【オンタイム制エンデューロ】という遊び

【オンタイム制エンデューロ】という遊び

掲載日:2014年04月30日 オフロード遊び    

更新日/2014年04月30日  文/ダートライド編集部  

時間の使い方がキモになる競技
オフロードの総合力が試される

エンデューロと名はつくものの、耐久系エンデューロのような和気あいあいとした雰囲気ではなく、れっきとした競技になる。『競技区間』と『移動区間』とでコースが別れ、前者では規程のコースでの純粋なタイムを計測。セクションがいくつも設けられ、トータルの合計タイムが短いほうが成績は良くなる。移動区間は、競技区間との間に設けられ、速く走る必要はないが定められた時間でゴールしないと、ペナルティが課される。難しいのは、速過ぎても同様にペナルティ対象となり、規定時間ぴったりでタイムラインを通過してはじめてペナルティが0(ゼロ)となる。

 

また、朝早い時間の車検後や、複数日に及ぶレースで1日のレースが終わると、車両は保管エリアに入れられ、誰も触れなくなり、自由にマシンをメンテナンス出来ない、という独特のルールもある。翌日のレースに向けて、もしタイヤ交換をするとなると、できるだけオンタイムで走行しないと、必然的に寝る時間(休み時間)が短くなるか、そもそも交換する時間がなくなるなど、ハードな設定になる。作業をメカニックに預けられないルールのレースも多く、よって、セルフメンテナンスの技術が要求される一面も持つ。

 

コースは、日本では山野、夏場のスキー場などを利用することが多く、意図的な造成はしないのでジャンプはないが、逆に手付かずの自然が残るので、大きな落差や岩がゴロゴロするセクション、逆バンクの狭いカーブなど、トライアル的なセクションが多くなる。スピードと共に、バランス感覚とタイヤのトラクションコントロール(ボディアクション)のスキルが要求される競技でもある。

 

日本では、このオンタイム制エンデューロを簡易的にした『JEC-Lites』というシリーズ戦があるが、Litesとはいえコースはそれなりのレベル。トレール車で舗装路しか走ったことがない人は、ちょっと厳しいだろう。また、転倒が多くなるレースでもあるため、レーサーに比べ車重のあるトレール車はやや不利。エンジンストップの可能性も増えるので、最低でもセルスターターか、始動性の良いキックスタートが必要になる。その他、周回数とタイムを書き込むカードを自分で持つ必要があるので、身体に付けるかバイクに付けるか、の用意が必要。カードは各所にあるチェックエリアで係員に渡し、チェックとタイム記入を受けるかたちになる。

 

練習に向いた公式・常設コースは全国にいくつかあるが、オンタイム制エンデューロで使用(想定)されるコースは、1人で転倒するとリカバリーが不可能な場所・状況もあるため、単独で挑むのは危険。コースの管理人が定期的に巡回しているわけでもなく、奥深い山林だと見通しも利かないため、何かあっても発見が難しい。挑戦したい人は、モトクロスコースや林道でオフロードスキルを磨きながら、仲間を見つけて本格コースに挑んだほうがよいだろう。

 

難所でスタックする(車体を深く泥に埋めてしまう)シーンも多く、ガソリンは浪費するしクラッチも傷め、最悪の場合、クラッチ板が激しく消耗することもある。最低限、ガソリンのストックは用意したい。タイヤもさすがに公道用は厳しい。各タイヤメーカーが販売する、公道走行可能な(FIM認可)のエンデューロタイヤに履き替え、なおかつなるべく新しい状態がよい。空気圧は0.5気圧ぐらいまで下げて走る人が多いが、ビードストッパーがないとタイヤがズレるので、未装着車は事前にお店で取り付けてもらおう。

 

レースフォーマットは厳しいものになるが、自然の地形や自分との戦い、また時間との戦いになるので、ハマると独特の面白さがある。トレール車では無謀、と思われるかもしれないが、参加者は少なからずいるし、経験を積めば楽しめる。ただ、さすがにレース会場までの移動は1BOXを借りたほうが無難。完全自走できるのは、余程のベテランだ。

 

【必要になるもの】

安全基準をクリアしたヘルメット、ゴーグル、しっかりとしたグローブ、スネまでガードするオフロードブーツ、膝ガード(気にする人は肘のガードも)、汚れたり転んでもよい衣類。タイムカードを身に付ける場合、その用意。1日走るので天候の変化に対応できる備え(食事、水分、ガソリン、休憩アイテム、日除け)。小型の空気入れ。長時間コース上に1人だけになるので、移動しながら水分を摂れるウォーターバッグもあったほうがよい。酷い転倒をするとレバー類が折れることがあるので、スペアのレバー(左右)、交換用の工具など。

 

【トレール車に必要な作業】

移動区間の中には一般公道がルートになっているレースもあるので、その場合、灯火類、ナンバープレートなど、保安部品はそのまま付けておく。レギュレーションをよく読んで不要であれば、それらの取り外し。タイムカードをバイクに付ける場合は、その用意。ビードストッパーの装着と、タイヤの減圧。サイドスタンドにエンジンストップ機構がある場合、それのキャンセル。ハンドガードや可倒式のレバーを装備しておくと、転倒時のトラブルは減る。同様に、ステップとブレーキペダル、シフトペダルは転倒で簡単に曲がる。部品の準備や、転倒に強い部品への交換を。

 

【注意すること】

炎天下のイベントになると、オフロードバイクのオーバーヒートよりも人間のオーバーヒートが心配になる。熱中症対策も必要だ。また、降雨時、冬以外はビニール製のレインコートの着用が案外危ない。通気性がまったくないので、雨は遮るが、運動で上昇した体温や汗をまったく逃さないため、体調不良に繋がる。濡れたくない場合は、オートバイ専用品やゴアテックス製品などの使用を勧める。もしくは濡れるのを覚悟で、別に着替えを用意しておく。

 

【プチ知識】

ゴーグルは通常、走行風が当たることで内部が換気されるが、体温が上がった状態で転倒し、マシンを押したりしていると、あっという間に内部が曇る。これを防ぐための曇りにくいレンズを各社で用意しているので、お勧め。また、前走車が巻き上げた泥がゴーグルに飛んだ場合、使い捨て式のティアオフが便利だが、環境へのダメージを考えて禁止のレースもある。値は張るが、ロールオフタイプの準備が好ましい。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索