ヤマハ XT250X
ヤマハ XT250X

ヤマハ XT250X – 都会でスポーツするストリートバイクの新しい形

掲載日:2010年11月04日 試乗インプレ・レビュー    

都会でスポーツする
ストリートバイクの新しい形とは・・・

“市街地を爽快に駆けるスタイリッシュなスポーツ”として2006年にデビューしたXT250X。2005年に全面刷新したヤマハのロングセラーモデル、SEROW250をベースに近年人気を集めるモタードのテイストを加え、都会派のスタイリッシュなデザイン感覚でまとめ上げたモデルである。エンジンと車体はセロー譲りだが、前後ホイールは17インチ化され、これに合わせて前後サスペンションに専用セッティングを施しブレーキも強化されるなど、オンロード走行に適した本格的な作りになっているのが特徴。専用デザインのフロントマスクやLEDタイプのテールランプを採用するなど、ヤマハらしい繊細でスマートな外観が与えられている点にも注目したい。今回試乗したのは2008年以降に投入されたFI仕様のニューモデルで、低中速域のトルクアップや始動性、環境性能の向上が図られている。省エネや環境対策、渋滞問題などが取り沙汰される中、混沌とした都会の中をまるで泳ぐように軽快なフットワークで駆け抜けていく…。XT250Xにはそんなイメージがよく似合う。シティモタードともいうべき、ストリートスポーツの新しい形を見ていこう。

ヤマハ XT250Xの試乗インプレッション

ヤマハ XT250Xの画像

“操る”楽しさを再発見
これが本当の自在感だ

今回試乗したのは現行のFI仕様モデル。白ベースにモノトーンでまとめられたカラーリングは落ち着きがあり、車体デザインもシンプルで上品さを感じさせるものとなっている。いかにもレーシーな本気のモタードモデルと比べると、押し出しが強くない分、気負うことなくどこへでも出かけられる気軽さがある。普段着のままスニーカーで出かけてみようか…。そんな気持ちにさせてくれるバイクだ。それでいて、LEDタイプのテールランプやアルマイト仕上げのマフラーガードなど、ちょっとしたパーツの意匠にもこだわりが見られ、250ccクラスとしてはなかなか上質感もある。いい大人が乗っても“キマる”バイクだと思う。同じエンジンとフレームを持つ兄弟車のセローでは土の香りが強すぎるし、トリッカーだとちょっとヤンチャすぎると感じる人にはまさにうってつけだろう。

跨ってみると足着きの良さにびっくり。シート高は790㎜とネイキッド並みだが、サスペンションがソフトで沈み込み量が大きい。車幅もスリムなので、データから想像する以上に足が着くのだ。実際のところ、セローやトリッカーよりもシート高は低く、軽量でハンドル切れ角も大きいので取り回しもとても楽。普段ビッグバイクに慣れた身としては(こう言っては失礼かもしれないが)、まるでオモチャのよう。小柄な女性でも怖がらずに取り回せるはずだ。
エンジンをかけてみると始動性もいい。従来のキャブ仕様では冷間時に少しくすぶる感じがあったが、新型は目覚めがいい。チョークを使わなくても最初から安定したアイドリングが得られるなどFI化のメリットを感じさせてくれる部分だ。セローでも聞きなれたサウンドは適度に消音されながらも耳に心地良いパルス感を届けてくれる。回転数を上げなければかなり静かなので、住宅地の中を通過していても気まずさを感じずに済むはずだ。走り出すと街中はXT250Xの独壇場。軽量でスリムな車体とトライアル車並みのハンドル切れ角を生かして渋滞路もなんのその。まるで、狭い岩場の中を自由に泳ぎ回る小魚のようにスイスイと走り抜けていける。もちろん、すり抜けを奨励するわけではないが、気が付くと前に出てしまう、そんな印象だ。

ヤマハ XT250Xの画像

250ccだから高速道路を利用できる点も強み。首都高にも乗ってみたが、スロットルを開ければクルマの流れを十分リードできるだけの動力的な余裕もあり、パワーカーブが寝て行く前の中速トルクの美味しいレンジを使ってテンポよくシフトアップしていけば、低いギヤでそれほど引っ張らなくても十分に俊敏な加速が得られる。出力的には従来のキャブ仕様よりピークで3psほど落とされているのだが、実用域ではむしろパワフルな気がする。FIらしいスロットルレスポンスのよさがそう感じさせるのかもしれない。車体が軽い分ブレーキもよく効く。フルブレーキングしたときはさすがに姿勢変化は大きいが、専用チューンが施されたロードタイヤのおかげでフロントグリップにも安心感がある。

タイトコーナーでの俊敏さは言うまでもないが、高速コーナーでの旋回安定性も十分なレベル。フロント21インチのセローがあくまでもトレール車的なリヤステア感覚で曲がるのに比べると、前後17インチ化された XT250Xはよりロードバイクっぽいニュートラルなハンドリングに仕上がっている。ただ、欲を言えばフロントにもう少し落ち着きが欲しい。しなやかな路面追従性を見せてくれるリヤ側のボトムリンク式モノショックに比べると、フロントは減衰がやや足りない印象だ。フロント側もダンパー調整ができると申し分ないのだが・・・。とはいえ、街中を走る分には十分な足回り性能であることは付け加えておく。

そして、今回最も印象的だったのが“操る楽しさ”。安全な空き地を見つけて乗り入れてみたが、フロントアップやジャックナイフのような遊びも簡単にできてしまうし、慣れてくれば急坂を使ったキャンバーターンや階段の昇り降りなども普通にできてしまう。FIを過大評価するわけではないが、以前にも増して極低速域に粘りがあり、「パスッ」とエンストするあの不穏な気配がしないのだ。車体が軽くて何かあっても足がすぐ着くし、ハンドルも凄く切れるので、場所さえあれば都会でトライアルの真似ごとをして遊ぶことだってできる。180psのスーパースポーツでもできないことを、たった18psしかないXT250Xが楽々とこなしてしまう。スポーツの神髄はパワーではないのだ。そう考えると痛快ではないか。

XT250Xに乗ってみてあらためて、バイク本来の楽しさを再発見できた気がした。これからバイクに乗り始めようという人にはもちろん、すでにビッグバイクを所有している人にもセカンドバイクとしておすすめしたい一台だ。

ヤマハ XT250Xの特徴は次ページにて

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