AXCR2015 参戦レポート Vol.02 LEG1~LEG2ダイジェスト

掲載日:2016年04月25日 エクストリームラリー    

取材協力/アジアクロスカントリーラリー日本事務局  取材・文/宮崎 大吾

Asia Cross Country Rally 2015 Special Report

マシンの準備を終え、車検を済ませたらセレモニアルスタートだ。その名の通りセレモニーを兼ねたスタートで、2014年はパタヤ市街の最も華やかな大通り、ウォーキングストリートで行なわれた。2015年も市街地のど真ん中で開催され、とにかく派手な演出と大音量の音楽で通行人から注目を浴びる。そして翌日、いよいよ競技がスタートする…

リラックスムードから競技への切り替え

2014年もそうだったが、このセレモニアルスタートまでの待機中がリラックスできる貴重な時間。さっそく僕らは地元の食事をしようと、近くの屋台に繰り出した。タイは何を食べても安くて美味い。日本の1/3くらいの物価で、美味しいものが食べられるのだ。チェンマイといえば「カオマンガイ」という蒸し鶏を使った料理が有名だが、それは大会終了後までお預けとなった。でも、ヌードルも野菜も肉も、飛び込んだ店で出されるものが本当に美味しいのだ。食いしん坊の僕には、これだけでもタイに来た価値がある。

話が前後してしまうが、8月7日(金)の夜は、大会スポンサーの古河バッテリーによるパーティが開催された。2輪、4輪の日本人関係者だけでなく、他国のライダーまで全員集合する盛大なパーティだった。我らが池町佳生選手や江連忠男選手もスピーチで盛り上げてくれた。2012年初代2輪優勝者の池町選手は、2014年度はマシントラブルに泣いただけに、雪辱を誓っていた。

日本人の2輪参加者は15名で、そのうち初参加が6名。本ウェブ記事などを読んで参加を決めてくれた方も多く、嬉しい次第。参加者にはお揃いのTシャツが提供された。

LEG1ダイジェスト

8月9日(日)
チェンマイ~メーホンソン(全行程380.70km)
SS1 Meuang Khong~Pai(175.97km)

いよいよ本格的な競技がスタートする。インペリアルメーピンホテルを出発して、83.98km先のSS1スタート地点まで走り出す。もちろん全行程コマ図を見ながらの走行になる。約1年ぶりのコマ図走行なので、この区間中にマップの読み方やコマ図を送るタイミング、トリップメーターの誤差のチェックなどを行なう。

ホテルから83.98kmリエゾンを走りTC1へ到着。ここでトリップメーターをゼロに戻して、いよいよSS1のスタート。僕は識別しやすいように、リエゾンとSSのマーカーの色を換えている。

思えば僕も成長したものだ。2014年はマップとメーターの操作方法が分からないままスタートして、SS1までの道のりを大幅に間違えてしまった。しかも福村久澄選手(歯科医なので通称「先生」と呼ばれている)を巻き込んでの大遅刻。先生が「最初は1人で走るのが不安だろうから、俺が後ろからついていってやるよ。1人で走ることに慣れたほうがいい」と言ってくれたのだ。そして、コマ図を読み違えた僕の犠牲になってしまったわけだ。

それがいまでは、コマ図だけを頼りに1人で走ることに躊躇も不安もなくなっていた。たったこれだけのことなんだけど、一歩踏み込めたことが自信に繋がる。良い大人が何を言っているの? と笑われそうだが、44歳にもなって少し成長できたことが嬉しいのだ。今年は大きな問題もなく、無事にSS1スタート地点までたどり着いた。

観光地として有名なエレファントパークを抜けてスタート地点へ向かう。アジアの象でも目の前で見るとその巨大さに圧倒される。バイクの排気音で興奮しないか不安だったが、観光慣れしている象はおとなしそうだった。

「最初の2日間の山岳路が勝負のキモになる」と、大会主催者から聞いていただけに、路面コンディションに対しては多少身構えていた。というのも、現地のツーリングツアーで走った人達からも「チェンマイ特有の滑る路面には気をつけて」と言われていたからだ。事実、スタート地点に近づくにつれて、雨上がりのような湿った路面が露出している。舗装路とはいえ滑りやすく、油断がならない。

スタート直後から水たまりの続出。このあたりはカメラマンを意識して勢いよく水しぶきをあげようと元気いっぱい。しかし、本当にヤバい所はこの先にたくさんあった…。涙目になりながら滑る路面が早く終わってくれることを願っていた。

24.89km地点で本大会最初の川渡り。深さもそれほどなくちょうど良い感じ。このエリアは晴れていて、カメラマンも多数待ち構えていたのでテンションが上がった。

コマ図には描かれていないが、このくらいの小さな川(水たまり)はそこらじゅうにあった。そしてSS1最大の見せ場というか、印象的だったポイントは116.79km地点の吊り橋だ。

ブリーフィングでも説明があったポイントで、コマ図では川渡りと吊り橋走行の2択のように描かれているが、現場に到着してみると川が深過ぎるのか、2輪は吊り橋を渡るしかなかった。

カメラマンも待機しているし、颯爽と渡ろうとするのだが、これがまたクセモノだった。まず渡り始めの付近が滑りやすいので、ヒルクライムの助走のように、なるべくまっすぐに進入する必要があった。

吊り橋の中央付近くらいまでは特に問題なく渡れたが、終盤につれて橋が傾いているうえに、おそらく前走車の影響だろうか、だいぶ朽ちていて、下の渓谷が見えるのだ。すぐにでも渡り切りたいのに、自分が起こした揺れが振幅を増してさらに揺れ、橋の下のぽっかり開いた部分が視界に飛び込んでくる。橋の出口もやや狭いので、支柱にぶつからないか心配だった。

口から心臓が飛び出しそうな想いでなんとかクリアしたが、思わず橋の途中で止まって手すりにしがみついたり、エンストする選手など色々いたらしい。

これは渡り切ったところから振り返って撮影した写真。微妙に斜めになっているので、センターを走っているつもりでも大きく揺れる。しかも頼り無い木の間隔。この日一番のスリリングな思い出となった。

SS1を終えて村落を走っていたら、韓国人ライダーのMoon Bum Hoさんたちに呼び止められた。「コーヒー飲んでいこうぜ!」。この冷たくて甘い缶コーヒーの美味さと言ったら! この後もHoさんには大変お世話になった。翌日もコーヒーをおごってもらったり、リエゾンを一緒に走ってくれたり…。本大会の思い出深い人物の1人だ。

ということで、この日は1度の転倒のみで無事ゴール。2輪トップは無転倒だったという江連忠男選手。昨年優勝者の前田啓介選手が2位。3位にはKTMコリアのマネジャーも務めるRyu Myunggui選手が入った。Ryuさんは、うず潮レーシング福山との親交もあり、全日本モトクロスで活躍中の北居良樹選手のタイのレース参戦のアテンドなどを手がけていたと言う。4位に池町選手が入った。

僕は全40台中29位。SSの途中で撮影するなど、勝負モードは完全に捨ててメディアモードだ。でも完走するための集中力が必要だから、その加減が難しい。あまり頻繁に止まっていると、リズムが途切れてミスしがちだからだ。

初日を終えてエアクリーナーをチェック。ちょっと贅沢だが、洗浄する時間も惜しいので、全日程分のエアクリーナーにオイルをしみ込ませた状態で用意しておいた。こういう所は少しでも楽をしてリラックスしたい。

LEG2ダイジェスト

8月10日(月)
メーホンソン~メーソット(全行程496.80km)
SS2 Mae Hong Son~Khun Yuam(132.42km)

大会2日目、鬼門の滑る路面も体験したし、もう大丈夫だろう(?)とタカをくくっていたが、実はこのSS2のほうが難しい路面だった…。なんと言うか、JNCCやJECでおなじみの広島のテージャスランチ(赤土で雨が降るととても滑りやすい)のエンデューロを、雨の中100km以上走る感覚に近い。しかもビッグタンクやマップホルダーなどフロントヘビーな状態で、なおかつナビゲーションもしなくてはいけない。幸いナビゲーションはSS1、SS2ともに簡単なもので、道に迷う心配はほぼなかったのだが…。

SS2スタートして40km付近。もう路面がツルツルに光っていて雲行きが怪しい。「またコレか~」と、諦めモード。

とにかく滑る滑る! 下り坂で轍だらけ。ブレーキングもままならないほど滑る路面に、どれだけ苦しめられたことか。あまりにも後輪が滑るのでパンクしたかと思って確認しても異常なし。同じ行動をしたライダーが多数いた。それくらい異常に滑る赤土。しかし地元の人達は2人乗りスクーターで余裕で走破してしまう。

轍に前輪をとられて「ああ、もう転ぶ~」と思う場面も多数あったが、ハスクバーナの4CSサスペンションの走破力とIRCタイヤのグリップ力に助けられてなんとか踏ん張る。

そうは言ってもこの日は2回転倒した。左コーナーを立ち上がった瞬間に、車体の向きが90度以上回転して真後ろを向いて転倒。フロントバイザーを多少破損したものの、なんとか起こして復活。こういう路面がようやく終わったと思えばまた現れたりと、なかなかしびれるルートだった。

ルートは滑る路面だが、のどかな田園の中を駆け抜ける壮快なエリアもたくさんあった。

ついつい目の前の路面とコマ図に集中してしまうが、ふと視線をずらせば、こんなに美しい風景の中を走っていたんだな~。

僕はメディア兼ライダーとして参戦しているが、やはりメディアの習性もあり、SS途中でも停車して撮影することがある。なかでも村人の笑顔が素敵で、カメラを持ち出して「撮るよ~」とアピールすると大喜びしてくれる。

走りながら手を振るライダーはいると思うが、僕のように完全に停車してしまうライダーは多分いないから、みんな最初はキョトンとした表情を見せる。「なにかトラブル?」みたいな顔をしてくれる子供もいる。

SSの途中にある村は速度制限があることが多い。見落とさないように青色のマーカーでチェックをしておく。

たいていの村落ではラリーに対して興味津々といった感じ。

2014年のカンボジアでは人が集まってきてもう大騒ぎだったが、チェンマイは穏やかに見守ってくれる。とても心が癒される。

86.45km地点の学校。大会本部からは通学する生徒に注意が必要と忠告された。しかしこの歓迎ぶりは嬉しい。先生が引率して路上で見学していたのだ。

最初の2日間は難しい分岐もなく、写真のようなマーカーで方向が記されていたので迷わず進めた。しかし後で思うと、翌日の難解ナビゲーション試練のための布石だった気が…。

コマ図の「PC STOP」までがタイム計測区間。ここまでくると一安心だ。その後少し走れば、待望のサービスエリアに到着する。

PC STOPに到着したらタイムカードを渡して時間を記入してもらう。そして名簿にサインして終了。早くサービスエリアでコーラを飲みたい!

中央自動車大学校の先生や生徒さんが、日本人ライダーのサポートをおこなってくれた。ガソリンや食料の補給など、とにかく助かることこのうえない。

滑りまくる路面を無事通り抜けた安堵感と共に至福のひととき。

見事に赤土パックされたFE450。重量増になるようなマディではなかったのが幸いだ。

こちらはサービスエリアを出発して早々にパンクに気づいた福村選手。急遽引き返してパンク修理。替えのチューブをサービスカーに積んでおくか、自分で持参するかも重要な選択だ。

なかなか手強いSS2だったが、この日も無事ゴールした。より慎重な走りを強いられたこともあり、僕の順位は31位(全40台)。SSのトータルタイムは3時間20分35。ちなみにこの日トップのRyu選手は2時間33分47。速い!

コマ図の冒頭には各SSの距離やターゲットタイムが記載されているが、ホテルまでのリエゾンは356kmという長丁場。しかもターゲットタイムが6時間となっている。つまり平均60kmくらいで走らないとペナルティが課せられるわけだ。

ということで、ここからは気持ちを切り替えて高速ロングツーリングモードに。お腹が空いても途中で食事する余裕もないので、携帯食を腹に詰め込んで一気走り! 空腹や眠気、お尻の痛さなど辛い部分もあるが、美しい風景を楽しみながら道中を楽しみたいものだ。

ガソリンは、サービスエリアでの補給以外は道中のガソリンスタンドで給油する。「PT」「PTT」などの系列店で、オクタン価の高い「95」を選ぶようにしている。「95」を販売していない村のスタンドでは、あえて満タンにしないライダーもいるようだ。

途中で韓国のHoさん達に出会い「旅は道連れ」と一緒に走ることになった。一番の敵はお尻の痛さ。目の前のHoさんもお尻をずらしたりスタンディングになったりと辛そうだ。2016年は何らかの対策を施したい。

ようやくその日の宿泊地であるメーソットリゾートに到着し、軽く洗車を済ませて整備をしようと思ったら、日本人選手の荷物や工具を積んだトラックが途中の山道で立ち往生しているとの情報が飛び込んできた。

長かった356km一気走りのあと、泥と汗にまみれた服装のままホテルで待機。工具は仕方ないとしても、最低限の着替えは携帯したほうがいいのかもしれない…。

(LEG3に続く)

第21回 アジアクロスカントリーラリー2016 開催期間 2016年8月14日~19日

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