KTM 690 ENDURO R
KTM 690 ENDURO R
パワフル&ロングサスのオレンジモンスター

テストライダー/石井正美

文・まとめ/ガルル編集部

写真/柴田直行

取材協力/KTM JAPAN

KTM 690 ENDURO R – パワフル&ロングサスのオレンジモンスター

掲載日:2009年03月02日 試乗インプレ・レビュー    

パワフル&ロングサスの
オレンジモンスター

KTMはレーススペックを持ったマシン造りを得意とするメーカーで、このKTM 690 ENDURO Rもそんなマシンのひとつ。公道走行が可能なナンバー付きながら、ゼッケンナンバーを貼ってくださいといわんばかりのフロントマスクからもレーシーな雰囲気が伝わってくる。

この足長でアクセントの効いたルックスのマシンはBAJA500に参戦して690エンデューロの鮮烈なデビューにひと役を買ったバハスペシャルを思い起こさせる。我々ライダーはそんなワークスマシンやそのレプリカモデルに目がなく、スタイルの良い女性の後ろ姿を追うように目線を向けてしまうものではないだろうか。

先に発売され、ベースとなった690エンデューロとの大きな違いはサスペンションで、ハイスピードダートを意識したと思われる25mmのストロークアップが図られている。LC4エンジンは2007年に大きくリニューアルしており、ツインのLC8エンジンと同様にスーパーモトなど各モデルには「R」の称号を持つ上位機種を、最近のKTMは設けている。この690エンデューロRもそのひとつで、KTMのイメージカラーであるオレンジのフレームに、白と黒を基調とした外装デザインで統一されている。

激しく石を飛ばしながら(その飛距離がハンパじゃない)試乗しているのはエンデューロ界のレジェンド石井正美氏だ。石井氏は全日本エンデューロでゼッケン1をつける2008年度シリーズのチャンピオン。ふだんは2ストのエンデューロレーサーに跨っている。その石井正美氏の第一声はというと、やはりシート高のことだった。

KTM 690ENDURO Rの画像

「跨るのもひと工夫いるね。両足がつま先立ちでも着かないから、昔のパリダカで小柄なライダーがやっていたみたいに、片足を載せてから走り出して跳び乗ったほうがバランスを崩さない」と苦笑い。

オフロードマシンのサスペンションは性能と足着き性を天秤にかけたトレードオフの関係にあるから、エンデューロRはそういった意味でよりレースマシンに近い存在といえるだろう。

「エンジンは驚くほどパワフルだね。これだったらBAJAのように広大な場所でも十分に戦えるのがわかる。正直、日本の林道では全開にできる場所はないんじゃないかなぁ。それぐらい圧倒的なパワーを持っている。それでいて振動は少ない。ただ、アクセルの開け始めでワンテンポ遅れる印象がある。だから回転が上がってパワーがついてきたときには一気に加速する。最近の250インジェクション車のように、極低速からツキがいいというフィーリングじゃない、というのかな。パワー自体は比べものにならないけれどね。車体は思っていたよりも取り回しが軽い。ハンドリングは250より軽快に感じるよ。ただ、Uターンするときにハンドルを大きく切ろうとしたら、すぐストッパーに当たってバランスを崩しそうになった。KTMのエンデューロバイクは全般的に(ハンドルを)大きく切れないんだけど、これはとくに切れ角が少ないようだね。車体は確かに大きいんだけど、意外とバンクさせられるね。これは速いよ」

マシンに慣れてくるとコーナーのバンクにマシンを寝かせる石井氏。600クラスのマシンなのに、そんな走りを見ているとナンバー付きだということを忘れてしまう。690エンデューロRは、KTMのスローガンである『READY TO RACE』をより顕著に具現化したモデルのようだ。

すでに690エンデューロが発売されているのでご存じの方もいると思うが、690エンデューロRは燃料タンクが股の間ではなくシートの下にある。990アドベンチャーシリーズ同様、エンジンの上にはエアクリーナーボックスがレイアウトされている。これによってビッグオフにありがちな燃料満タン時の重心バランスの崩れや、ブレーキング時のフロントヘビーも同時に解消している。それでいて約25km/Lという好燃費によって12Lタンクで約300kmという航続距離を確保している。林道ツーリングには十分な数値といえるだろう。

プラスチックハンドガードやアンダーガード、白いゼッケンプレートのベースデカールも標準の装備。全体的なデザインは、Rの象徴であるオレンジのフレームカラーだけでなく、うまくレーシーな雰囲気をデザインとしても生かしているといえる。

KTM 690ENDURO Rの詳細は次ページにて

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