掲載日:2009年01月29日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
オフロードバイクの車体とオンロードバイクの足回りを組み合わせたカスタムからはじまったスーパーモタードは、今や各メーカーがしのぎを削る人気カテゴリとなっている。その中でもDトラッカーは、カワサキが国内メーカーとして初めて投入したスーパーモタードで、パイオニア的存在だ。「戦う4スト」として、パフォーマンスを高く評価されていたKLX250をベースにしたDトラッカーは、斬新なスタイルに注目したストリート派から本気の性能を追い求めるスポーツ派まで幅広い支持を集め、10年に渡って販売されるベストセラーモデルとなった。そして2008年、強化された排気ガス規制に対応するためにフルモデルチェンジ。スタイルを一新し、フューエルインジェクションを搭載、「DトラッカーX」として生まれ変わった。排気ガス規制対応に対応すると、燃費は向上するがエンジンパフォーマンスに物足りなさを感じることがある。特に走りの良さでならしたDトラッカーの後継者であるだけに、新モデルの走行性能は気になるところだ。フルモデルチェンジによって生まれたDトラッカーXの実力はどのようなものか、今回の試乗インプレッションを通して、じっくりと確認してみるとしよう。
DトラッカーXでまず目をひくポイントは、先代より大幅に変更されたアグレッシブなスタイルだ。以前はコンベンショナルなオフロードバイク・スタイルだったが、今回よりベースモデルのKLXともども、シャープなラインが際立つルックスとなっている。特にヘッドライトは2眼式の個性的なものへと変更され、ヘッドライト光量も向上。シュラウドはレース車両をイメージした2ピースタイプ、フロントフェンダーはモタードであることを主張する、エッジの効いたデザインのショートフェンダーを採用している。一目見ただけで「新しいDトラッカー」と分かるスタイルは、ストリートにおいて印象的な存在だ。
何よりDトラッカーで注目したいのは、走りのパフォーマンスに関わる部分。エンジン形式はこれまで同様4ストロークDOHC水冷単気筒エンジンだが、キャブレターに変わって新たにフューエルインジェクションシステムに変更。気になるパワーだが、がシャーシダイナモで実際に計測したデータによると(オフロードバイク専門誌GARRRR調べ)、キャブレターモデルと大差はない。むしろ高性能なインジェクターを採用することで、トルクカーブがよりなめらかに改善されている。足回りもモデルチェンジに合わせて一新されているのも見逃せない。前後サスペンションはDトラッカーXにあわせた専用セッティングが行われたほか、新設計の軽量D断面スイングアームを採用。運動性に大きな影響を与えるバネ下重量を軽減している。ブレーキシステムには前後に大径ペータルローターとしており、特にフロントは前モデルが250mmであるのに対し、300mmと大幅に拡大。高い制動力を実現している。スーパーモタードカテゴリをリードするマシンとして、DトラッカーXはそれにふさわしい大幅な進化を遂げていると言えるだろう。