェンジしにくいということもない。車重が安定感になっていて走行中にフラフラしないから、安心して高速巡航を続けることができる。高速巡航では、車重が軽すぎるとつねにバランス修正することになるから、一概に軽ければいいというわけじゃないんだ。

ただ、市街地走行でのパンチのなさは高速道路でも感じる。パワーに物を言わせてアクセルだけで加速していくことはできず、加速する時はシフトダウンする必要がある。そしてその時にもう少し高回転が伸びると、より加速感を味わえるようになる。でも吹け切る感じはないから、今までの250トレールのようなストレスはないんだ。フラフラせず、当たりの柔らかいシートはお尻も痛くなりにくい。ライディングポジションも楽だから、東京から大阪くらいまでは行こうという気になるよ。

クラッチ操作でパワーを引き出すワインディングは
ライダー次第で走りが変わる!

景色を楽しみながら流して走ったり、交通の流れに乗って移動するといった時は、ワインディングでもパワー不足を感じることはない。でもスポーティーに走るとなると、クラッチを使わないと加速させられないんだ。ドカンとパワーが出ないということは、不意にアクセルを開けてしまっても怖さを感じることが少なく、逆に思いきりアクセルを開けていける特性とも言える。

この時に半クラッチを使って瞬間的にパワーを引き出してやると、マシンをダッシュさせることができるようになる。タイトターンでは1速まで落とし、半クラッチを使ってアクセルを開けていき、パワーが立ち上がったらクラッチをつないでレブリミット付近まで引っ張って2速にシフトアップ。ブレーキのタッチ、利きも変わらずジワーっと制動力が立ち上がるからコントロールしやすい。

フロントが重くリヤが軽いというマシンの重量バランスは、ハンドリングの安定感にもなっていて狙ったラインをトレースしやすい。リーンインで体をイン側に入れればマシンはスッと向きを変えていく。この時のマシン左右方向への動きには重さは感じず、必要以上に倒れ込んでいくこともない。パンチのなさがマシン挙動をマイルドにしているけれど、それが流しても攻めても走れる汎用性の高さにもなっている。じゃじゃ馬を乗りこなす楽しさはないけれど、マシン性能を引き出して速く走るのはライダー次第。乗り手のスキルが反映されるマシンでもあるんだ。

フラットな乗り心地は
ビギナーでも安心してダート走行を楽しめる

CRF250Lはフロントサスは硬くなく柔らかくもない。ストロークは少なめでフニャフニャした腰砕け感はない。それでもゴツゴツしたところがなく、シンプルな構造ではあるけれど、いい仕事をしている感じがヒシヒシと伝わってくる。リヤサスもストローク感が少なく、マシンの姿勢変化が少ないフラットな乗り心地を提供してくれる。前輪は接地感があって、路面をしっかりグリップ、後輪もスライドしすぎず、トラクション性がいい。最低地上高もまったく気にならず、ステップが引っかかることも一切なかった。林道ではクセのない乗り味で、何も意識することなくリーンアウトでコーナーもクリアしていける。

これはエンジンとのマッチングのよさも要因になっている。低中速トルクがあって、パワーも思ったとおりに出てくる。エンジンの回転上昇はスムーズだけど、アクセルを戻した時のエンジン回転の低下も早い。だから、ある程度のペースで走るには、トルクがついてくる回転域(パワーバンド)をキープしてやる必要があるけれど、それができなくても低中速トルクのおかげでマッタリ走ることができる。安定志向の乗り心地と適度なパワーのエンジンで、角のない乗り味になっている。それを乗りやすさと取るか、面白みのなさと取るか。そこがCRF250Lのダートでの評価を大きく分ける点になるだろうね。

安定したバランスのよさを
崩した先に到達できるアクションライディング

フロントヘビーの重心、クイックすぎない反応のステップバランス、マイルドなパワー特性。それらがCRF250Lの乗り味を安定志向にしている。この安定度の高さは、リヤスライドの振り出しにくさになっているけれど、スライド中にもマシンを安定させてくれるのでハイサイドやスリップダウンになりにくい。しかし、フロントヘビーはウイリーのしにくさになり、ウイリーした後のバランス修正も難しくする。フロントアップしなければ通過できないようなトレッキング的なセクションがCRF250Lの泣き所とも言えるだろう。

ただ、フロントヘビーの重心が、それ以外の路面で抜群の接地感とハンドリングのよさを実現してくれたのも事実。CRF250Lはダートだけを走るオフロードレーサーではなく、オンもオフも走るトレールバイクとして正常進化している、とおれには感じられた。

この冬は編集部のある関東地方でも雪の降り始めが早く、積雪量も例年以上になっている。ということもあり、真冬でも比較的温暖な房総半島をワンデイツーリングしてきた。テスト当日は最高気温15℃。風は強かったものの、快晴で暖かさも感じられる穏やかな1日だった。房総半島は東京近郊ということあり、総走行距離は約200kmとなったが、ダート路面はフラット、ガレ場、マディ、サンド、ウッズとバラエティに富んだものにできた。総燃費は25.8km/L。ダートやワインディングで高回転を多用したにも関わらず、25.0km/Lを下回らなかった。一般的なライダーであれば、コンスタントに30.0km/L台をキープできるだろう。燃料タンク容量は7.7LとXR250から約2Lほど減少しているが、高速移動時の快適性は大幅に向上しているので、休憩も含めた1日の航続可能距離(時間)はむしろ伸びていると感じられた。

写真左/リヤスライドは意図的にバランスを崩した状態でもある。この状態に持ち込むには、思い切ったボディアクションとアクセルワークが必要となる。スライド時の車体も安定状態に入りやすい。写真右/エンジンに急かされないのでマッタリ走っても楽しい。キビキビ走るにはクラッチワークが必須となるが、扱いきれるパワー特性でコントロール不能状態になりにくいのも特徴と言える。

振動と騒音のなさ。安定したバランス。ライダーにストレスを与える要素が少ないので、高速道路を淡々と走り続けても疲れにくい。燃費のよさもあり、ツーリングマシンとしての適性はかなり高い。

HONDA CRF250L DATA FILEは次ページにて

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