【Page2】 高剛性フレームとレスポンスの良さがクイックな走りを生む!(1)

掲載日:2010年01月27日 特集記事テイスティング YAMAHA WR250R    

2009年7月1日発行 月刊ガルル No.281より記事提供
テストライド/小林直樹  写真/長谷川徹  まとめ/小川浩康

高剛性フレームとレスポンスの良さがクイックな走りを生む!

 




今回は都心をスタートし、アクアライン経由で房総半島の林道へ向かうルートを取った。高速道路、峠、ダートを含めた総走行距離は約250kmで、一般的な1デイツーリングを再現したルートになっていると思う。
高速道路では高速巡航をはじめ、追い越し加速やレーン変更などもチェック。林道では、一般ライダーのペースを想定した走行から、ややペースを上げたアグレッシブな走りまでの挙動をチェックし、枝道にも分け入って取りまわしもテストしてみた。こうした結果、限界領域だけでなく、一般ライダーの常用域での乗り味を味わうことができたと思っている。房総半島ということで、小林さんには海の幸もテイスティングしてもらった。ちなみに今回の平均燃費は29.8km/lをマークした。

 

WR250Rは1月号のツーリング特集で乗ったけれど、あの時は4台のバイクを乗り替えてのツーリングだった。だから、丸1日様々なシチュエーションで思い切りWRに乗ったのは今回が初めてと言えるね。普段XR230という足着き性のいいバイクに乗り慣れていることもあって、WRにはデカいバイクというイメージがあった。正直、どこまで乗り込めるか? 自分のテクニックをどこまで引き出せるのかと不安に思う部分もあったんだ。

 

乗ってみると、確かにバイクの大きさは感じた。ウイリーでフロントまわりを上げる時など、ミドルクラスより大柄な分、物理的な上がりにくさはあるけれど、上がった時の安定感や剛性にはピシッとした感じがある。大きいからこそ、バイクの動きが小さくならないという感じがするんだ。これはフレーム剛性がすごく高いからで、この剛性のおかげで自分がイメージしているマシン挙動と実際に体で感じる挙動を一致させることができた。挙動を自分の意志通りにコントロールできるから、トラクションさせにくい路面でも一発でアクションライディングを決めることもできたんだ。WRでもこれができたのは、おれにとっても嬉しい発見だったよ。

 

たとえば、ウイリーに関して言えば、フレームがグニャッとしなることで挙動の乱れを吸収してくれるというメリットもあるのだけど、フレーム剛性が柔らかいとサスペンションの動きは悪くなってしまうというデメリットが出てくる。サスペンションをしっかり作動させるには、サス取り付け部がしっかりしている必要があり、それにはフレーム剛性の高さが必要になってくるからなんだ。WRはそのフレーム剛性がかなり高くて、サスもよく動く。でもカチッとしたセッティングだから、細かく動くタイプではない。ストローク感があまりなく硬い感じだけど、底突きもしない。モトクロッサーほどじゃないけれど、かなり高いレベルまで攻め込んでいける。こうした硬さがマシン挙動もクイックにしてくれるから、アクションライディングしやすいんだけど、ちょっと硬すぎるかなと感じる時もある。

 

それはアクションを一発で決めやすい反面、失敗した時の挙動も速くなってしまうという時に感じる。柔らかいフレームは、いけるかいけないかというところでのごまかしが利くんだけど、WRはフレーム剛性の高さが直進安定性も高くしているので、マシンの倒し込みやステップの踏み込み、ブレーキングと、ボディアクションを思い切り先行させてやらないと向きが変わっていかない。しかし、向きが変わってからの挙動はクイックだから、リヤがスライドしすぎたりした時のリカバリーが難しい。バイクの向きを変えるまでに思い切って体を使っているから、失敗した時にそこからまた体を戻していかないといけないんだけど、それはかなりスキルのあるライダーじゃないとできないだろう。だから、成功か失敗かの見極めを、早めにする必要があるんだ。

 

それから、WRのクイックな挙動は、エンジン特性も大きく影響している。WRのエンジンにはトコトコと走れる低速トルクがありながら、高回転まで一気に回っていくスムーズさとパワーがある。フライホイールが軽く、どんな回転域からでも加速していくのはモトクロッサーに近い特性に感じる。WRには「オフロードのR1」というキャッチコピーが付いていたけれど、YZ-Fからのフィードバックが息づいていて、見せかけだけじゃない本物の作り込みがすごく感じられた。

 

WRには積極的なボディアクションが必要だって言ったけれど、マシンなりに走らせても快適なシーンもある。それが高速道路なんだ。フレーム剛性の高さが抜群の直進安定性を生み出し、エンジンは高回転までパワフルにスムーズに回っていく。どの回転域からでもストレスなく伸びていって振動もまったく気にならないから、追い越し車線の流れに乗って巡航することもできる。直進安定性の高さは振られにくさにもなっていて、クルマに追い越しされた時やレーン変更した際のお釣りがない。だから、ベタ座りのまま、延々と高速道路を走り続けるツーリングでも、予想以上に楽しめる。少なくとも250トレールバイクで、ここまで高速道路が快適なバイクは今までなかったと思うね。

 

そうだ、ギヤ比がワイドなのも走りやすさになっているね。早いタイミングでシフトアップしていっても、フライホイールが軽いからエンジンがついてくる。街中でも6速で走れるほどの柔軟性があるし、フラットな林道なら3速ホールドのままでも、かなりなペースで走破できてしまう。もちろんシフトダウンしてやれば、そこからアクセルを開けていった時の加速も気持ちいい。だから、峠もWRにとってはかなり楽しめる場所になる。ここでもフレーム剛性の高さが生きてきて、狙ったラインをしっかりトレースしていける。低いギヤでゆっくりコーナーに入って、アクセルを開けて脱出していく時の加速感はネイキッドバイクに近い感じですごく気持ちいい。関東では林道までの距離が遠くなっているけれど、高速道路、峠と、林道へ行くまでの区間もWRなら存分に楽しむことができる。

 

2007年秋に発売されたWR250Rは、世界でもっとも厳しいと言われる排出ガス規制・騒音規制をクリアして登場したフルサイズ4スト250トレールモデルで、ヤマハのフルサイズ4スト250トレールは、93年に発売されたTT250R以来。市販トレールモデル初となるアルミフレームを採用し、フューエルインジェクションが装着された水冷DOHC4バルブエンジンは31PSを叩き出す。70万円代となった発売価格について否定的な声も聞かれたが、排ガス規制によりXR250やDR250Rなどのトレールモデルが続々と生産終了していくなかで、オールニューモデルとして登場してきた意義は非常に大きいと言え、マシン各部の作り込みをみれば十分納得できる内容だ。08年にカラーチェンジが行われたが、主要諸元は変更されていない。WR250Rに前後17インチロードタイヤを装着したモタードモデルWR250Xもラインナップされている。

 

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