BMW Motorrad R1200GS
BMW Motorrad R1200GS

BMW Motorrad R1200GS – エンジンと駆動系は全面改良

掲載日:2008年05月01日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

外観上はマイナーチェンジだが
走りに関する変更は見逃せない

新世代のエンジンR259ユニットを搭載してR1100GSが発売されたのは1994年のこと。オン・オフ問わず十分な性能を有していたR1100GSが長距離ツアラーとしても極めて優秀なパッケージであることが認識され始めると、"GS"はその勢力を徐々に拡大。その後に発表されたR1150GS、R1150GSアドベンチャーも次々と成功を収め、2004年に発表されたR1200GSはBMWの最多販売モデルにまで上りつめたのである。

そして、そのR1200GSが2008年モデルでマイナーチェンジを受けた。10年以上の年月をかけて人気モデルへと成長し続けてきたGSだけにドラマチックな変化は期待しにくい状況だが、こうして実物を目の前にして見ても、キープコンセプトであることは明確。外観上の変化は予想通り少ない。シート、フロントフェンダー、フロントフォーク、タンク、テールライト、ブレーキライトの変更に気づくが全体的な佇まいは従来モデルを踏襲している。しかし、それとは対照的に走りに関わる部分には重要な変更が加えられた。エンジンは5馬力ほど出力が向上し、ミッションは全面改良。メーカーオプションとしてエンデューロESA、エンデューロASCが搭載可能となったことなどが大きなトピックスだ。これらの変更により、GSの走りがどのように変化したのか。これが今回のインプレッションの最大のテーマである。

BMW Motorrad R1200GS 特徴

エンジンと駆動系は全面改良
エンデューロESA/ASCにも注目

BMW Motorrad R1200GS 写真それでは、マイナーチェンジ後のR1200GSを詳細に見ていくことにしよう。まずはエンジンだ。数値的にはプラス5馬力でしかないが、実は設計変更ではなくエンジンそのものが変更されている。R259ユニット以降、BMWのボクサーエンジンには細部の仕様が異なる2系統のユニットが用意され、GS系はロードスター系モデルとエンジンを共通化し、その他とは違うエンジンを搭載するのが常だった。しかし、このモデルとなってからは、チューニングこそ異なるもののR1200RTやST、そしてRと共通のエンジンを搭載している。これにより、最高出力は500回転、最高トルクは250回転ほど高い回転数で発生し、それぞれ7500rpm、5750rpmとなった。また、オルタネーターは720ワットに強化されたほか、状況に応じてレギュラーガソリンも使用可能とされている。

次に注目すべきは駆動系。トランスミッションが全面改良されたほか、ファイナルのギアレシオも変更を受け、実質的には別物になった。両方ともエンジンの変更に合わせて新たなギアレシオが与えられたGS専用品で、全体としてはややローギアード化されている。また、高回転型になったエンジンとの組み合わせではあるが、若干燃費は向上。このあたりはエンジンのチューニングや熟成が進んだ証と言えるだろう。さらに、このGSで見逃せない装備が工場オプションのエンデューロESA/ASCだ。エンデューロESAのプリロードは従来型同様の3モードに加え、フラットダート、ハードダートの2モードを追加。ダンパーは、これまで通りのコンフォート、ノーマル、スポーツの3種類だが、組み合わせることでオフロード用のセッティング6パターンが追加されたことになる。エンデューロASCも従来型の進化版。オフロードをカバーする性能を兼ね備え、オン・オフ問わずリアタイヤの空転をセンサーが感知し、それを効果的に抑制するものだ。

このように、エンジンと駆動系の変更、そしてエンデューロESA/ASCの設定など、今回のマイナーチェンジは単なるフェイスリフトにとどまらず、走りの質を高めることに重きが置かれていることは確かだ。相当なコストをかけて実施された本気のマイナーチェンジであることが窺えるのである。

2008年型モデルとなって、エンジンはRT、ST、Rとエンジンが共通化された。もちろん、GS専用チューニングが施されたユニットであることは言うまでもない。出力は5馬力プラス。レギュラーガソリンにも対応。

兄弟モデルと共通化されたエンジン

2008年型モデルとなって、エンジンはRT、ST、Rとエンジンが共通化された。もちろん、GS専用チューニングが施されたユニットであることは言うまでもない。出力は5馬力プラス。レギュラーガソリンにも対応。

従来モデルから表面処理と色が変更された。フォークの内部構造に変更はないと思われるが、よりしなやかな感覚が強まり、エンデューロESA付きサスペンションユニットとのマッチングは非常に好ましい。

GSとのマッチングが進むテレレバーサス

従来モデルから表面処理と色が変更された。フォークの内部構造に変更はないと思われるが、よりしなやかな感覚が強まり、エンデューロESA付きサスペンションユニットとのマッチングは非常に好ましい。

トランスミッションの全面改良がこのモデルの一番大きなトピックと言えるかもしれない。エンジンのフィーリング自体は従来モデルと大きな違いはないが、トランスミッションの変更によるトラクションの向上を強く感じる。

全面改良が施されたトランスミッション

トランスミッションの全面改良がこのモデルの一番大きなトピックと言えるかもしれない。エンジンのフィーリング自体は従来モデルと大きな違いはないが、トランスミッションの変更によるトラクションの向上を強く感じる。

ボタンひとつで前後サスの特性を変更できるエンデューロESA。試してみると、オフロード用セッティングの効果は大きく、走破性の向上に寄与する。普段はオン・オフ関わらず好きなセッティングを選んで問題ない。

オフロード対応のエンデューロESA

ボタンひとつで前後サスの特性を変更できるエンデューロESA。試してみると、オフロード用セッティングの効果は大きく、走破性の向上に寄与する。普段はオン・オフ関わらず好きなセッティングを選んで問題ない。

BMW Motorrad R1200GS 試乗インプレッション

基本性能はオンロードを追求
オプションでオフロード性能を強化

BMW Motorrad R1200GS 写真巨大なGSで街中をクルージングするのは相変わらず気分が良いものだ。4輪車のルーフを上から眺め、船のような乗り心地を堪能していると、多くのドライバーがギョッとした顔でこちらを見上げる。そんなシーンが繰り返されるのは歴代GSに共通した特徴だ。

1200になり、より逞しくなったエンジンの感触にも大きな変化はないようだ。しかし、従来モデルの極低回転域で稀に感じていた「もしかしたらエンストするかも」という不安感は完全に払拭。粘り強いエンジンに生まれ変わっていることに気づく。ユニット自体は若干だが高回転型になったので、この変化は駆動系全体の変更とエンジン制御の熟成によってもたらされているのだろう。発進時だけではなく、全域に渡ってトルクが一枚上乗せされた感覚があり、ワインディングを含むあらゆるステージでの俊足ぶりも相変わらずだ。フロントがテレレバーのため、ハンドルバーを持って多少強引に振り回すようなライディングでも破綻する気配すらない。むしろ、そうした乗り方が相応しいと感じてしまうほど、したたかなハンドリングには磨きが掛かっている。今回のマイナーチェンジによって、R1200GSの軸足はよりオンロード側に移されたと明確に感じた。

BMW Motorrad R1200GS 写真ところが、嬉しい誤算があった。それはオフロード性能でも大きな進化が見られたことだ。これをもたらしたのは紛れもないエンデューロESA/ASCの存在。特に印象的だったのはフロントサスペンションだ。とても良く動き、アクセルを開けるとスッとスムーズにフロントフォークが伸びる。従来のテレレバー車には希薄だった、ストロークを積極的にコントロールできる感覚があり、これがオフロードでの乗りやすさに繋がっている。ダンパーは好みの問題もあるが、ソフトなセッティングを選択すると不整地でのロードホールディングが向上。オンロード向けのタイヤ性能をかなりカバーすることができた。また、オフロード用のプリロード設定を選択することで車高は最大で20ミリアップし、走破性自体も高くなる。これにタイヤの空転を制御するエンデューロASCが装備されているのだから、GSというバイクにこれ以上何を望むのか、といった感じだ。全てのライダーに必要とは言わないが、GSでオフを走ることを考えているライダーには、この2つのオプションは強くお勧めしたい。

BMW Motorrad R1200GS こんな方にオススメ

オンロードを強化した広大な守備範囲
軽快な走りならR1200GSに決まり

林道ツーリングやロングツーリングが好きな方はもちろん、街中を走る機会が多いライダーにR1200GSはオススメだ。兄弟モデルのR1200GSアドベンチャーもあるが、こちらは重装備のためか街中では少々重たい印象。1速をよりローギアードにして重量増に対応しているが、街中をキビキビと走るなら軽快なR1200GSにかなわない。また、こういった走りは本来RTやST、さらにはRと言った符号を持つモデルの守備範囲であったわけだが、販売台数が示すとおり、今やGSはBMWのメインストリーム。新型になったR1200GSが舗装路面での守備範囲を拡大しているのは当然の流れだと言えるだろう。用途に応じて前述のエンデューロESA/ASCなどのオプションをチョイスすれば、別途オフロード性能を補強することは可能なのだから、基本的な走りに軽快感を期待するのであればR1200GSが適任だと言える。

BMW Motorrad R1200GS 総合評価

また一歩先を行ってしまった
ビッグオフのベンチマーク

かつてのビッグオフは、オートバイのカテゴリとしてやや特殊なものであった。しかし、そのパッケージングがロングツーリングや街中での走りにも適合するものであることが広く認知されるようになり、今ではすっかり一般化した感がある。この立役者の一人がBMWのGSであることは紛れもない事実であり、その功績はあまりにも大きい。そして、忘れてはならないのが、GSは常に一歩先を行く存在でもあったということだ。従来モデルと比較すると、今回のR1200GSは明確にオンロード性能が強化された。しかしその一方で、先進的なオプションがオフロードでの走りも補強していることは注目に値する。GSの後を追い、オフロード色を薄めたライバルたちが続々と登場するなか、先頭を走るGSはオフを含むオールラウンドな性能をより強化してしまった。今後もこのカテゴリのベンチマークとして君臨しつづけるであろうR1200GS。ビッグオフに興味があるライダーなら、このモデルを候補から外すことは難しいと言えるのではないだろうか。

SPECIFICATIONS - BMW Motorrad R 1200 GS

BMW Motorrad R1200GS 写真

価格(消費税込み) =
199万4,000円(Hi Line)
工場オプション
・ESA 9万4,500円アップ(注文生産)
・ASC 4万2,000円アップ
・クロススポークホイール 2万1,000円アップ

2008年の2月にマイナーチェンジ。外観の変化は少ないものの、エンジン、ミッションなどを全面改良。さらに、オプションのエンデューロESAやエンデューロASCなどによりオフロード性能も強化可能。ビッグオフのベンチマークとも言うべき1台。

■エンジン = 空油冷4ストロー水平対向2気筒 1,169ccc
■最高出力 = 105PS/7,500rpm
■最大トルク = 115N・m/5,750rpm

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