取材協力/Technix(テクニクス) 文/三上 勝久 写真/広田 海 構成/ダートライド編集部
掲載日/2013年12月6日


テクニクスは2002年1月に創業した、バイク用サスペンションのプロフェッショナルショップ。米国MX-TECH社にて本場の技術を習得した専門のスタッフが作業を行う他、近年はレースシーンなどで得たノウハウをいかしたオリジナル商品(TGR)の展開も始めている。基本であるサスペンションメンテナンスの技術力を見ながら、TGRの魅力と実力に迫ってみたい。

サスペンション、メンテナンスしていますか?

オフロードバイクと
サスペンションの関係

ストリートバイクユーザーに比べれば、オフロードバイクユーザーはサスペンションの重要度について体感している事が多いかも知れないが、それでもサスペンションのメンテナンスを定期的に行っているライダーは少ない。エンジンの場合は、オイルやフィルターの交換をまめに行わないと「エンジンが壊れるのでは」という恐怖感がはたらくからだろうが、実はサスペンションもエンジンと同じように……いや、それ以上に定期的なメンテナンスが必要とされる部品である。オイルシールからオイルが漏れてきたから、ロッドが錆びたから……なんて状態まで放っておくのは問題外!

 

とくにオフロードバイクの場合、サスペンションの性能が正しく発揮されていない状態というのは致命傷と言っていいほど。中古車を購入したら、まずやってほしいのはサスペンションのメンテナンスだ。モトクロスやエンデューロなどのレースに出る選手は、新車を購入した時にまっ先にするのがサスペンションのリバルビング(チューニング)。新車でもチューニングが必要である事を考えると、ある程度走った車両の場合の必要性は言うまでもないだろう。

 

サスペンション専門ショップ
テクニクスとは

埼玉県春日部市に今年(2013年)移転、新たに広く美しい店舗を構えたテクニクスは、クロスカントリー、エンデューロライダーの間では知らぬ者のいないほど有名なサスペンションチューニングブランドだ。2011年以来、JNCCを3連覇している鈴木 健二を筆頭に多くのライダーたちがテクニクスにサスのモディファイを依頼している。

 

「オフロードでは、多くの場合初期作動性を高めるモディファイになります。JNCCなどではモトクロッサーを使用する場合が多いのですが、速度が高く、高いジャンプも飛ぶモトクロス用サスペンションはかなりハードなセッティングになっています。そのサスペンションを、小さな衝撃でも素早く吸収するように初期作動を柔らかめにし、奥ではしっかりと粘るセッティングにします。初期作動性を上げるには、まず摩擦を取っていく事が特に重要ですね」。(井上 浩伸代表)

 

井上代表がテクニクスを立ち上げたのは今から12年近く前になる2002年。もともとバイクショップでメカニックを務めていた井上さんが、サスペンションメンテナンス専門店として立ち上げたファクトリーだ。

 

「もともとはバイクショップを目指していたのですが(笑)、サスメンテナンスの需要が多く、結局サスペンション専門のまま今に至っています」。サスペンション専門店を立ち上げた井上さんは2003年にアメリカに渡り、モトクロッサーのサスペンションチューンで知られるMX-TECHと技術提携。サスペンションメンテナンス以外に、チューニングのオーダー受注も増やしていく。

 

「オーダーの8割はメンテナンスですが、チューニングを依頼する方も増えています。そこにわずかなコストを追加するだけでより性能が上がるわけですから」。確かに、フロントフォークの場合、フルメンテナンスが2万円程度。そこに2万円強プラスすれば(メニューにより異なる)リバルビング出来るわけで、これは実に魅力的な価格設定だ。

2002年1月創業。米国MX-TECH社にて本場の技術を習得し、欧州のサスペンションメーカーで理論を学んだ専門のスタッフが作業を行う、バイク用サスペンションのプロフェッショナルショップ。近年はレースシーンなどで得たノウハウをいかしたオリジナル商品(TGR)の展開も始めている。

 

仕事が増えるに従い2004年に最初の移転を行い、2006年に自社ファクトリーを建設。2013年に3度目の移転を行い設立したのが、この新しいショールームを兼ねるファクトリー。

住所/埼玉県春日部市備後東4-5-40
電話/048-733-9055
営業時間/09:00-19:00
定休日/日曜、祭日

追加オーダーしたい
テクニクスのリバルビング作業とは

リバルビングの内容は、モトクロスの本場アメリカで高い評価を受けているMX-TECH社の技術を受け継ぐもの。スタンダードサスの基礎データを正しく収集するショックDYNOシステム(サス各部の作動速度や機能判断をするツール)などを用いて築いてきた膨大なデータから、顧客1人1人の要望に合わせたセッティングを施しておりそれが人気の理由となっている。

「体重、身長、乗り方、今何が不満なのか……そんな要望を聞いて作業します。これらの要素を伺えば、なにしろこれまでの作業データが膨大なので、求める性能を提供する事が出来ます。もちろん、乗って見て違うという場合は、納得いくまで作業させてもらっています。まあ、あまりそういう事はありませんが」(井上さん)。サスペンションのリバルビングには、膨大な種類が存在するシムと呼ばれるワッシャー状の部品や、オイルシール、オイルなどが必要になるが、テクニクスではほとんどの場合すぐに対応出来るだけの部品を在庫し、迅速に対応している。

 

新社屋の2階に設置されたファクトリーはじつに整然としていて、まるで歯医者のように清潔だった。その一角にある棚には、膨大なシール、シム、ショックボディなどがこれまた整然と並ぶ。僕らが訪れたその日も、テクニクスのメカニックたちがそのフロアのなかをキビキビと動き回り、サスを1本1本生き返らせていた。

 

  • 作業をしていただいたのはメカニックの飯田さん。今回はXR250(ホンダ)のショックだ。まずは超音波洗浄機でショック全体の汚れを落としてから作業にかかる。

    作業をしていただいたのはメカニックの飯田さん。今回はXR250(ホンダ)のショックだ。まずは超音波洗浄機でショック全体の汚れを落としてから作業にかかる。

  • 手際よく、リアショックを分解可能な状態まで完全に分解する。パーツ1つ1つの摩耗状態をチェックし、必要に応じてパーツを交換する。

    手際よく、リアショックを分解可能な状態まで完全に分解する。パーツ1つ1つの摩耗状態をチェックし、必要に応じてパーツを交換する。

  • 作動性の要となるショックロッドは旋盤で研磨。新品同様の滑らかな表面に仕上げていく。その他の部品も同様にていねいに清掃する。

    作動性の要となるショックロッドは旋盤で研磨。新品同様の滑らかな表面に仕上げていく。その他の部品も同様にていねいに清掃する。

  • 整備の終了したサスユニットにオイルを充填する。テクニクスでは、空気がわずかでも混入しないように、真空状態を作ってからオイルを充填する専用充填機を使用する。

    傷みやすいラバー類(シール)を新しい物に変え、オイル以外も生き返ったリアショック。多くの補修部品を揃えているので、即座に作業が出来、納期が短いのもテクニクスサービスの特徴。

  • 整備の終了したサスユニットにオイルを充填する。テクニクスでは、空気がわずかでも混入しないように、真空状態を作ってからオイルを充填する専用充填機を使用する。

    整備の終了したサスユニットにオイルを充填する。テクニクスでは、空気がわずかでも混入しないように、真空状態を作ってからオイルを充填する専用充填機を使用する。

  • バネレートも適性範囲にあるか計測。最後に作動が正常かチェックしたうえ、作業に取りかかる前に計測、記録していたセッティングに戻して納品する。

    バネレートも適性範囲にあるか計測。最後に作動が正常かチェックしたうえ、作業に取りかかる前に計測、記録していたセッティングに戻して納品する。

サスペンションに効果てきめんなSKFフォークシール&リアショックシールヘッド

レースシーンから得たノウハウで
輸入パーツの販売も開始

サスペンションのメンテナンス、リバルビングを行ううちに顧客からの様々な要望を受けるようになった事で、テクニクスではいくつかのスペシャルパーツも取り扱うようになった。2005年にイギリスのショックメーカーであるナイトロン(2007年にナイトロンジャパンに輸入販売権を譲渡)、2009年にCNC加工パーツで知られるXTRIG、2010年にインナーチューブで知られるTNK、そして2011年には優れた性能を発揮するオイルシールで知られるSKFの、それぞれ日本輸入販売元となっている。そして、2013年からは自社ブランドである「TGR」もスタート。オリジナル製品としてレーシングホイール、サスペンションスプリングの製造・販売を開始した。

 

「スーパーモタードでは真っ先に必要になるパーツがホイールなので要望が多く、オリジナルで作る事にしたんです。パーツはオーダーして制作していますが、ホイール組は弊社ファクトリーで1本1本行っています」(井上さん)。カスタムパーツとして考えた場合、まったく目立たないパーツであるオイルシールのSKFも取り扱う。

 

「KTMも2012モデルから純正採用するなど、これ1つでサスの作動性がアップすると言っていいくらい効果の高いパーツです」(井上さん)。SKFのパーツは、フォークシールはもちろん、ホイールシール、リアショックシールヘッドなどが各モデル用に揃えられている。リバルビング時に合わせて使うと効果的だろう。

 

耳寄りなのが、現在『SKFトライアルキャンペーン』と称して、フォークメンテナンスの際にはプラス2,100円で(1キット左右セット)、ショックメンテナンスの際にはプラス5,250円でそれぞれ、SKFフォークシール、ショックシールヘッドを組み込んでくれる事。フォークシールが1キットで3,780円、シールヘッドが8,820円な事を考えると大幅なプライスダウンに加え作業工賃もメンテナンスに含まれるので、トータルのプライスは相当に抑えられる。メンテナンスと同時に是非お願いしたいオプションだ。

※SKFトライアルキャンペーンの期間はテクニクスのホームページ上でご確認下さい

SKFフォークシール

SKFフォークシール

スタンダードで使われる事の多いOEMシールに比べ、クロームメッキのインナーチューブに対し25~45%、チタンコートなどハードコートされたインナーチューブと組み合わせれば75%もフリクションを低減させる事が出来るフォークシール。その理由は、素材自体が非常に高い潤滑性をもっているためだ。対応メーカーも幅広く、手軽なサスチューンとしても最適(3,780円~・1キット)。

SKFフォークシールの驚異的パフォーマンスを動画で体感

SKFリアショックシールヘッド

SKFリアショックシールヘッド

フォークシール同様、非常に潤滑性の高い素材を使って作られたリアショックユニット内部パーツ。ロッドの先端に装着され、オイルの漏れを防ぐ肝心要の部品だが、SKFではこのパーツをラバーの一体構造で製造。そのため、エアの混入がしにくく、サスペンションの性能を高く維持する構造となっている(8,820円)。

SKFホイールシールキット

 

SKFホイールシールキット

素材自体に潤滑性をもつ『ローティングプラスチックシールド』を採用、ベアリングへの泥や砂、水の進入を防ぐ機能を果たしながら超低フリクションを実現したSKF製ホイールシールキット。専用のアクスルカラーも付属する(4,410円)。

テクニクスでは、オン・オフ問わず多くの車輌のメンテナンスが対応可能です。オプションでSKFフォークシールを装着することで作動感を大幅に向上できます。

What is TGR?

オリジナルレーシングキット『TGR』とは
どのような製品群か?!

TGR(TECHNIX GEAR)は、テクニクスがオリジナルで企画、設計、製造するオリジナルブランドだ。現在ラインアップされている商品は、スーパーモタード用、モトクロス用に用意されたTGRレーシングホイールと、テクニクスのノウハウを注ぎ込んだTGRスプリングだ。

 

TGRレーシングホイールはCNC仕上げのアルミビレットハブを採用した完組ホイール。TYPE Rは『リアルパフォーマンス』を追求したレーシングホイール。アルミ削りだしのハブにD.I.D.製Dirt Starブラックリム、ダブルバテッドスポーク、スプラインドライブ・アルミニップルを採用する。しなやかさと剛性の高さを絶妙にバランスさせていて、全車両36本スポークとしている事も特徴。モトクロス用(10万5,000円・前後セット)、スーパーモタード用(13万6,500円・前後セット)をラインアップ。

 

TGRスプリングは、様々なテストを重ねて用途に最適なスプリングレートをテクニクスが設定し製造したもので、車種専用設計となる。前後とも、バイク用スプリング素材として最適なシリコンクロム鋼を採用。現在のラインアップは、WR250R(ヤマハ)ソフトスプリング(前後セット2万3,100円)、ミニモト用ハードスプリング(前後セット2万1,000円)、D-TRACKER(カワサキ)ハードスプリング(前後セット2万3,100円)となる。

 

TGR レーシング ホイール。CNC仕上げのアルミビレットハブを採用した完組ホイールだ。

ハブカラーを好みで、レッド、ブルー、グリーン、ゴールド、オレンジの5色から選べるのがTYPE-Rのひとつの利点。アルミニップルもオプションでカラー選択が可(105,000円・1台分)。

スーパーモタード用のワイドリムも設定される。数値は、フロントが3.00-17又は3.50-17 リアが4.50-17又は5.00-17から選択可能となり(TYPE-R)、ワイドなタイヤを履く事が可能。

TGRホイールのYPE-Rに採用されるスポーク。コスト高の為に多くのアフターマーケットホイールメーカーが使うことをためらうハイエンドパーツだ。強度の必要なニップル、ハブ勘合部分は太く、中間は細く設計されている。軽さと柔軟性、剛性の高さを両立。

ホイールはオーダーに合わせ、1本1本メカニックの手作業で組み立てられる。写真は土田メカニックがダイヤルゲージを用いてフレ取りをしているところ。組み立て時にも、これまで蓄積された豊富な経験が生かされている。

TGRスプリングは現在、3用途でラインアップ。WR250R(ヤマハ)用のソフトスプリングは完全オフロード走行オンリーに特性を振っており、作動性向上に寄与する。

 

New company building

ハイクォリティーな新社屋
非常に良好な環境で作業される

2002年にサスペンションメンテナンス専門ショップとして埼玉県・春日部で創業したテクニクス。サスペンションのメンテナンスだけを行うファクトリーというのは日本では少なく、仕事が増えるに従って2004年に最初の移転を行い、2006年には自社ファクトリーを建設。そして2013年、3度目の移転を行い、同じ春日部市内にショールームを兼ねるファクトリーをオープンした。多数のサスペンションメンテナンスを同時に行えるよう配慮されたファクトリーと、顧客のバイクを預かるために余裕のあるスペースと駐車場も確保している。昔ながらの『整備工場』とは一線を画したイメージの新社屋。社長もスタッフもとても気さくな方ばかりなので、自分のバイクのハンドリングに不満のあるライダーは、ぜひ訪れて相談を。なにしろ、バイク好きが高じてこの会社を作ったのが井上社長。スタッフも、バイクに関わりたくて転職してきた人もいるほどだ。ライダーの気持ちをよく理解してくれるショップなのだ。

  • 2Fのファクトリーで整備を待つサスペンション。KYB、SHOWAなど国産はもちろん、オーリンズやマルゾッキ、WPまで多様なメーカーのサスが並ぶ。

    2Fのファクトリーで整備を待つサスペンション。KYB、SHOWAなど国産はもちろん、オーリンズやマルゾッキ、WPまで多様なメーカーのサスが並ぶ。

  • ファクトリーの棚にはよく使われるパーツ類が常時在庫されている。

    ファクトリーの棚にはよく使われるパーツ類が常時在庫されている。

  • オーダーを受けたショックは、目的、オーダー内容などが明記されたシートとともに整理整頓されて整備を待つ。

    オーダーを受けたショックは、目的、オーダー内容などが明記されたシートとともに整理整頓されて整備を待つ。

  • 整理整頓された作業台。『作業場』という言葉でなく『ファクトリー』という言葉がよく似合う美しい工場だ。

    整理整頓された作業台。『作業場』という言葉でなく『ファクトリー』という言葉がよく似合う美しい工場だ。

  • オイルシールなどの頻繁に交換される部品は常時在庫され、製品ごとに整理整頓されている。テクニクスの迅速な作業を支える大事な要素だ。

    オイルシールなどの頻繁に交換される部品は常時在庫され、製品ごとに整理整頓されている。テクニクスの迅速な作業を支える大事な要素だ。

  • 「バイク屋さんじゃないんですか?」と驚かれる事もあるという美しいショールーム。国道4号線沿いとアクセスも良い。駐車場もあるので安心して訪れられる。

    「バイク屋さんじゃないんですか?」と驚かれる事もあるという美しいショールーム。国道4号線沿いとアクセスも良い。駐車場もあるので安心して訪れられる。

  • サスペンションのみの持ち込みだけでなく、車両そのものを預かっても作業出来るよう、広い屋内駐車スペースも持つ。この日も多くのバイクが作業を待っていた。

    サスペンションのみの持ち込みだけでなく、車両そのものを預かっても作業出来るよう、広い屋内駐車スペースも持つ。この日も多くのバイクが作業を待っていた。

  • サスペンションの分解、清掃を行うブース。メカニックが同時に働けるよう、複数の作業スペースが確保されている。オイルが飛び散るはずだが、ここも極めてクリーン。

    サスペンションの分解、清掃を行うブース。メカニックが同時に働けるよう、複数の作業スペースが確保されている。オイルが飛び散るはずだが、ここも極めてクリーン。