ハスクバーナ TR650 テラ ABS
ハスクバーナ TR650 テラ ABS

ハスクバーナ TR650 テラ ABS – タフさと気軽さで俊敏に駆ける!

掲載日:2013年03月08日 試乗インプレ・レビュー    

取材・写真・文/田宮 徹

スクバーナ TR650 テラ ABSの試乗インプレッション

スクバーナ TR650 テラ ABSの画像

ファインチューン感にあふれる
元気の良いシングルエンジンが魅力

このTR650 テラは、ABS無し仕様とABS標準装備仕様を選択する事が出来る。そしてこのABSの有無によって、140/80-18または140/70-17にリアタイヤサイズが変更されるという、珍しい設計になっている。今回試乗したのは、ABSを装備したタイプ。そのため後輪サイズは17インチ径で、シート高は10mm低い865mmとなっている。

しかし、このシートが低い仕様であっても、身長167cmで体重66kgの筆者だと、もっとも足着き性が良い位置に跨った場合でも、両足の裏がかろうじて接地する程度。さすがに、600ccを超えるデュアルパーパスモデルである。ただし、車重は燃料満タンでも184kgと、このクラスではライトウェイト。片足で支えているのもそれほど苦ではなく、例えばこれまで250ccクラスあたりのオフロードバイクに慣れ親しんで来たライダーであれば、意外と不安は少ないのではないかと思われる。

スクバーナ TR650 テラ ABSの画像

さて、走り出してまず感じるのは、ハスクバーナによってファインチューンされた652cc水冷単気筒エンジンの、ライダーをわくわくさせるパワーフィールとサウンドだ。停車状態からのフル加速では、シングルエンジンらしい歯切れの良い排気音と共に、俊敏なスタートダッシュを見せる。ややローギアードという事もあり、1速であれば体重移動をさせなくてもアクセルを開け切っているだけで、フロントタイヤが地面を離れる。もちろん、そのままギアを上げていけば、日本国内の法定最高速度などあっという間だ。

一般的な市街地走行であれば、低中回転域でも十分なトルクという感じだが、このエンジンが特に力強さを発揮するのは、5,500回転を超えてから。スポーティに操るなら、この領域をなるべくキープしたい。最高出力は58馬力と、言ってみれば国内仕様の4気筒400ccと同レベル。リッタークラスとは違って、高回転をキープして走るのも怖くない。

スクバーナ TR650 テラ ABSの画像

通常時の走行では、4,000回転以下の領域で、アクセルを全閉状態から少し開けた時に、いわゆるドンツキのような症状を感じる事があった。ただし、大きく車体姿勢を乱してしまうようなレベルのものではなく、走り込むうちに慣れるレベルだった。ちなみに、トップギアで100km/h時の回転数が約4,000回転。日本の道路事情を考えれば、まったりと巡航するのにも向く設定と言えるだろう。

車体は、極めて高いスポーツ性能、と言うよりは、全体のバランスを重視した印象の設計。そしてそれは、実際の走りにも現れている。コーナリングは、ややハンドル舵角を多目に感じさせながらも、非常にニュートラル。超高速コーナーでは、オフロードでの走行も意識した機種という事もあってか、やや挙動が不安定になるシーンもあったが、そのような状況でも十分にライダーの制御下にあった。全体的には、驚くような俊敏性を想像していたが、意外にも安定感があったという印象で、舗装路の上では気軽にバンクさせる事が出来た。

スクバーナ TR650 テラ ABSの画像

今回試乗したABS標準装備モデルは、左手スイッチで作動のオン/オフを選択できる。このABSは、一般的な舗装路の走行時には絶大な効力と安心感を発揮してくれた。元気良く加速しようとするエンジン、気軽に寝かせられる車体、そして良く止まるブレーキの組み合わせと来れば、ゆったり流そうとしても、ついアクティブに楽しみたくなってしまうというものだ。

また今回の試乗では、ノーマルタイヤ(メッツラーのエンデューロ 3 サハラ)と規定空気圧のまま、砂利が敷かれた未舗装路や、締まった土のフラットダートを走行してみた。するとハイスピードでの走行では、安定志向のボディバランスと、適度なエンジンパフォーマンスが組み合わさる事で、軽くカウンターを当てたフル加速から、スタンディングやシッティングでのコーナリングまで、これが驚くほど気持ち良い。リッター前後の排気量があるビッグオフと比べれば、遥かに扱い易さがあり、つい時間を忘れて楽しんでしまった。一方で、トコトコとゆっくり道を行くようなシーンでも、極低回転域でエンジンが粘り、非常に走り易かった。

スクバーナ TR650 テラ ABSの画像

なおABSは、フラットダートでは後輪を中心に効果を発揮。フロントは、一瞬ロックするようなシーンが増えるので、過信は禁物といったところ。スイッチ操作でABSをキャンセルしてライディングする方が、より楽しめるし、路面や走行の状況によっては制動距離を短く出来るというのは、他のABS搭載ビッグオフと同じだ。

ややおっとりとしたイメージのあるベースエンジンは、ハスクバーナのチューンによって、公道走行用から逸脱しないレベルで刺激を得た。日本での車両販売価格は、ABS無しなら82万5,000円、ABS仕様でも87万7,000円と、ハスクバーナというブランドイメージを考えればかなり戦略的だ。エンジンガードや荷物積載用のケース類など、オプションも充実している。

ダートを含めた旅用にするか、シティラン中心で遊ぶか、はたまたその両方を貪欲に楽しむか。性能と価格と遊び方のバランスに優れた、世界的なヒットの予感がする1台だった。

スクバーナ TR650 テラ ABSの詳細写真は次ページにて

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